中村さんと朝倉くん②
「不思議なことがあるの」
中村さんはいつもそう言って話し出す。彼女にとってこの世は不思議に満ちているらしい。
「その前に、この間はありがとう。おかげで森の盗賊を倒せたわ」
中村さんがはまっているゲームの話だ。少し前のゲームだが、中古のものを買ってきたらしい。中村さんはあまりゲームをする方でなく、なかなか苦戦しているようだが、僕はそのゲームをもうクリアしているので、たまにアドバイスしている。
「どういたしまして。てことは、次のボスの話?」
「いえ、話は全然変わるんだけど」
相変わらず中村さん流の話の脈絡は掴みづらい。
「どうして宿題をやってなかった日に限って先生に当てられるの?」
恐らく、話は全然変わってない。夢中になると周りが見えなくなる人だから、僕が攻略のコツを教えた日、宿題も忘れて遅くまでゲームしてたのだろう。
「なのに、きちんとやってきた日はおろか、会心の出来のときは全く当てないの。もしかしたら先生はみんな人の心が読めるのかもしれないわ」
「変わったことが印象的なだけだと思うよ。中村さんはいつもちゃんとやってくるから」
「そうなのかしら。ところで朝倉くん、一つ相談があるのだけど」
「いいよ。何の教科?」
今回の不思議お題。
「どうして宿題を忘れた日に限って先生に当てられるの?」




