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34 愛巣宮は不安を抱える

※一部BLっぽいシーンがあります(ギャグです)

「「無理だろ」」


 二人の男が静かにつぶやいたのを聞いて、林はため息をついた。


「あのね、最初から無理って決めつけてたら何もできないんだよ?もっとあがいてから言おう?」

「だからってさあ……」

「俺も肯定的には考えられない」


 宮に続いて九馬が言った。


小さな王国(リトルキングダム)一天(イーテュン)も解決できていない問題を、俺たちが解決できるわけがない。いくらお前が情報収集に長けていても、それでどうにかなるもんじゃないぞ」

「そりゃそうだね。あたしたちだけじゃね(・・・・・・・・・・)


 自信がありそうな林の口調に、宮は少し引っかかるものを感じた。林の情報ネットワークはもうツッコまないにしろ、人間関係が思っていたより広いらしい。だが、王国にも一天にもパイプがあるとしたら、ばれた瞬間双方からタコ殴りに遭うことは確実だ。いや、それ以前に、能力もない人(ゆゆをのぞく)を軽く信用したりしない一天に、どうやってパイプをつないだんだ?


「その口ぶり、思い当たるやつがいるんだな?」


 圧迫面接でもしているような面持ちで、九馬が問い詰める。しかし、林は何の圧力も感じないのか、組んだ足をぶらぶら揺らしていた。


「うん、まあね」

「で、そいつはどっちだ」

「どっち?」

「王国か、一天か」

「なんで二択なの」

「なに?」


 九馬の眉がピクリと動いた。宮も動揺を隠せず、身を乗り出す。王国でも、一天でもない存在。

 まさか――


「却下だ」

「えー、なんで?」

「お前が言いたいのは、あれだろ。”議会”のことだろ」

「ピンポーン」

「お、おい。あんな見掛け倒しの奴らになんかできるわけねーだろ!」


 宮の言う通り、最近の議会は殆ど機能していない。今回の殺人事件でようやく重い腰をのっそり動かしたようなもので、この町の抗争についてはノータッチの方針を貫き通していた。林が関わっていたのが王国でも一天でもないことに少しほっとしながらも、計画の無鉄砲なことは急にもはっきりわかった。


「ちょっとー、いつから議会は完全な能無しになったわけ?」


 だが、林は変わらず自信満々だった。猫のような目がいたずらに光っている。


「何を言っている」

「二人は知らないかもしれないけど、議会って表立った動きを見せないだけで、意外と裏では動いてるんだよ?この町の監視も行ってるし、結構頑張ってるんだから」


 逆になんで知ってるんだ、と言いたくなるのを我慢して、宮は林の話に耳を傾ける。本当に議会がちゃんと動いているのなら、彼らの情報を手に入れさえしたら解決の糸口が見えるかもしれない。少し大きな賭けになるかもしれないし、とんとん拍子にことをすすめられる保証もない。しかし――やってみる価値はありそうだ。


「ちょっと自信はないけど……やってみるか!何もできないままなんじゃ癪だもんな!」

「……」


 九馬はまだ渋っているらしいが、半分はこちらに傾いているらしい。それを見抜いたのか、林が決定打を口にする。


「これが解決したら――ゆゆちゃんも、危険な目に遭わなくて済むと思うけど?」

「!」


 九馬の目があり得ないほどに輝く。堕ちたな、というように、林が黒い笑みを浮かべた。




 三人でカラオケボックスを出ると、もうすぐ日が沈みそうだった。


「それじゃあ、まずはあたしの知り合いのとこに行こうかな。ひとまず情報収集じゃ―!」


 これからの大冒険を夢見るように、林がきゃぴきゃぴとはしゃぐ。それを見ながら、宮はなんだか不安にならざるを得なかった。こいつ、どー考えても軽く考えてる。軽すぎる。ヘリウムガスが詰まってるみたいだ。あの時はなんだかいけそうな気がして同意したものの、やると決まったらがぜん不安が噴き出してきていた。

 議会のオフィスに向かって歩を進めようとした時だった。


「待て」


 九馬が突然立ち止まった。何事かと思ってあたりを見回すが、宮には何も見えなかった。しかし九馬には何かが感じられたのだろう。路地裏の方をじっと睨みつけたまま動かない。


「九馬さん……?どうしたんすか?」


 宮がおそるおそる話しかけて、ようやく九馬が動き出した。


「お前ら、先に行ってろ」

「えー、なんでなんで?」

「あっちの方で、なにか起きているみたいだ。」

「え?」


 宮と林が目を丸くする。自分たちは何も感じないのに何かの気配を感じるなんて、この男、何者なのだろう。硬直している二人を尻目に、九馬は話し続ける。


「たぶん王国がらみだろう。俺が見てくる。議会の方なら安全だから、先に行け」

「でも、それじゃ九馬さんが……」

「大丈夫だ、これでも体力に自信はある。いざとなったら逃げるさ」

「いや駄目だろ」

「駄目じゃない。……そうだ。」


 そう言うと、九馬はすっと急に手を伸ばした。頬に大きな手を添えられて、宮は思わずどきりとしてしまう。やわやわと耳のあたりを行き来するがさついた手。心拍数が最高潮に達したとき、九馬はするりと手を離した。へなへなと座り込むと、妙に耳に開放感があるのに気が付く。宮が不思議そうにしていると、九馬が無理に立たせながら、宮に触れていた手を見せた。


「これ、借りるぞ」

「お、俺のピアス……?」


 九馬の手には、宮が付けていたピアスがあった。最近買ったものだったが、つけてみると意外と自分に合っておらず、知り合いに売ろうかなどと考えていたものだった。


「もし攻撃を受けて顔面を傷つけられたりしたら、本当に俺かどうか確かめられるだろ」

「ま、まあそうかも……」

「怪我はしないとは思うが……念のためだ。じゃあな」


 有無を言わせない雰囲気を漂わせて、九馬はあっという間に路地裏へと姿を消した。その後ろ姿を見送りながら、宮は思わずつぶやいた。


「林……俺、九馬さんになら抱かれてもいいかも」

「この状況で何言ってんの」

はい、れもんでした。

今秋から週末の公演に向けての仕込みが始まりました。今週の土日、大阪の芸術創造館での公演になります。大阪の方々、気がむいたらお越しください。

このことを話すと結構驚かれるのですが、今回の舞台100万円かけてます。大学のお遊びサークルなんてレベルじゃないですすごいです。ちなみにその三分の一が舞台製作に費やされました。すげえっす。

そんな感じで頑張っていこうと思います。いえい。


次はまりるのターンです

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