Scene3:衝突 ――「踏まれる前に」
乾いた草原に、足音が響く。
それは、世界の重みそのもののように――
ずしん、ずしん、と地を打っていた。
冒険者。
金属の鎧が陽光を弾き返し、
靴の裏が、砂を巻き上げる。
バーンは、息を呑んだ。
身体の奥の液が、沸騰するように震えた。
バーン:「――踏まれる前に、踏み返すッ!!」
思考より早く、身体が跳ねた。
太陽を反射して、一瞬だけ、空に赤い影が走る。
その瞬間――
光が、バーンの体を撃ち抜いた。
ジュッ。
という、あまりにも小さな音。
それが、世界に対する彼の全ての叫びだった。
透明な身体が、空気の中で崩れていく。
泡のように、儚く、静かに。
バーン:「……あ、つ……」
最後の声は、蒸気に溶けた。
焼けた香りが風に混じり、
空に消えていく。
冒険者が足を止めた。
わずかに眉をひそめ、首を傾げる。
冒険者:「……スライム? あ、もう乾いてる。」
彼は靴の先で、焦げたゼリーを軽く蹴った。
それは砂の上で小さく砕け、
陽の光に照らされて、きらりと光った。
冒険者は、何も感じずに歩き去る。
彼の世界には、「戦い」すら起きていなかった。
残ったのは、
焦げたゼリーの匂いと、
地面に染み込んだ、わずかな“光の泡”。
風が吹き、泡は震え、
その一滴が、やがて土に還る。
その瞬間、世界は何も変わらなかった。
けれど――
“熱”だけが、確かに存在した。




