30 虎牙峰勇魚は血を浴びる
昨日はお盆休みってことで許し(ry
理性もない。
仁義もない。
何もかもがない――空っぽな自分。
それを埋める者はただ一つ。
理性を奪ったやつの……
「うがぁあああっ!げはっ、げはっ、ぎゃああ!」
耳を覆いたくなるような悲鳴が空気をつんざく。あたりがなんとなく暗くなった街を背景に、とめどなく。
「おい、質問に答えろ」
夕日のように燃える赤毛を振り乱し、勇魚は氷のような心で聞いた。足元には血まみれの男が、アスファルトから伸びた硬い触手で地面に縛り付けられていた。
「知らねぇー……知らねぇー……よ……」
涙ながらに訴えるも、その男は無実を訴える。カガチが彼の傍らにしゃがみこんで、妖しく優しく話しかけた。
「ちゃんと話してくれたら、お前も楽になるんだぜ……?」
「ほ、ほんとに……知らね、ゴホッ、んだ……た……たすけ……」
「知らねえったって、お前”お友達”なんだろ?タネはあがってんだよ。勇魚さんだって、ほんとはこれ以上したくねえんだ。」
「う……そ、だ……」
「あン?」
カガチの眉が、ピクリと動いた。優しそうだった声に、怒りが混じる。
「おい」
「え、あ……はい」
カガチは治癒系の能力者を呼び寄せると、倒れ伏した男の口の周りを中心に治癒させた。せき込みながらも男の体がみるみるうちに戻っていく。希望を見出しかけた彼の頬を、カガチが荒っぽくつかんだ。
「おめえ、なんで信じない?こっちはな、助けてやろうってんだよ。話してくれさえしたら、な。」
「へ、へ……」
男は急に、場違いなへらへらした笑いを浮かべた。
「『相手を信用すんな』ってぇのが、日中様の教えなんだよ。」
「そうか……」
カガチはつられたようにふっと笑い、
「お前はそっちに従うか」
メギィッ
「……っ!?がァあああアアあああああアアアアアアアアアアア!?」
急に襲ってきた、想像を絶するほどの痛みに男が悶絶する。逃れようと体をくねらせるも、きつく巻き付いた触手は男が逃げることを許さない。
恐れもせず、にこりともせず、カガチは冷酷につぶやいた。
「殺さない程度にお願いしますよ」
「ああ」
短く答えると、勇魚は手をほんの少しだけ動かした。それと同時に触手が男の肉に食い込み、骨をきしませ、内臓を圧迫させる。じわじわと襲ってくるその痛みに絶叫する男。カガチは体を折り曲げ、男の耳に吐息交じりに言葉を吹き込んだ。
「痛みってのはな……こんな風に、ちょっと軽くしてやってからまた痛~くすると、も~っと痛くなるんだぜ?知ってたか?」
「あ、ああ……おお……」
男はがくがくと身体を震わせて、言葉にならない声をあげる。カガチが彼の髪を引っ張り、無理に視線を自分に合わせる。
そんな光景を見ながら、勇魚はなんとなく思った。こういう時に、カガチの声は便利だ、と。彼の低く深い声には、相手を安心させてしまうような優しいところがある。こういう尋問にはもってこいなのだ。それをカガチ自身が知っているのかどうか、そこは怪しいところだが。
「これ以上、苦しみたくはないんだろ?」
カガチが危険な甘さのある声で語りかける。男は髪を引っ張られた状態のまま、懸命にうなずく。それを聞いたカガチと勇魚は目を合わせ、同時ににやりと笑った。
「「じゃあ、案内しろ。お前のボスのところに」」
触手をほどかれた男は、血反吐を吐きながらも足を治癒してもらい、それを引きずりながら歩きだした。
その後を、目をぎらつかせた小さな王国が続く。
失った理性を取り戻す戦いに、身を投じるため。
復讐の時、来たれり。
今回はちょっと痛い話でしたね。
最近はサークルの夏公演のためにてんやわんやです。ほんのちょっとだけだけどキャスト出演があるので、頑張ります!
来週はまりるの番。その間、サークルの慰安旅行に行ってきますノシ




