第六話
おれたちは今、最悪の状況の中にいた。
周りには5匹ほどの狼が、おれたちを噛み殺そうと、威嚇をしている…
「おいおい、ちょっとこりゃやばいんじゃね?」
レッズが困ったかんじで言う。
「あぁやばいどころじゃねーぞ」
おれはちょっとビビっていたが、いざとなったら立ち向かう勇気もほんの少しあった。
すると1匹の狼がおれたちに襲いかかろうとしていた、その時だった。
おれの中の何かが解放されたのだった…
3日前ーーーー
「えーっ今から特訓をするが、その前にお前たちをテストする。」
「「えっ…???」」
「お前たちがこのテストに合格したら特訓してやる。ただし合格出来なかった場合は、お前たちはグラディエーターになる資格がないと見なし、即刻この場から立ち去ってもらう。テストを受ける気はもちろんあるだろ?」
「へいへい、要は合格すりゃあいいんだろ?まかせろってーの」
「アヴェンはどうなんだ?」
「やるよ!!絶対合格してやる!!」
「んでそのテストの内容ってなんなんだ?」
レッズが問う。
「あぁ、ちょっと待ってろ」
そういうとレガロは道場の中から何やら黒いカーテンがかかった檻を持ってきた。
「今からあの山に登ってもらう」
レガロが道場の後ろにある山を指す。
「あの山の頂上にこれと同じマークのついたボールがある」
レガロがポケットからバツ印のついたボールを取り出し、おれたちに見せる。
「一週間以内にそのボールを持ってこい。一週間以内に帰ってこれなかったり、帰ってきてもボールがなかったら不合格だからな」
「んなモン簡単だな。あの山はオレたちの庭みたいなもんだからな。だよなアヴェン!」
「おぅ!任せとけ!」
おれたちはあの山で昔から遊んでいた。だからあの山のことに関しては誰よりも知っているだろう。
「んじゃあ始めてくれ」
「さっさと終わらせて能力の特訓するか」
レッズとおれは道場を後にした。
「あ!やっべ!重要なこというの忘れたちまった!」
「どうしたんじゃ、レガロ殿?」
「3日経ったら俺の能力で造った猛獣たちを放つってこと言ってねぇ」
「あいつらなら大丈夫じゃろう」
「そうだな」
ーーーーそして今、狼たちが一斉に飛びかかってきた、まさにその時だった。アヴェンの身体から黄金の光が出ていて威圧で狼たちを圧倒した。
「何だこれぇ…?」
するとアヴェンらしくない強気な声で
「下がってろ」
と言われた。その背中はいつものアヴェンよりもでかく、そしてたくましかった。
「お前…あ、アヴェンかぁ…?」
オレの言葉に耳も傾けずに狼のほうへと向かっていった。
「滅す」
オレは信じられないほど強いアヴェンを見た。次々と襲いかかる狼たちを素手で殺していき、気づいた時には狼たちの死骸がオレのそばで転がっていた。するとあの黄金の光が消えてアヴェンはそのまま倒れてしまった。