表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

3

 始業式を前に、2年の教室、朝のHR。


「今日より皆さんと一緒に学ばせて頂く、九条拓真です。2年生からの転入で、皆さんに追い付くだけで精一杯ですが、よろしくお願いします」


 端正なルックスに爽やかな笑顔。

 拓真の最初の挨拶は、好意的な拍手で迎えられた。


「よろしくな、転入生!」


「仲良くやっていこうぜ!」


 そんな声に、


「ええ、こちらこそ。俺も早く、皆さんのクラスメートに相応しくなれるよう頑張ります!」


 にこりと微笑んでみせる。その笑顔の仮面に、ぎらつく野心を隠して。


「九条君、君の席は僕の隣だよ!」


 声に呼ばれ、窓際の席に視線をやる。


「君は確か、寮で俺の同室になる……?」


 声の主を、拓真は写真で知っていた。

 今日から生活する寮で、自分と相部屋になる予定だと、教師から伝えられていた。


 ……確か、名前は。


「瀬尾みつるだよ。これから、よろしくね」


 みつると名乗った少年は、愛らしい童顔を綻ばせ、右手を差し出した。


 拓真も細身だが、彼はそれ以上、むしろ華奢と形容するのが正しい。


 小柄で可憐な体格、柔和な笑顔。声変わりも済んでないようなソプラノボイス。

 髪を伸ばしでもしたら、深窓の令嬢にしか見えないだろう。


(なんだ、女の子みたいな奴だな)


 瀬尾みつるへの最初の印象は、誰もがそうだろう。

 拓真も、例外ではなかった。


 だが、差し出された手を握り返し、


「ああ、こちらこそよろしく」


 挨拶すると、彼はふふ、と天使のように邪気の無い笑顔を見せる。


 この高校に通う上流階級の人間への、ひいてはこの天陵院学園自体への敵意を胸に秘める九条拓真でも、この少年、瀬尾みつるを憎むのは出来そうになかった。


 席に着き、2、3、言葉を交わしていると。教師が声を上げる。


「さぁ、挨拶はこれぐらいだ。始業式に行くぞ!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ