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魔法少女の殺し方〜All we need is〜  作者: 黒鮫しゃけ
第1章・芽吹く

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第9話・頭痛ばかり

壁に架けられた時計、その秒針の刻む音が聞こえる。

部屋の中に、(あららぎ)の声が響いた。


「すみません……もう1度だけ言ってもらえますか?」


か細い声で、スマホ越しに白羽(しろばね)へと伝える。


「疲労からか、上手く聞き取れなかったようなので」


「冗談でも何でも無いんですけどね。じゃあ、もう1度だけ言いますからね〜」


呆れたような声で蘭に返答する。

そして数秒前と同じ言葉を、白羽は繰り返した。


「うち、なんか負けちゃったんだけ――」


「本当なんですか!? あ、相手はDランクなんですよ? それに対して白羽さん、魔法少女ラヴ・ホワイトの階級はBランクなんですから……」


「そんなこと、うちが1番分かってるって。ほんとのほんと、ジョークでも何でもないんだから」


声を荒げて詰める蘭に、白羽は静かに言葉を返す。


「今回の魔物、再生持ちだったよ蘭っち」


「その呼び方は止めてください、っていつも言ってま……」


白羽に呼ばれたあだ名に、蘭はいつものように嫌悪感を示す。

反発しようと口を開いた直後、流すように言われた言葉に声が途切れた。


「再生、持ちですか……? 今回の討伐対象が、再生能力を有していた……んですね。なるほど……」


再生能力――

魔物の階級区別において、一種の指標とされるもの。

この能力を有する魔物は耐久性が高く、危険度が大きく跳ね上がる。


(やはり戦場では、生き残った人が勝ちですから……)


そのため再生能力を持つ魔物は、最低でもCランクに認定される。


「おそらくですが、協会のシステムに不具合が起きたのでしょう。申し訳ございません」


白羽さんの戦い方は持久型。

同じ戦闘スタイルの相手では、火力不足だったのだろう。


それに魔物の形状や特性によって、さらに上のランクに認定される可能性もある。

ならば私が白羽さんに伝えるべきことは――


「白羽さん。今回の討伐対象の分析のため、魔石の回収をお願いします」


「はーい、了解しました〜。じゃあ、この後本部に向かいますね」


白羽はそう言い終えると、一瞬のうちに通話を切った。

切断音がスマホから無機質に流れる。


「………………はぁぁぁ」


椅子に深々と座り、細く長いため息を吐く。


スマホをデスクの上に置いて、パソコンの方に向き直った。

近くに貼られたメモを剥がして、手元に持ってくる。


「魔石分析は研究部に連絡。新しい新人は……()()()にお伝えしないと」


メモとモニターを交互に見ながら、キーボードを細かく叩く。

最後にエンターを押そうとした瞬間、蘭はふと違和感を覚えた。


白羽さんが負けるような相手に、どうやって新人は勝ったのか。

そもそも、魔物による被害の方はどうなっているのか。


白羽さんは今、そして私は今、どんな状況に置かれているのだろうか。


忙しかった手を止め、何もないところを凝視する。

数秒ほど経って、蘭はゆっくりと口を開いた。


「1度、忘れておきますか……」


床に転がる潰れた缶が――

無理やり直っていくような、そんな空耳が微かに聞こえる。


頭を何度か振って、ゆっくりと深呼吸をする。

蘭はスマホを手に取ると、自分の右耳に当てた。


「業務中に失礼します、人事部魔法少女管理課の――」




一方その頃――


女には、やらなければならない時がある。


目の前の若人。

彼女は、可能性を秘めた種。


そう、うちは女として恥じるべき事をしてしまった。


瞳を閉じたまま、ラヴは冷静に思考する。


「あ、あの……魔法少女さん?」


直後、大きさおよそ0.03ミリメートルの砂が敷き詰められた地面に、膝を付いた。

白羽の突然の奇行に、ぎょっとした乙女は目をまん丸くする。


滑るように腰を下ろして、正座の体勢を取る。

両手を前に出し、三角を作るように地面に置いた。


「ほんっとうに……!」


白い肌を砂で汚し、そして、勢いよく頭を振り下ろした。


「ごめんちゃい」


砂埃がぶわっと舞い上がり、ラヴの姿を覆い隠す。

どこか滑稽なその様子に、乙女は思わず目を逸らして口を開いた。


「な、何に対して謝ってん……ですか?」


「気が付いちゃったんだ、うち……」


戸惑いを隠しきれない乙女に、ラヴは詰め寄るように告げる。


「うちが負けたせいで、乙女っちを巻き込んじゃったんだって!」


「お、乙女っち……?」


ラヴの凄まじい勢いに押され、乙女は困惑の声を漏らした。


(なんだろ……)


美しい金髪を砂に擦り付ける、ラヴの言葉にしがたい行動。


疲労と困惑、そしてどこか既視感を覚える。

乙女は彼女に対して、自身の友人を想起していた。


(この人、祭莉(まつり)みを感じる……)


悪寒が背中を伝い、乙女はこめかみに指を当てる。

頭が痛くなりそうな状況に、言葉を探すように口を開いた。


「あー、とりあえず……」


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