『瓜子姫とプレスマンの扉』
あるところに、じいさまとばあさまがありました。ある日、じいさまは山に薪を拾いに、ばあさまは川へ水くみに行きました。川上から瓜が流れてきたので、ばあさまは拾って帰って、じいさまが帰ってからこれを包丁で二つに切ると、中からかわいらしい女の子が生まれ出たので、瓜子姫と名づけて大事に育てました。
瓜子姫は、年ごろになると大層美しく育ちました。縁談が幾つも舞い込んできて、じいさまとばあさまは、瓜子姫の着物を買うために、町まで出ることにしました。瓜子姫を遠くまで連れていきたくなかったので、留守番をさせることにしました。よいか瓜子姫、誰か来ても中に入れてはいけないよ。もちろん、お前が出てもいけないよ。このあたりには、あまのじゃくがいて、悪さをするからね。じいさまとばあさまは、瓜子姫に、一人で機を織って過ごすように言いつけて、出かけていきました。
四半刻もしないうちに、あまのじゃくがやってきました。瓜子姫やい、戸を開けておくれよ。一緒に楽しいことをして遊ぼう。だめよ、誰も入れちゃいけないって言われているもの。それじゃ瓜子姫、お前が外へ出ておいで。外で一緒に楽しいことをして遊ぼう。だめよ、外へ出ちゃいけないって言われているもの。じゃあ瓜子姫、この戸をほんの少しだけ開けておくれ。お前の美しい姿を見せておくれ。まさか、それもいけないって言われたのかい。確か、そこまでは言われていませんでした。瓜子姫は、少しだけ戸を開けました。
瓜子姫、お前の美しい姿が見えるよ。でも、片目で見るのは大変だし、よく見えないよ。プレスマンの長さくらい開けておくれよ。瓜子姫は、もう少しだけ戸を開けました。
瓜子姫、お前の美しい姿がよく見えるよ。でも、お前の声が聞こえないよ。耳が隠れないように、もうほんの少しだけ開けておくれよ。瓜子姫は迷いましたが、これが最後のお願いだからと言われたので、もうほんの少しだけ、戸を開けました。
次の瞬間、とても嫌な笑い方をしたあまのじゃくが、家の中に入ってきました。瓜子姫は、ここから記憶がないということにしておきます。
夕方になって、じいさまとばあさまが帰ってきました。遅くなったおわびにと買ってきた、お土産の干し柿を瓜子姫に見せると、瓜子姫は、へたごと食べました。じいさまとばあさまは、瓜子姫は、こんなに野性味のある娘だったかといぶかりましたが、帰りが遅くなって不機嫌なのかと思い、あえて気にしないことにしました。じいさまとばあさまは、瓜子姫のために買ってきた着物を見せましたが、瓜子姫は、興味を示しませんでした。よく見るように目の前に突き出しますと、瓜子姫は、頭からかぶってみせました。どうも、いつもの瓜子姫と違うとは思いましたが、かわいい瓜子姫がきれいな着物を着た、という目の前の現象に満足して、そこは追及しないことにしてしまいました。
翌日、ちょっとしたお見合い的なことがありまして、瓜子姫は、早速、新しい着物を着て、かごに乗って、出かけることになりました。かごに乗るときも、飛び乗ったりして、野性味が気になりましたが、お見合い的なことで気持ちが高ぶっているのだろうと思い、じいさまもばあさまも追及しませんでした。
木の上で、一羽のカラスが、瓜子姫を乗せるかごにあまのじゃくを乗せるかぁ、あまのじゃくを乗せるかぁ、と鳴くので、じいさまが石を投げると、カラスは木から飛び立って、木の根元に下り、くちばしと足で、地面を掘りました。何か白いものが出てきたので、不思議に思ったじいさまとばあさまが、皆に頼んで掘ってもらいますと、どうもそれが人の骨っぽいのです。じいさまとばあさまは、認めたくない事実を認めざるを得なくなり、かつて瓜子姫の瓜を切った包丁で、瓜子姫に化けたあまのじゃくを真っ二つに切ったのでした。
教訓:瓜子姫、は、瓜姫、ではいけないのだろうか。瓜子、でもいいが、販売役の女の子と思われてもいけないので、それは提唱しない。




