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天陵院学園高校。
この男子校は、遠く明治の世に創立された名門中の名門である。
元来は華族階級の子弟の為の学園だったこの高校。
創立当初より、この国の頂点に立つべき人材の育成を目標とし、首相や経済界の重鎮など、まさに日本のリーダーと呼ぶべき人々を幾人も輩出してきた。
そして今、21世紀にあっても。
天陵院学園高校は、帝王の学府として君臨し続ける。
「……お坊っちゃんどもめ」
正門へ続く、桜の坂道を登りながら。
真新しい制服の少年、九条拓真は呟いた。
彼の瞳に映るのは、高級車で送られ、坂道を悠々と登る少年達。
人里離れたこの高校、転入生である彼を含む庶民は寮生活が大半だが、屈指の名門高校だけに、自宅から毎日送迎されるような裕福な家の子弟もまた多い。
「見てろよ、お前達」
拓真の瞳に、炎が揺らめく。搾取、支配の権利を、生まれながらに与えられた者達への、怒りの炎が。
「お前達全員、跪かせて……靴を舐めさせてやる」