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魔法少女の殺し方〜All we need is〜  作者: 黒鮫しゃけ
第1章

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第7話・邂逅

「あー、千桜(ちざくら) 乙女(おとめ)……っす。所属、所属……えーと、花酔(はなよい)東高校の1年生です」


首元の剣に視線を落としながら、一言一言を慎重に発していく。

最後まで言い切ると、光の刃が僅かに動き、首の皮を裂いた。


「えっえっ、もしかしてふざけてる?」


「あの、そもそも。私、魔法少女じゃない、です……」


両腕を頭上に掲げながら、困ったように呟く。

傷口から滲んだ血が、首筋を垂れる。


そのとき、光の剣が滑るように落ちた。

砂場に刃がぶつかり、粒子になって消える。


「いやいやいや!? その格好で否定するのは厳しいよ!」


左肩に手が添えられて、無理やり体を振り向かされる。

乙女の視界に飛び込んできたのは、金色の髪と豪華なドレスを纏った少女――ラヴの姿だった。


「あれ、さっき負けてた魔法し――」


「言わないお約束!」


ラヴはぐっと乙女に詰め寄ると、その口元を手で覆う。

その唐突な行動に驚き、乙女が目を丸くした。


素早くラヴの手を掴み、口元から引き剥がす。

そのまま勢いよく振り払うと、ラヴの体が宙に浮いた。


(なんて力……! これでも結構、本気で押さえてたのに……!)


乙女に振り回されながら、ラヴは自分の状況に驚愕する。

砂埃を立てて地面に着地すると、ため息を吐くような口調で語りかけた。


「もー、協会と事を立てる気ですかー?」


「そんなつもり無いんだけど……っす」


唐突な警告に、乙女は困惑する。

視線を泳がせながら、独り言のように返事をする。


そんな乙女の様子を見ながら、ラヴはどう行動するべきかを考えていた。


自分で言うのもアレだけど、うちは魔法少女の中でもランクが高い。

それなのに、うちにあまりピンと来てないのはどういうこと?


この子が魔女だったとしても、意味が分からないし。

でもでも、明らかに魔法少女なんだよねぇ。


(これはもう……仕方ないかなぁ)


ラヴは1度頷き、そっと目を閉じる。

そして、右腕を胸の前に持ってきた。


次の瞬間、手の中からゆっくりと光の線が伸びる。


「Bランク魔法少女【幸運】、協会規定に従って貴女を拘そ――」


真剣な気配を纏うラヴに、乙女はどこか冷や汗をかいてくる。

左足を1歩後ろに置き、重心を下げた。


視界の端で、白い髪が再び揺れる。


(うん……? 白い?)


頬に触れる髪を指で摘み、目元まで持ってくる。

さらさらと指から溢れていく髪の毛は、確かに白色だった。


(い、いつのまに……?)


右手を下ろすと、自由になった髪が首をくすぐる。

それに釣られて視線を落とせば、自分の服装が目に留まった。


西洋チックなドレスへと改造された、純白の和服。

滑らかな厚手の生地は、鈍く輝きを帯びている。


点々と紅が飛び散り、蝶々が舞っている。

その模様は華やかでありながらも、目立たずお淑やかさを併せ持つ。


動きやすさの為か、至る所が千切れ、歪になっている。

不完全さが、この和服に不気味さと幻想を織混ぜていた。


乙女の身を包んでいたのは――

()()ぎだらけの、白無垢だった。


見覚えのない自身の姿に、唖然と立ち尽くす。

状況を飲み込もうとしたとき、ふと疑問が乙女の思考を過った。


(あれ、ちょっと待って……?)


そもそも、なんで私は死んでないのだろうか。

どうしてあんな怪物と戦えていたのだろうか。

私はいま、ちゃんと千桜 乙女なのだろうか。


疑問が頭を埋め尽くし、乙女はそっと首に手をやる。

少し撫でてから手を離せば、乾き始めた血液で真っ赤に染まっていた。


そのとき、乙女はふと違和感を覚えた。

血塗れの右手を、もう1度首筋に持っていく。


(やっぱり、傷がない……)


剣を押し当てられた傷が、跡形もなく消えている。


数秒の沈黙の後――

乙女は、自分の状況を理解した。


どこか覚悟を決めた、そんな風に見える乙女の表情に、ラヴは思わず身構える。


(そんな張り詰めちゃって。まさか、うちと戦うの……!?)


ラヴは動揺しながらも、慎重に重心を後ろに動かす。

足を1歩下げ、右肘を引いて剣先を乙女へと向ける。


その時、乙女が気の抜けた声で呟いた。


「あー、訂正いいですか。私、魔法しゅ痛っ……!」


喋る途中で舌を噛み、乙女が口元に手をやる。

指の隙間から、くちびるに血がついているのが見えた。


(魔法しゅ……? いったい何て言う気?)


数秒ほど沈黙が過ぎて、乙女が再び口を開いた。


「えーと私、魔法少女だったわ……っす」


乙女とラヴの間を、乾いた風が吹き抜けていった。

ラヴの右手から、光の剣が零れ落ちる。


目を見開き、目を逸らす乙女を凝視する。


1、2、3秒――

時間だけが進んでいく。


「え……」


ラヴが小さく声を漏らした。

乙女の体はさらに縮こまり、もう表情がしっかりと見えない。


そして、絶叫が公園に響き渡った。


「えぇぇぇぇぇえええ!!!」


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