いつかドラマの主人公みたいに
確かに私は、どちらかというと非日常に憧れていた。
周りを見ればベッドか枕か布団しかないような職場で、毎日がルーチンワークの繰り返し。そりゃあそのうち結婚したり、そういうことは起きるんだろうけど、正直このままでは今までと変わらない日常が続いていくだけだと思っていた。
だけど非日常ってものは自分の生活が平凡で安全が保証されていることがまず前提としてあって、自分とは関係のないところで起きているのを見るからいいのだ。実際に自分の身に起こるとなると話は違ってくる。そんなことはいくら私にだって分かっていた。
だから、自分の職場にヤクザ風な方が現れるなんて非日常、求めてはいなかったはずなのに。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
早く目的を達して欲しいがために、普段よりも早い段階で声をかける。
「いや、買いたいもんは決まっとる。あんたを探しとったんや」
「え?」
月曜九時のドラマみたいな展開に耳を疑った。こんな展開、マニュアルに載ってなかった。こういうときはどう答えたらいいんですか店長?
「そっからそこまで。全部」
言われたことを理解するのに少し時間がかかり、とりあえず見たままを口にした。
「お、男前……」
「は?」
3題で小説書くったーhttps://shindanmaker.com/194081からのお題。『ヤクザ』『男前』『ベッド』。