同窓会で会うとき
今日は地元の焼肉屋でちょっとした同窓会が開かれることになっていた。その日は仕事で遅くなったので、スーツ姿のままで行くことになったこともあり、少し匂いが気になった。
「よう富士見。久しぶりだな」
店内に入るとすぐに名前を呼ばれたが、声の方を振り返っても知った顔が見えなかった。
「俺だよ俺。角川!」
手を振っている禿げたおっさんが親友の名を名乗り、肩を組んできた。
「あのイケメンがどうしたらこんな哀れな姿に……」
「頭から視線を外してくれ。それよりほら」
顎で示す先には女の子の団体があり、その中には懐かしさを感じる顔もいくつか見えた。
「宝島さんも来てるんだ。学生時代好きだったろ」
角川と違って、あいつはすぐに分かる。気を抜くと目を奪われそうになる長い黒髪は学生の頃からとても印象的だった。
そのとき、あいつは俺の視線を感じたかのようにこちらを見た。そして、一言。
「騙されるんじゃないわよ」
はっと目が覚めると、朝の床の上に転げ落ちていた。
「夢かよ……」
呟いた途端、未練がましく鳴いた腹の音が一人暮らしの部屋に響いた。
俺がベッドから落ちた衝撃で一緒に落ちたカレンダーが目に入る。
あいつは来るだろうか、と少し気になった。
恋愛お題ったーhttps://shindanmaker.com/28927からのお題。「朝の床の上」で登場人物が「騙される」、「焼肉」という単語を使ったお話。