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零の新章  作者: ぱうぇん
第一章
6/7

第04話 ‐山賊②‐

分割するほど残りは長くなかったというオチ

しっかり確認しとけよな、自分・・・orz

 荒野をどのくらい走っただろう。アジトに着く頃には、すでに陽は暮れ夜の帷が降りていた。

 木々がまばらな森を抜け、山中に入った所に夜爪団のアジトはあった。

 元は砦だったのか、高い石垣とその中央に木製の大きな門。しかし、門の半分は壊れてしまったのか、外されたままになっていた。

 門を抜けた先には、大小様々な建物……の残骸が鎮座していた。

 中にはいくつか実用に耐えうる程度の建物も残っていたが、長く打ち捨てられていたのか、そのどれも劣化が著しい。

 門の側に建てられていた、屋根の無い小屋の側で馬を止め、奉元達はその建物の中に馬を連れていった。

 馬に乗るという初めての経験な上に、奉元の後ろとは言え長時間の乗馬ですっかり足やお尻が痛くなっていた。


(乗馬は疲れる…)


 地に足が付き安心したせいか、途端に空腹を思い出す。そういえば、今日は何も口にしていない。水こそは奉元から貰って喉を潤したが、とても温く、お世辞にも美味しいとは言えない水だった。あの冷たく美味しかった山の湧き水を思い出した私は、がっくりと肩を落とし、奉元達が戻ってくるのを待った。


「チッ…あいつらは出迎えもしねぇのか」


 やがて戻ってきた奉元が憤怒を露に、砦の奥の仲間達に向かって呼びかける。

 その怒声が聞こえてか、建物の各所からわらわらと人が這い出でてきた。

 格好は奉元達と似たりよったりだ。ついでにアルコールの据えたような臭いも立ち篭めはじめる。

 出てきた人数は三十人ほどだろうか。

 整列するわけでもなく、雑然と奉元の前に集まった所で、その中の一人が奉元の前に歩み出て声をかけてきた。


「御頭!おかえりなせぇ」

「おう!つーか、てめぇら俺らが戻る前に酒盛り始めやがったな!」


 奉元は前に出てきた仲間の頭は思いっきり殴る。

 重い一撃を受けた一人が、ふらふらと倒れ込むように後ずさるのを慌てて、その後ろにいた仲間達が支えた。


「誰の断りがあってやってんだ!ぶち殺されてぇのか!」


 手近にいたもう一人を捕まえ、再び頭にキツイ一撃が下りる。

 今度殴られた男は、殴られた頭を抱え、その場で蹲る。

 そして、また手近の一人の胸ぐらを掴み引き寄せ、同様の一撃をお見舞い。


「先にやってていいって行ったのは御頭ですぜ…殴るなんてあんまりだ…」


 前に殴られた二人ほど力が入ってなかったのか、はたまた殴られた人が丈夫だったせいか、三度目に殴られた男はふらふらとよろけたものの、倒れ込む事はなかった。


「そうだったか? まぁいい、てめぇらに新しい仲間を紹介する!」


 自分の理不尽さを追求され、奉元はバツの悪そうな顔をしたがすぐに引き締め、私の襟首を掴み自分の前へと引っ張る。まるで猫を掴み上げる様に軽々と吊り下げられてしまった。相変わらずの凄い力だ。

 奉元の前に立たされた私は、掴みあげられた襟首のせいで一瞬息が止まり、開放された今でもケホケホと咳き込んでいる。

 奉元はそんな私の事などお構い無しだというように、勝手に紹介を始めた。


「偵察した先で拾ってきたカンナだ」

「なんでぇ…ガキじゃねーですかい」


 アジトの仲間の言葉に、奉元と一緒だった仲間四名が笑い声を上げる。

 やっぱりここでもガキ扱いですか…。

 私はもはや諦めの境地だ。


「まぁ、ガキみてぇな形だが、こいつ曰く歳は十五らしい。あと、どこの国にいたのか知らねぇが物事がよくわかってねぇ。だからって、こいつには手を出すんじゃねぇぞ!」


 特にお前だ!と言わんばかりに、奉元の後ろに控えていた丸々と太い大男を睨む。

 その眼光に大男はたじろいだ。

 再度、手を出すなと仲間に念を押す奉元だったが、大男以外は「誰がそんなガキみてぇな奴を相手にするかよ」と下卑た笑い声を上げる。

 奉元は、その返答に満足したように頷いた。


「当面は俺が面倒を見る。そのうち、仕事にも連れて行くから、てめぇらもそのつもりでいろ!」

「「「「「へい!」」」」」


 雑然と並んでいた集団が一斉に返答を返す。その様子に少々ビックリし、私は一歩後ずさった。そんな私の頭をガシガシと撫で、笑い声を上げる。

 そういえば何かある度に奉元の笑い声を聞いている気がする。笑うことが癖なのだろうかとふと思ってしまった。

 正直、何事も無く終わると思っていなかった為かなり警戒していたのだが、他の仲間が何も言ってこないところをみると、奉元というこの男は、仲間からの信頼は結構厚いのかもしれない。


「よし、とりあえずおめぇも腹減ってるだろう。仕事しねぇ奴に食わせる飯はねぇが、今日だけは特別だ!」


 私が返事をする前に奉元は片手で私を抱え上げた。

 自分で歩かせるよりも、こっちの方が早いと言わんばかりに小脇に抱える。これじゃあまるで荷物扱いだ。

 まぁ、現状ではお荷物なのは変わらないが、この扱われ方はなんだろう…。釈然としない。

 釈然としない気持ちを抱えたまま、今も心配しているであろう祖父へと胸中で現状を報告した。


(お爺ちゃん……。神奈は山賊さんのお仲間になってしまいました……)


 祖父が聞いていたらビックリして倒れるだろうか……。それとも、呆れてしまうだろうか……

 祖父の事を思い出し、一抹の不安を抱えたまま、見知らぬ土地で、さらに見知らぬ山賊達との一日が終わろうとしていた……


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