だから君には手を振らない
帰り支度をしていると、もらったファイルが破れてたことに気づく。いや、もらった後に先生と内容の確認をしたから、破れたのはその後になる。
なるほど。実行委員が書類を傷つけたとなれば、信頼に関わるだろう。
あの後は体育だったから、犯行時刻は限られる。犯人はおおよそ当たりがついていた。山里とは単に腐れ縁に過ぎないというのに、恋は盲目とはよく言ったものだ。
おかげで私はいらない迷惑をかけられているのだから、あまりべたべたするなと言っても聞かないのだ、あの鈍感は。
「まだ残ってたんだ。もう帰ろうよ」
こいつはどれだけ知っていて何を考えているのだろうか。
「うん。今、帰るところ」
一瞬だけ、何故か不意に、全部言ってしまいたいような気持ちがした。
私はお前のせいで面倒なことに巻き込まれているのよ、何とかしなさい、と。
でも、そうすることでもっと面倒なことになりそうで。
この心地好い距離感が無くなってしまう、ほとんど確信に近い想像が酷く嫌で。
結局なにも言わなかった。
明日の時間割のこと、今日出た数学の宿題のこと、そんな他愛ないいつもと代わり映えのしない話だけをして別れた。
ただ、私の心臓の鼓動が少し、不協和音を奏で始めていた。
妙なお題だけで三題話をしてみやがれったーhttps://shindanmaker.com/161245からのお題。『「もらったファイルが破れてた」と「不協和音」と「腐れ縁」』。