映画の見方
樹木が育つがままに任せた森にやって来た超能力者を、そこを住処とする詐欺師に会いに来た。明らかに不審人物の様相だ。
「季節外れな客だな。寂しかったのか?」
「何を目論んでいる」
詐欺師は笑うばかりで具体的な答えを返さなかった。
「見たこともない武器だ。こいつを持ってけば、今度の砂漠の戦争は紅く染まる」
「何のためにそんなことを……」
「時を巻き戻すためさ。俺の、いや世界を回してる歯車ってやつは、あのときから狂っちまった。それを元に戻してもう一度始めるんだ。お前にだって分かるだろう。あいつは俺にとってかけがえのない存在だったんだ。それがなくなるような世界なんて間違ってる。この世界は一度さっぱりした方がいい」
その台詞が私の価値観とは、かけ離れすぎていて、映画の中の詐欺師が急に滑稽な存在に見えてきた。
さっきまでドーナツをむしゃむしゃやっていた隣に座っている中年が静かになったようなので隣に視線を移すと、緊迫感を演出するための重低音の音楽を子守唄に、小さくいびきをかいていた。映画の上映中に物を食べるなど言語道断だが、詐欺師よりは彼の方に好感を覚える。
世界なんてのは所詮絵空事でしかない。本気になった方が負けだ。
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