チャプター3:
夜は、始まったときのような平和なまま終わらなかった。最初は穏やかだった夢が、やがて血に染まる悪夢へと変わり、コナーは夜通しうなされ続けた。
最初はそれほどひどくなかった。湖のそばに咲く夏の花畑で、コナーは妹のマエラを追いかけ、母は二人の遊びを見守っていた。母が気づかれないように微笑むあの笑顔がいつも好きだった。
だからマエラが水辺に向かって走り出したとき、青い髪の少年はあまり気にしなかった。妹が泳ぐのが好きなのはよく知っていたからだ。代わりにコナーは母のもとに戻り、その輝く瞳と名前を呼ぶ口元を楽しんだ—
「お前...のせいー」
そして、突然、世界は彼の前でひっくり返った。青く明るかった空は燃え盛る炎に赤く染まり、かつて緑だった草原は灰となった。母のシルエットは炎に包まれ、口を開けたまま沈黙の悲鳴をあげ、空洞の目がコナーの目をじっと見つめていた。
コナーは凍りつき、言葉にならない言葉、言い訳を口にしようとしたが、最後まで言えなかった。
「キャアアアアアアアア!!!」
『マエラ!!』
妹の恐怖に満ちた叫び声が彼を現実に引き戻し、振り返るとマエラは岸に向かって必死にもがいていた。泥だらけの無数の手が彼女を湖の奥深くへと引きずり込もうとしていた。コナーはためらわずに湖へ飛び込み、彼女の手を掴み、岸へと引っ張った。無力ではないマエラは残りの力を振り絞って手を蹴り払い、ようやく自由になった。
二人は息を切らし、安堵の息をついた。コナーは心配そうに妹をひっくり返した。
「マエ—」
しかし彼の言葉はそこで止まった。
いつもの赤い瞳の代わりに、見慣れた男の無表情な目が彼を見返した。歪んだ顔が不自然に伸び、男は両手でコナーの喉を掴んだ。
「お前のせいだ。」
…
コナーは飛び起き、恐怖で息を呑んだ。夢だ!すべては夢だった!でもあまりにリアルで—
彼の赤い瞳は涙で潤み、震える手が自分の首を確かめるように抱きしめた。すすり泣きが漏れ、次第に止まらなくなり、涙が頬を伝った。
「ママ…マエラ…」
彼は丸まった。
「会いたいよ…」
どれだけの時間泣いていたかはわからない。すると、小さな子犬の鳴き声が、半焼けのユルトの中に響き渡り、コナーは動きを止めて膝の上にいる小さな白い子犬を見下ろした。子犬のネーヴは慰めるように鳴き続けた。
しかしすすり泣きは笑い声に変わった。ネーヴは、悲しい声が消えたことに気づき、興奮しながらコナーの顔を舐めまわした。顔いっぱいに犬のキスを浴び、さらに笑い声を誘った。
「ははっ!ネーヴ!やめろよ!」彼は笑いながらも、口いっぱいのよだれを受けた。コナーの顔は嫌そうにしかめ面をし、急いで子犬を振り払った。
「うぇっ!」彼は慌てて口と顔を拭いた。ネーヴはただ舌を出して彼の騒ぎを見て、彼がもう悲しくないことを喜んでいた。
コナーがよだれを拭き終わると、子犬を見て少しむっとしながらも、耳の後ろを掻き、小さく笑った。
「ありがとう、ネーヴ。」彼はささやき、慰めてくれる存在に感謝した。
ネーヴは答えるように吠えた。その瞳には理解が宿っていた。彼はさらに少しの間ネーヴの白い毛をなで続けた。ようやく心が落ち着き、自分自身と和解した気がした。
コナーは深呼吸し、族長がよく子供たちに言っていた言葉を思い出した。
「誰にも引きずり降ろされるな。お前はサオルカスだ、野の神に愛されし子だ。」彼は呟き、決意が燃え上がった。もう時間を無駄にしたくなかった青い髪の少年は立ち上がり、前日に集めたものをまとめ始めた。
コナー・サオルカスは野の神に愛されし子として、森を守る義務があった。妹を、あの夜に盗賊に連れ去られた仲間たちを救うのだ。彼は――
一人ぼっちになりたくなかった……
コナーは涙をこすり落とし、もう泣かないと決めた。泣くのは弱さの証、男は弱くあってはならない。少年はノーランの家からもらった革の袋に荷物を詰め続けた。
ネーヴは寝床の上で見守りながら、コナーが旅支度をするのを知っていた。どこへ行くにも彼女は必ずそばにいる。それは子犬の確信だった。
準備が終わりかけると、ネーヴは世界で一番自信満々に彼に近づくが、足をもつれさせて木の床に顔から転んだ。
コナーは大笑いした。
「ああ!ネーヴ!ははは!」
子犬はすぐに立ち直り、むっとして泣き声をあげながら彼から背を向けた。まだ笑いながら、コナーはネーヴを抱き上げ、コートに慎重に入れた。ベルトをきちんと締めて子犬が落ちないようにした。好奇心旺盛なネーヴに、すぐに十三歳になる少年は理由を説明した。
「なくさないようにだ。」
「ワン!」
最後にもう一度吠え、ネーヴは胸に潜り込み、朝まで眠ることにした。青い髪の少年は袋を肩にかけ、一方の手でそれを支え、もう一方の手で母の短剣を帯に差し込んだ。狩猟用の槍を手に取り、子供の頃の家を一瞥もせずに出て行った。
妹を救うのだ。その日まで、振り返る権利はなかった。
…
山道は石がごろごろしていて雪で滑りやすかった。コナーは森を出たことはなかったが、山道は手のひらのように知っていた。荷車の跡は薄れていたがまだ追跡可能で、12歳の少年はそれを頼りに森の西側へと急いだ。ネーヴは胸に抱かれていた。
だがどんなに強く速くても、コナーは一日で森を抜けることはできなかった。まだ子供で、遥かに経験豊かな人間を追っていたのだ。夕暮れ時、少年と子犬は夜の休息を決めた。
少し探して、彼らはちょうど入れる木の穴を見つけた。
まずコナーは雪を掘り出し、暖かい黒土を露出させた。次に乾いた枝を集めた。野生で一晩を越すには火が必要だ。
枝を少し掘った穴の端に置き、持参した火打石で火をつけた。
荷物を穴の奥に置き、短剣と槍を横に置いた。ネーヴをコートから出し、余ったシャツの上に置いた。
子犬はまだ眠りを装わず、すぐに横になって火に腹を向けた。可愛らしい光景で、少年は思わず声をあげた。
「わあ、甘やかされてるなあ。」
しかし次の言葉は、森の中に響く唸り声に遮られた。雪を踏みしめる重い足音に全身が緊張した。
コナーは動いた。
彼は火に土をかけ、聞こえたのが熊でないことを祈った。もし熊だったら自分には太刀打ちできないと思った。
森には三つの場所があり、部族の者は避けるよう教えられていた。
まず北の狼の領域。決して溶けない氷河が境界を守っており、人間を歓迎しない。
次に東の沼地。蓮の頭を持つ毒蛇など危険な生物が棲む。
最後は熊。最も強く経験豊かな者だけが熊に挑む。
震える息を整え、コナーはネーヴを穴の奥に押し込み、短剣の柄に手を伸ばした。
木々の影から、山の熊の黄金色の目が彼の目を射抜いた。
彼はごくりと唾を飲み、頭に浮かんだ言葉を呟いた。
「くそ…」