第二幕:反乱未満 ――「理想とぐずぐず」Scene1:バーンの決意 ――「湯気たつ夢」
洞窟の外れ。
岩肌を伝う水の音が、かすかに震えていた。
その隅で、ひとりのスライムが、湯気を立てていた。
バーン。
体表は赤みを帯び、内部の液体が泡立っている。
周囲の湿度が彼を慰めることはもうできなかった。
バーン:「……このままじゃ、終われねぇ。」
声は低く、どこか焦げつくように熱い。
洞窟の冷気に混じって、蒸気が白く揺れた。
バーン:「踏まれて、溶かされて……それで“意味がある”なんて、冗談じゃない!」
彼は、自分の身体の一部をぎゅっと凝縮させる。
通常なら柔らかく揺れるはずのゲル状の表層が、
ミシ、と音を立てて硬化していく。
痛み。
それはスライムという種にとって“生まれて初めての刺激”だった。
バーン:「俺たちが柔らかいままで、何が変わる?
このぬるい世界に、俺が火をつけてやる……!」
彼の体の中心が、かすかに赤く発光した。
熱が内部から外へ――理想が現実を焦がしていく。
だが、湿度が足りない。
空気が乾いていく。
体表から蒸気が上がるたびに、命の水分が少しずつ奪われる。
バーン:「……ははっ、乾いてやがる。
でも、こんなの――
“冷たいまま”より、ずっといい。」
その笑いは、泡のはじける音とともに溶けた。
岩壁が微かに黒く染まる。
バーンの熱は、もう彼自身では制御できない。
バーン:「よし……行くぞ。
俺は、踏まれる前に、踏み返す。」
湯気をまとったまま、彼は洞窟の外へとにじり出た。
その背後で、岩に残ったわずかな焦げ跡が、
まるで“炎のように見えるスライム”の幻を描いていた。




