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第5話、おっさんと大将。

滞在証明とタバコが銀貨一枚と金貨一枚ではおかしかったので、大銅貨一枚と銀貨一枚という表記に修正しました。


「わーかったわかった!わるかったよ。」



 そう言って目の前で拳を振り上げ立ち上がった少年を席につかす。

 まったく、貴族なのは服装とタバコだけか。

 これだから近頃の若者は駄目なんだ。

 忍耐力が足りん。


「そうかっかすんなよ。俺はお前さんのためを思っていってるんだぜ?

 冒険者には危険がつきもんだ。軽い気持ちで冒険者になって命を落とす奴はいくらでもいる。

 お前さんとは今日会ったばっかりだが、一緒に飯くってる取引仲間だろ?しかもまだまだ若い。

 猪相手に砂まみれになってる不良少年をほいほいと簡単にギルドに行かせるわけにはいかんだろ?」



 俺が諭すように話している間も、少年は終始笑顔だった。

 わかってくれたんならそれでいいんだ。

 子供に早まったまねをさせないのが大人の役割だからな。



「俺は大人だからな、お前さん見たいな子供にちょっと暴言はかれたくらいで怒ったりしないがな、もしギルドでおんなじ事してたら今ので腕の一本は折られてるぞ?

 だからわかったならもうちょっとかんが「よしわかった。」」



 おお、ちゃんとわかってくれたか。

 

 途中で話をさえぎられたのはちょっと気に食わないが、俺は大人だからな。

 細かいことは言うまい。

 良かった良かった。

 こんな俺には一生縁がないと思っていた嗜好品を融通してくれた相手だ、できることなら長生きしてほしいからな。


 あれ、そういえば少年よ、どうしてそんなに顔が真っ赤になっているんだ?

 それになぜかこめかみに青筋が浮かんでいるように見えるぞ?


 俺がそんなことに疑問を抱いている間に、少年はスッと立ち上がり満面の笑みでこういった。


 

「わかったから、表にでろ。」



 はぁ、これだから近頃の若者は。



 そして俺と少年はマリーさんに一言断って外にでた。



「お前さん、魔術は使えるのか?」



 俺がそういうと少年は少し驚いたような顔をして「そんなものは使わん」と言う。

 体の線も細いし武器も持ってない。その上やっぱり魔術も使えないとは良くここまで威勢がはれるもんだ。


 その点に関してはほめてやってもいい。

 だが、ここはお前さんが住んでた町とは違ってだれも守ってはくれないぞ、と教えてやるのが大人の役割。



「武器も持ってないんだろ?」



「あぁ。俺が勝ったら剣よこせよ。

 ないならそこの槍もらうからな。」



「言うじゃねーか。

 なら俺も素手で相手してやるよ。

 どっからでも来いよ、少年。」



 槍を宿の壁に立てかけから、少年に振り向きざま、口角をくいっとあげて大人の余裕を見せる。


 そのとき俺の目に映った少年は、口元だけが笑い目をギンギンに見開いてやがった。



 あ、こいつの目、しってるぜ。


 あれだよ。


 イッてる奴の目だ。



 あれっ、なんかやばくね?



 後にして思えば、俺の被り物の余裕なんてその直後にはどこかへ吹き飛んでいた。



   **********  



「どっからでも来いよ、少年。」



 衛兵のおっさんが口を歪めてそういった瞬間に俺はおっさんに猛然とダッシュし距離をつめる。


 あせったように放たれたのは素人丸出しのテレフォンパンチ。


 その瞬間に俺の勝利は確定したようなものだった。


 おっさんの右腕の外側に体をずらして左ジャブを軽く二発。

 パンパンッ、と小気味の良い音を鳴らす。


 反射的に後退しながら両腕をガードに回すおっさんを見てさらに俺の笑みは深まる。

 軽い左ジャブは顔面にガードを寄せる布石。



「うぐぇっ!」



 渾身のボディーを叩き込むと腹を抱えるようにして頭が下がる。

 それが狙いだと分かっていても、痛みと咳き込みがそれを止めることを許さないだろう。

 間髪をいれずに頭をつかんで顔面への膝蹴り。


 ゴッ。

 ゴッ。

 ゴッ。

 ゴッ。

 ゴッ。


 繰り返すつどに五度。

 誰がわかるとも知れないこんなネタを入れる余裕すらある。


 昔であれば最低でも相手の戦意が喪失して謝るまでやっていたところだが、もういいだろう。


 両手で必死で顔をガードすることしかできないおっさん首投げで倒し、両腕を膝で押さえつける。

 正直おっさんがテレフォンパンチのモーションを見せた瞬間からこのマウントをとるところまで、俺にとっては流れ作業のようなものだったりもする。


 そして確実に勝敗が決したところで、鼻と口からの血で真っ赤に顔面を染めたおっさんを見下ろした。



「おっさんも、そろそろわかったか?」



「ば、ばい、わがりばじだ。」




   **********  




「いやぁ、強いな、大将!なんかもう槍もってても勝てる気しねーわ!」



 あの後マリーさんに水を汲んで来てもらって顔をある程度きれいにした後、俺たちは先ほどの席に戻った。



「うむうむ、分かればよろしい。」



 先ほどまでより、好意的な態度になった衛兵のおっさんの言葉に大仰に頷いてみせる。

 おっさんはいつの間にか俺のことを大将と呼ぶようになっていた。

 なので俺も衛兵からおっさんに呼び方を変えることにした。



「正直その目蓋の傷も目の方は無事そうだし、わざと自分で傷とかつけちゃった痛い子なんだろうなって思ってたんだがなー。」



 こりゃ失敗、とおっさんは笑いながら頭を掻いていた。



「まぁそういうわけだから俺はギルドに行って冒険者になるぞ。おっさん、文句は?」



「そりゃもう大将なら鍛えれば上位ランクも夢じゃないぜ!」



「そうだろうとも。さぁおっさん、約束は約束だ、剣をよこせ。」



「家に一本使ってないのがあったはずだからそれを持っていってくれ。

 将来有望な大将が使ってくれるってんならむしろありがたい話だ。」



 こうして俺は宿と働き口と武器の三つを一気に手に入れることができた。

 このおっさんを使ったのは正解だったと言えるだろう。

ケイが力を発揮した結果恐ろしいことこの上ないww


そろそろ書き溜め分も少なくなってきてますので、皆様の暖かい給油のほうもお願いします!

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