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Scene5:残るもの ――「ぬめる碑文」
会議が終わり、洞窟の中には静寂だけが残った。
スライムたちは散り散りに戻っていき、
ぬめりの跡だけが、床に微かな光を帯びている。
――しと、しと、と。
外では雨の音がしていた。
乾ききった大地を、少しずつ濡らしていく。
その音を聞きながら、
アメーバがゆっくりと壁に這い上がる。
小さな体が、静かに震えながら――
透明な粘液で、ひとつの文字を描き出した。
《変わらないという意志も、変化の一部である》
書き終えると、アメーバはその場で止まり、
まるで祈るように、体を小さく折りたたんだ。
光の粒が、湿った壁に反射する。
その揺らめきを見つめながら、
スラ・グレイが、ゆっくりと前に出た。
彼の体に、微かな光が映る。
長い沈黙ののち――
「……そうか。
じゃあ、我々はもう、少し変わってしまったのかもしれないな。」
その声は、洞窟の奥に吸い込まれていく。
ミュコもロジ=スラも、何も言わない。
ただ、ぬめりの中に光が漂い、
リム=ブルーとピュレの核が静かに脈打っていた。
外の雨音が、だんだんと強くなる。
乾きと湿りの境界で、
世界がほんの少しだけ――
柔らかくなった。
そして、壁に刻まれたその文字が、
まるで呼吸するように、ゆっくりと光を放った。




