消えた笑い声
地球にダンジョンが産まれたら ~外伝:逆鱗、そして消失~
第百五十一章:消えた笑い声
その日は、天が隣町まで「醤油の醸造樽」を買い出しに出かけ、凛と椿が庭で洗濯物を干している、ほんの一瞬の隙だった。
世界中のギルドから雇われた特級の隠密探索者たちが、魔力を完全に遮断するアーティファクトを用い、裏山で遊んでいた六人の子供たちのうち、一番下の双子を連れ去った。
「……ダーリン。凛、椿。子供を返してほしければ、全てのドロップ食材と、若返りのレシピを渡せ。追えば子供の命はない」
庭に残された一枚のメッセージカード。
凛の瞳から光が消え、椿の周りの空気が凍りついた。
第百五十二章:修羅の覚悟
「……にしし。あははは……っ! 笑わせないでよ。私の子供に触れたその手、一本残らず叩き潰してあげる」
凛の背後から、黄金のオーラが火柱のように立ち上がる。その圧力だけで、周囲の樹木が粉々に砕け散った。
「……万死に値しますわ。私の子供たちを、政治や金の道具にしようだなんて。……一瞬で殺すのは、慈悲が過ぎますわね」
椿の髪が逆立ち、彼女が指先を動かすだけで、道東の空に巨大な魔力回路が展開された。
その時、空間を強引に引き裂いて、買い出しから戻った天が現れた。
第百五十三章:神の激怒
「……凛、椿。状況はわかった」
天の声は、驚くほど静かだった。だが、その足元の地面は自重に耐えかねたように沈み込み、彼が纏う『八角の軽装備』が、どす黒い漆黒の光を放ち始めた。
「……俺は、ずっと『安全』に生きたかった。家族を危険にさらさないために、世界から隠れて生きてきた。……だが、思い知ったよ。俺たちが静かに暮らすためには、害虫を『一匹残らず根絶やし』にする必要があるんだな」
天のレベルが、リミッターを外して上昇を始める。
85……90……99……。
ついにシステムが計測不能な「ERROR」を吐き出し、天の背後に『全能の父』を超えた、終焉を司る神の影が現れた。
「……【神域の食卓】、展開」
第百五十四章:調理の時間
犯人たちは、100km離れた地下シェルターにいた。だが、次の瞬間、シェルターの天井が「スライス」されるように消失した。
「な、なんだ!? 空間遮断結界が……ぎゃああああっ!!」
犯人たちの手足が、天の『見えない包丁』によって、一瞬で、だが致命傷を避けて切り刻まれる。
空中に浮遊したまま、天が、凛が、椿が、静かに舞い降りた。
「……ダーリン、この人たちの足、私が『黒豚』みたいに細かくミンチにしていい?」
「……ええ。私はこの者たちの神経を一本ずつ『パスタ』のように引き抜いて差し上げますわ」
天は無言で泣きじゃくる子供たちを抱き上げると、犯人のリーダー格の男の喉元に、真っ赤に熱せられた『調理用のコテ』を突きつけた。
「……安心しろ。お前たちは死ねない。俺の【超絶回復】のバフをかけ続けてやる。……何百年、何千年かけて、お前たちが奪おうとした『食材』の痛み、その身で味わい続けろ」
第百五十五章:消えた国家
その日、誘拐に関わった複数の国家のギルドと、それに出資した巨大企業が、一夜にして地図から消えた。
攻撃による破壊ではない。そこにあるはずの建物、人間、資産のすべてが、まるで「食べ尽くされた」かのように、跡形もなく消滅したのだ。
道東のログハウスに戻った三人は、子供たちをきつく抱きしめ、二度と離さなかった。
「……お帰り。もう大丈夫だ。パパが、ママたちが、世界そのものを書き換えておいたからな」
天の表情は元の優しい父親に戻っていたが、その背後には、二度と誰も踏み込めない「絶対的な死の拒絶」が完成していた。
守屋一家を怒らせる。それは、人類が犯せる唯一にして最後の、最大の過ちであった。
プロンプト
人拐い
激怒する天夫婦




