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6・ようこそオカルト部へ

「ズバリ入部の勧誘! よかったらオカルト部に入らない? 明るくてアットホーム、自由に来てもいいし帰ってもいいし、そもそも来なくてもいいから。お願い!」


「はーい、入部しまーす! 聖は?」


「俺も……」


 入部しようかな――という言葉が俺の喉で詰まる。萩田先輩は祈るように手を組み、目を潤ませ媚びるような上目遣いを向けていた。その姿は魔性の女ではなく男の娘。一朝一夕で身につく術ではないそれに劣情をくすぐられる。


 落ち着け俺、相手は男だ。心に念仏のように唱えて大きく息をはく。


「入部します」


「やった!」


「入部をしてくれてありがとう。月1の特典は欲しい?」


「欲しいです! 何がもらえるんですか?」


「聖くんは?」


「とりあえず特典を聞いてから考えます」


「宗君の写真」


「俺は、大丈夫です」


 ちょっと欲しい気持ちはあるものの面と向かって言うのは勇気がいる。届いたら雅のほうから送ってもらおう。


「部員が21人もいるよ!」


「多いでしょ。ほとんど写真目当てなの」


「ちなみに写真配布を考えたのって水落さんですか」


「そうよ」


「じゃあ入部勧誘のポーズとかも……」


「麗ちゃんが教えてくれたんだ。僕の夢だったオカルト部ができたのも麗ちゃんのおかげなんだよ」


「私はなにもしてないよ。宗君が頑張っているから部として存続できてるんだよ」


 頑張っているという言うより、使われているという表現がピッタリな気もする。けど、萩田先輩がオカルト部を作れて嬉しいなら、それでいいのかもしれない。


「宗先輩と水落先輩ってできてるんです?」


「できてないよ」


「だって、雅ちゃん」


「えーびっくりー」


 びっくりというか、水落先輩にその気があるのに萩田先輩が気づいていないだけに感じる。水落先輩の強い語気には、鈍感な萩田先輩の不満がうっすらと見えた。


「じゃあ私からも質問させて。雅ちゃんは聖くんのどこを好きになったの?」


「ツ、ツンツンしてるけど一緒にいてくれること……です……」


 雅の顔はみるみる真っ赤になって、声はだんだんと小さくなっていく。思えば、雅が俺のどこを好きになったかは聞いたことがなかった。初めて知るその理由にこっちまで恥ずかしくなってくる。


「そうなんだー。へー、ツンツンしてるけど一緒にいてくれることねー」


「み、水落さんからかわないでください!」


「へー」


「萩田さんも乗らないでください!」


 ニンマリとした湿度高めの笑顔に俺の顔が熱くなるのが分かる。やられっぱなしは性に合わないからやり返したいのに、水落さんは質問の手を緩めてくれない。


「ちなみに聖くんはどうして一緒にいてあげるの」


「それは……あいつが危なっかしいからです。親心ってやつですよ」


 本当はそんな立派なものじゃない。小学生のあの日、クラスの全員が敵に見えたときに(あいつ)が転校してきた。そして雅もまた、口が災いしてクラスに弾かれた。同じ弾かれ者同士、家も近くて一緒にいるだけだ。


「……そっか」


 水落先輩に見抜かれたか。意味深の()に俺はいろいろと勘ぐってしまう。とりあえず話をそらして、これ以上俺たちのことを根掘り葉掘り聞かれないように気をそらそう。


「あの、前から気になってたんですけど萩田さんってどうして眼帯してるんですか?」


「僕の右目はいろいろと見えちゃうから。だからこうやって見えないようにしてるんだ」


「あー、そうだったんですね。それは……大変そうですね」


 人とは違うものが見えるのは苦労が多かっただろう。きっとそれは、俺が思っている以上に――。


「ちなみに聖くん、そういう設定だからあまり真に受けないでね」


「あ、え、そうなんですか」


「違うもん! 見えてるもん! 人の放つオーラが僕には見えるの!」


「しかもそっち」


 幽霊とか(あやかし)ではなく人のオーラ。俺が予想していた答え萩田先輩はを軽々と越していく。


 ちょうどクールタイムを終えたのか、平常運転に戻った雅がその話題を逃がすはずもなく食いついてきた。


「ねえねえ宗先輩、ボクのオーラはなに色に見えます?」


「こ、この力はあまり使いたくないんだけど……見たい?」


「見たいです!」


「聖君も?」


 見たいか見たくないかでいえば見たくない。そもそもあんまり興味がない。が、萩田先輩の期待の眼差しを向けらたらとノーとも言えない。


「俺も見たいです」


「しょうがないなぁ」


 出し惜しみしている風を装いルンルン気分なのは一目瞭然だ。萩田先輩はゆっくりと眼帯を外して隠されていた右目をあらわにする。


「宗先輩の目が赤色です!」


「カラコンね」


「麗ちゃんよけいなこと言わないで!」


 萩田先輩は水を差されて声を荒らげながらも演技は止めずじっと雅を見つめる。


「んー活力にあふれたオーラをしている。でも揺らめきがあって迷いを感じるかな」


 すごい、でかい的を射るような発言はうさん臭い占いそのままだ。


 萩田先輩は続けざまに俺を見る。本当にいい顔をしているのに、中学生のときに発症する病で残念なイケメンになってしまっている。


「不規則に強くなったり弱くなったり、過去に癒えない傷を負ってる感じがする」


 萩田先輩はそれらしい言葉を並べただけだ。なのに、どうにも的を射た発言に心が傾きそうになってしまう。きっと、さっきの「どうして一緒にいてあげるの」の質問で水落先輩と同じように思ったに違いない。


「こんなとこかな」


「す、すごいです宗先輩……ズバッと言い当てられちゃいました……」


 うん、前から思っていたが雅は騙されやすい。目をキラキラさせて萩田先輩を崇拝しそうな勢いだ。


「ねえ聖くん、雅ちゃんにはあなたが必要だね」


「そういう水落さんもじゃないですか」


「そうかな」


「そうですよ、きっと」


「よかったらまたオカルト部に来てよ」


「はい、また来ます」

 

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