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4 雨森九馬はゆゆを探して街を彷徨う

雨森九馬  手名椎ゆゆの幼馴染。

狼前院日中 ?

眼帯の男  ?

 ゆゆが突然の新しい出会いに困惑している頃。

 九馬もまた、ゆゆを探して街を彷徨い歩いていた。



「…やっぱり、俺が面倒見てやらないと」


 玄関先で起こったこともあり、九馬も最初はゆゆから離れたほうがいいのではという思いを抱いた。しかし、一晩たっぷり逡巡した後に考え直したのだ。ゆゆの母・夜々に娘を任せられたという責任感。小さい頃から育んできた彼女への愛情。九馬はその気持ちを糧にして、本人からどんな誤解を受けようとも、彼女を見守ろうと覚悟した。そうして彼は、まずゆゆのアパートへと足を運び、不在を確認してから街へ出たのだ。


 出たのだ、が。




「――ゆゆ!?」


 やっと見つけた幼馴染は、

 彼女にとって危険な存在と対峙していた。


 狼前院日中。九馬は一瞬で彼女の名前を思い出した。風にたなびく見事な金髪。バランスの良い体。そして、その隣に立っている眼帯の青年。それらが決定打となったのだ。

 一体、何をしているのだろう。九馬はゆゆが心配になり、前方の三人に駆け寄ろうとした。


 その瞬間。


 九馬の目に、信じられない光景が映った。

 ゆゆが、青年に手を引かれながら道路の方へと歩いて行ったのだ。


 彼らが向かった先は、すぐ近くに停めてある大きなスケートボードの前だった。この町では、エンジン付きのスケートボードが一般的な移動手段となっている。物によっては複数の人間が乗ることもできるため、なかなか便利なのだ。特に、日中たちが今まさに乗りこまんとしているスケボーは光沢のある黒いボディが高級感を醸し出していて、美しい。だが九馬には、それに見とれている暇はなかった。


「一体…何なんだ!?」


 九馬は彼らが乗り込んだスケボーに向かって全速力で走った。

 日中達は、ゆゆをどうしたいのだ。戦闘に巻き込む気か?あの、ゆゆを?駄目だ駄目だ駄目だ!そんなことをさせてはいけない。彼女をそんな危険な目に会わせるわけにはいかない。駄目だ。絶対にだめだ。絶対に、それだけは――!


 青年がゆゆの足元をベルトで固定し終えた。スケボーのエンジンが、音を立てて震える。走り出すスケボー。その後方部に九馬は手をのばしたが、間に合わなかった。

 九馬からどんどん離れていくゆゆ。ずんずん、ずんずんと。後ろを振り返ることもせず。

 九馬は、膝に手をついて荒い息を吐き出した。

 もう、走っても間に合わない。もしも、彼に空を飛ぶ能力があったなら。高速で走ることのできる力があったなら。スケボーに乗ってきていたなら。九馬の頭の中を、反実仮想がぐるぐる回る。だが、現実に反していることには変わりがない。他に何か現実的な手立ては、と彼は顔をあげた。

 すると、背後から声がした。


「――おい、兄さん!大丈夫か?」


 振り返ると、そこにはかなりチャラい男がいた。

 焔を思わせる紅蓮の髪。左耳に刺さっている三連ピアス。ごつごつしたデザインの指輪。真黒なタンクトップから覗くそれなりに鍛えてある肢体。工場でオッサン達が着ているようなだぼだぼのズボン。外見はそれなりに若く、高校生くらいかと思われた。彼の後ろには彼と似たような風貌の青少年たちがわんさかいる。どうやらこのチャラ男は、スクールか何かのリーダー的存在のようだ。


「どうしたんだ?何かあったのか?」


 九馬はまだ息が整っていないまま、彼に訴えかけた。


「実は、幼馴染が――」


 そこまで言って、彼はふと思った。


 どうしてゆゆは初対面のやつらにホイホイついていけるんだ?あいつは昔からどうしようもないくらいの人見知りだったはずだ。俺が初めてあのアパートに行った時も、俺だと気づかずに恐れていた。それなのに、なぜ?似たような女を見て勘違いしたとは考えられない。あんな熊のパーカーを着るのはゆゆくらいなものだ。もしかして、夜々さんはあいつらにも世話を頼んだのか?いや、それはないだろう。このシティに住んでいない限り、あいつらとコンタクトをとるすべはない。よもやゆゆは俺の知らないうちにあいつらと仲良くなったのか?考えられないことはない。何しろ俺は丸一日ゆゆに会っていなかったし、日中とゆゆは同じくらいの年頃だ。仲良くなれないとは限らないだろう。つまり、あれはさらわれていったのではなくゆゆが望んでついていったのだ。それを無理に引き止める権利が、どうして自分にあるというんだ?


「…おい、兄さん?」


 チャラ男の声で、九馬は我に返った。


「…いや、何でもない。気にしないでくれ」


 彼はそう言い放ち、ビル街の合間へとその体をすべり込ませて行った。

 その姿を見送りながら、一人の少年が呟く。


「一体…何があったんでしょうね」

「さあな…けど、さっきの黒塗りのスケボーに関わりがあることは確かだ」


 チャラ男の結論に、もう一人の少年が話しかける。


「今のスケボー…たしか、一天イーテュンの首脳専用車ですよ」

「!そうか…」


 それを聞いたチャラ男は一度目を見開き、直後に考え込む。

 彼の周りを、青少年たちの会話が取り囲んだ。


「まさか『魔女』の野郎…誘拐とか始めたんじゃねえの」

「人身売買ってことかよ!?まさしく『魔女』じゃねーか!」

「いやー、そりゃないっしょ!あいつらが迂闊に自分たちの名を汚すようなことするわけないッス!」


 彼らの声を聞いていたチャラ男は、脳内である結論を出した。



「…もしかしたら、その『幼馴染』ってのは新しい能力者なんじゃねえか?」


 ざわっ、という効果音が似合いそうな空気がその路上を包み込んだ。


「…あいつらが、形勢逆転を狙ってるってことッスか?」

「それはちょっと話が早いだろ。けど、あいつらは顔を見ただけで能力者かどうか見分けられるって噂がある。間違いなくそいつは俺たちの新たな敵に成りうるだろうな」

「そのために、誘拐を…!?」

「『魔女』ならやりかねないことだ」


 まあともかく、と呟きながら、その男は道路の中心に歩を進めた。そこには大きなクレーターがいまだに生々しく残っている。彼はその縁に直立して、手をかざした。


 ――バシッ


挿絵(By みてみん)


 クレーター全体に、閃光が走る。男が手をひっこめると、道路は完全にふさがった状態で沈黙していた。


 おお、という歓声を尻目に、男は背負っていたスケボーを降ろす。それにつられるかのようにして、青少年たちもそれぞれのスケボーのエンジンをかけ、彼らのリーダーの指示を待った。

 男は彼らに指示を出す。


「そのうち”あいつ”から何か報告が来るだろ。それまでは、まあ、いつもみたいに街のパトロールだ」


 行くぞ、と部下に言い放った男は、エンジンを全開にして走り出した。

 一天の新しい戦力と、それに対する戦略を考えながら――。



 その男の名は、虎牙峰勇魚こがみねいさな

 小さな王国(リトルキングダム)小さな王(リトルロード)

虎牙峰勇魚 小さな王国(リトルキングダム)のリーダー


れもんです。テスト前なのに何やってんだああorz

もうベクトルがイミフすぎて…捨てたw

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