君の冷たさ
「こういうことか」
「ええ」
「こんな夜中に体育館まで呼び出されて、何事かと思えば。まあ予想はついていたけどね。君、足がないし」
「バレてたの。まあ気にしないけど、とにかく私の体を降ろしてよ」
「はいはい。よくもまあそうぞんざいに自分の体を扱えるもんだ」
「自分の体だからぞんざいに扱えるのよ。それに、今の私にそんなセンチメンタルに浸るような余裕なんてないの。知ってる? 首吊りって死ぬほど苦しいのよ」
「そりゃ死ぬためにすることだからね」
「そんな思いまでしてやっとこの世から逃げられると思ったのに、こんな幽霊になってこの世に留まり続けるなんてごめんだわ」
「何か未練でもあったんじゃないの」
「自殺するような人間にそんなものがあると思う?」
「自殺するような人間だからそんなものがあると思う」
「ちょっと、変なとこ持たないで」
「うるさいな。君、案外体重があって手こずるんだ」
「そんなわけないでしょう。あなたが力がないだけよ」
「それは否定しないけど」
「体がまだ綺麗な状態で良かった」
「さて、これでいいかい」
「そしたら私を成仏させなさい。私が見えるのはどうやらあなただけから」
「……君って冷たい人間だ」
「死んでしまったもの」
縛りプレイ小説お題ったーhttps://shindanmaker.com/467090からのお題。お題は〔きみのつめたさ〕。
〔地の文のみ禁止〕かつ〔キーワード「体育館」必須〕。