表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/57

18閑話 ゼタ様の推理

天界に残されたゼタ様視点の閑話です。一章ごとにちょっとだけ挟まります。

 おかしい。やっぱりおかしい。

 

 ゼタはため息を吐いて書類から目を離し、天井を見上げた。

 仕事をしようにも、昨日の処刑のことが頭をちらついて仕方がない。

 がんばって集中しようとするのは一度諦めて、目の前から書類を消す。


 休憩がてら、考えを整理しよう。

 あまりに多すぎる、残された違和感について。

 

 確かに彼は解雇規定に抵触するほどの頻度で文明破壊を繰り返した。

 しかし救済課全体の世界崩壊の頻度はほとんど変わっていなかった。

 処刑のときに問い詰めたときの彼の反応からして、何かしら思い当たることはあるようだった。

 普通に考えれば、彼の事を快く思わない同僚のいじめの構図が浮かぶのだが……反応からするに、どうも違いそうだ。


 違和感はまだある。

 十度にわたる文明破壊は、その全てが狙ったかのように基準値を少しだけ上回る事例が多い。

 そして死者の大半は、あえて彼の言葉を借りるならば『悪』ばかり。


 どうしても、そこに意図を感じざるを得ない。

 なら、それらの過失が全て意図されていたものだとしたら?


 いや、そんなはずがない。

 そんなことをしたら、解雇されて下界に堕とされ、数分で信仰が尽きて死んでしまう。

 

 ……いや、もし。

 もし、あらかじめ何かしらの細工を施して、下界に落ちても死なないようにしておいたとしたら?

 そうすれば、下界で生きることが可能になる……?

 

 ……流石にありえないか。

 単純に手間がかかりすぎる。やったとして、下界で何ができるというのか。

 そもそも彼は異常なまでの合理主義だ。

 十個の世界を滅亡させてまで、その世界で何かをしたいと考える……その理由が思いつかない。

 

 いや、むしろ逆なのか?

 合理主義の塊である彼にとっては、十の世界は十億の世界を救うためなら犠牲になってもよいと考えるのかもしれない。

 となると、彼の目的は……より大きなもの?

 それこそ、この天界を揺るがす災厄のような……


 ――災厄。

 千年ほど前、いわゆる魔物やそれを束ねる魔族という存在が同時多発的に複数の世界に出現するようになり、世界崩壊が急激に増加した。

 六百年ほど前に、激減した信仰が臨界点に達し、下級の神から口減らしとして処刑されることが増えた。


 人為的な犯行であることが疑われ、その裏にいる犯人を求めて、数百年にわたって保安課がその正体を追っていたが未だつかめず……

 そう言えば、彼の前職は保安課だったか?

 八百年ほど前、昇進したてのわたしの元に初めての部下として入ってきたとき、彼は保安課から左遷された、というようなことを言っていたような。


 ……左遷された、か。

 考えれば考えるほど、繋がりが見えてくる。

 なら彼は、この災厄の原因が、下界にあると考えたのか?

 だから解雇規定にあえて抵触し、そしてわざと処刑されることで……


 確かに、神の世界で罪を犯すものは、隠れ家として無数にある下の世界に身を隠す傾向にあるのは事実だ。


 でも……本当にそうなら、何故そのことを保安部に知らせない?

 というかまず、わたしに一言いうべきじゃないの?

 そうすれば、頼れる上司として協力をしてあげられたはずなのに。


 ……もう。わたしは七百年かけて、彼と親しくなったつもりだったのに。

 そう思っていたのはわたしだけだったの?


 なんだか胸のあたりがもやもやする。

 彼が処刑されたときは、本当に悲しかったのに。

 あれが、ただの演技だったのだとしたら――――


 少し調べてみよう。このままじゃいられない。

 あの子は人を頼らなすぎる。何でもかんでも一人でやろうとして。


 もし再び彼に出会えたのなら、説教をしてやらなくちゃ。

 そう。大切な部下に、頼れる上司として。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ