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20 狼前院深夜はひた走る

狼前院深夜・・・日中の弟。

狼前院日中・・・〔一天(イーテュン)〕のリーダー。

狼前院夕暮・・・日中の妹、深夜の姉。

「夕暮お姉ちゃん、もうついちゃったかな……」


 ぱたぱたと足音をたてながら、深夜が走っていく。スクールが終わって友達とスイーツパーラーに行こうとしていたところを、日中に呼び出されたのだ。あいにく周りにスケボを持っているものはおらず、徒歩で向かうことを余儀なくされた。そんなに遠いところでもなかったのと、夕暮も来るとのことだったので、少し無理をしてでも行きたかった。


「日中お姉ちゃんったら、いつも勝手なんだから……」


 ぶつぶつ言いながら小走りに道を行く。周りの人々がちらちらとこっちを見てくるのが少し不快で、深夜は人気のない裏路地を通ることにした。


 ――今度の人死に、〔一天(イーテュン)〕が絡んでいそうだ。


 そんな話をちらちら聞いたため、みんなが自分を人殺しの一派だとみなしているのだろう。そんなわけがないのに、風評被害とは理不尽なものだ。深夜は知っていた。姉はそんな人間ではないということを。ああ見えてやさしいところがあるということを。そんな彼女が人殺しに加担していたなど、ありえないということを。

 では、誰がやったのか。

 深夜には、思い当たる節があった。


「……あいつしか、いないよね」


 以前、陰の支配者が自分たちに伝えた存在。


 ――俺を殺せるやつが、現れた。


 深夜は、その存在に目をつけていた。あの報告を受けたのちに人死にがでたのだ、間違いないだろう。その存在がいったいどんなものなのか、そういったことは全く知らない。だが、この二つは絶対に関係している。深夜には、そんな確信があった。


「許さない」


 深夜は、唇をぎりりと噛んだ。


「日中お姉ちゃんを疑わせる奴は」


 鋭い痛みとともに、軽い血の味がにじむ。



「僕が、やっつけてやるんだから……」




「いい度胸じゃねえか」


 突然背後から聞こえてきた声に、深夜はびくりと体を震わせた。振り返ると、一人の男がへらへらと笑って立っている。群青の着流しに蜻蛉の団扇という姿はまるで夏祭りのようだが、ここは何のイベントも起きていない、ただの裏路地だ。ハレとケが錯綜した格好の男は、明らかに怪しい人物だった。


「……誰……?」


 男はふふ、とほほ笑み、かがんで深夜と目線を合わせた。


「警戒しなくてもいいんだよ~。俺はお前のおねーちゃんの味方だから♪」

「味方……?〔一天(イーテュン)〕のメンバーじゃないよね、君……」

「まあね。俺、この街に来たばかりだから。」


 ざわ、と深夜の中でざわめきが起きる。この街に来たばかり――それは、深夜にとってあることを示していた。


 ――まさか、この男が!?


 深夜の疑りを知ってか知らずか、あざけるように男は続ける。


「ま、そのうち〔一天(イーテュン)〕に入れてもらいたいな~とは思ってるんだよね。だけど何の手土産もなしっていうのはちょっとアレだから、今がんばっちゃってるわけ。」

「何を……がんばってるの?」

「何って。今ホットで手柄になるのって一つしかねーじゃん?」



「人殺しを、捕まえるのさ」



「……!」


 深夜の目が大きく見開かれる。この一言で、彼が犯人ではないということがはっきりした。そして同時に、彼が支配者を殺せるものではないということも。初対面ということもありまだ完全に警戒を解けるわけではないが、少しは信用してもよさそうだ。

 男はさらに続けた。


「そんでさ、俺、結構でっかい情報つかんだんだけどさ~。俺一人じゃどうも解決できなさそうなんだよね。で、〔一天(イーテュン)〕にこの情報を売ろうと思ってたわけ。そういうわけで……」


 男は少し口をつぐむと、満面の冷たい笑みを作った。


「お姉ちゃんの居場所、教えてくれない?」


 深夜は即座に首を横に振った。信頼しきれないものに姉の所在を教えるなど、とんでもなかった。


「……まあ、そうだろうね。」


 男は残念そうに立ち上がると、名刺入れとペンを袂から取り出し、名刺に何やら書き付けて、深夜に手渡した。


「じゃあ、これ、お姉ちゃんに渡しといてくれないかな?また今度来るから。じゃあね」


 深夜があっけにとられていると、男はすたすたと深夜と逆方向に去って行ってしまった。恐る恐る名刺を見ると、裏側に何やら書き付けてある。震えながらその書き込みを見ると、そこにはこうあった。



『”人死に”の真の犯人は』



『〔小さな王国(リトルキングダム)〕にいる』



 がくがくと震える足を押さえながら、深夜は名刺を表にかえした。先ほどの男の名前と連絡先が書いてあるだけで、何の変哲もない名刺だった。深夜は男が去った方向を見据え、こうつぶやいた。



「許さない……」


 深夜の膝の恐怖の震えは、怒りの震えに静かに変わっていった。

午後になってから書いてなかったの思い出すとかどんだけ!?桜木れもんです。


うちの劇団サークルでの初公演が今週末に迫ってきました。演技力の向上もさることながら、会場設営や宣伝も大変です。でも何が一番大変かって、演出のオファーに合わせてイメチェンしなくてはいけないこと。そんなわけで今回の公演で、初めて髪を染めました。そしてコンタクトしました。髪はまだいいんですがコンタクトはまだなれません。今でもちょっと見えにくいときとか今は亡きメガネを押し上げようとしてしまいます。あー恥ずかし。


次はまりるのお話。

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