第五幕:ぬるい夜明け ――「革命にならない革命」 (最終幕:静かな到達点。スライムたちの“変わらない”進化)Scene1:光の縁 ――「夜明け前の膜」
夜は、まだ完全には明けきっていなかった。
洞窟の入り口――そこに、かすかな光が滲んでいる。
滴る水がゆっくりと光を帯び、壁の粘液を淡く照らしていた。
その縁に、ひとつのスライムがいた。
名はピュレ。若く、透明で、そして少しだけ震えている。
洞窟の奥から、微かな声が聞こえた。
昨夜まで続いた“スライム会議”の名残。
粘る議論と、ぬるい沈黙――
それらはまだ、この空間のどこかに漂っている。
けれど今、その声を気にする者はいない。
ピュレはただ、光の方を見つめていた。
その身体が、夜明けの水滴のように揺らめき、
ゆっくりと虹色の反射を繰り返す。
彼の核が、淡く脈動した。
それは心臓の鼓動にも似ているが、もっと静かで、もっと柔らかい。
――静寂。
――ぬるい湿気。
――そして、これから訪れる「何か」の気配。
ピュレはぽつりと呟いた。
「……外は、まだ乾いてるのかな。」
言葉はすぐに空気に溶け、
朝の匂いとともに、洞窟の外へと消えていく。
彼の背後では、誰も動かない。
誰も近づかない。
だが、確かに全員が――
その小さな光を、どこかで感じていた。
夜明け前の静寂。
それは「革命前夜」のようでいて、
実際には何も起こらないただの湿った時間だった。
だが、そんな時間こそが――
この世界の“変化の形”なのかもしれなかった。




