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17 最後に残る真犯人

 この国にいる人は、みんな悪?


 この処刑台の周りを囲む民衆の、一人一人が全員?

 せっせと荷車を運ぶ人も、修道女も、井戸の前にいたおばさまも……

 グラシア様も、ニーアさんも、そして――目の前の、この二人も?

 

 だとすると。

 悪を減らすことが正しい事なら、白衣の死が行った殺戮行為は……?

 そんなの、俺がずっと天界でやっていたことと何ら区別がつかないんじゃないのか?


 むしろ、疫病を抑えて悪を減らすことを妨げた、老人と俺の方こそ悪で……


 しかも俺は、悪人たちから信仰を得ることで生きながらえていることになる。

 つまり俺が生き延びるためには、これからも彼ら悪を救わないといけない……?


「それでへんたいは、ここになにしに来たの?」


 と、悩む俺を覗き込んでくるシャノンさん。

 ぐるぐると周る考えを一度よそへやって、俺は答える。


「できればその呼び方は辞めて欲しいんですが……そうですね。病人がいたもので、それを見てもらいたかったんですよ」


 そう言ってから気づいたが、ここまで情勢が変わってればそもそも病気になってないかもしれないな。


「ほう、それで病状は?」

「患者は獣人の若い女性の方です。今日の昼過ぎに急に倒れて、一旦嘔吐して……そこから呼吸がずっと浅い状態でした。体が脱力してしまって、ずっと眠り込んでいます」


 口を挟んできた老人に、俺は随分昔の事のようにニーアさんの病状を思い出す。


「急に倒れた……か。発熱はどうだ?」

「えっと……発熱と咳は見られませんでしたが……最初、頭痛がするように頭を押さえてましたね」

「ふむ。流行りの疫病では無いな。神経がやられているのはわかる。病状だけだと脱水や貧血などに似ているが……」


 ……やっぱり、的確だな。本気を出せばこのくらいはぱっと出て来るんだろう。

 あのとき井戸に小便をしていたボケ老人と同一人物とはとても思えない。


「あ、でも、ニーアさんは直前にお茶を飲んでいました。なので、脱水ってことは無いと思いますが」

「直前にお茶を飲んでいた、か。……というかニーアと言ったか? 確かゲティアの財政はそういう名の女が担当していたような覚えがあるが」


 訝しむ老人に少しためらうも、正直に言ってしまうことにした。


「そう……です。そのニーアさんです。重役なので、このままじゃ行政に混乱が起きるかもしれなくて――」


「そうか。なら、毒殺だろうな。十中八九」


 ……は?

 老人の言葉に、俺は固まる。


「な、何を……! ど、毒って……誰かがニーアさんを、殺そうとしてたってことですか⁉」

「特段不思議なことではなかろう。『白衣の死』が居るように、政界で暗殺など日常茶飯事だからな。神経系の毒だとすると……どこにでも手に入る鎮痛剤、それこそ麻薬をお茶で飲めば同様の症状になる。まともに飲んだのだとしたら、今頃既に死んでいるだろうな」

「なっ……⁉」


 既に……死んでいる⁉

 けど、あの状態で毒殺なんて……あり得るか?


 あの部屋には俺とグラシア様と、ニーアさんしかいなかった。

 しかも、俺もグラシア様も同じお茶を口にしているはず……

 

「お茶を飲んだとき、独特の渋みを感じる事は無かったか? 教育された王族などであれば、一度口に含んで味を確かめるようなことはよくある話だが」


 言われてみればそんな気もして来るが……

 分からない。下界のお茶というのはそういうものだと思って飲んでいた。


 よく考えれば……毒というのは大抵、生命維持に使われる化学物質の働きを阻害したり、逆に過剰に反応させたりすることで害を及ぼすものだ。

 となると、そもそも生物的な構造を持たない俺は毒が効かなかった可能性が高い。


 三人のうち、ニーアさんは倒れ、俺には毒が効かなかった。

 となると、残るは一人だけ……?

 

 と、そこまで思考が至ったところで。

 がくんと体が揺れて、膝をついてしまった。

 

「……だいじょうぶ?」


 心配そうに手を握るシャノンさんの、その顔がかすれて見える。

 生命維持に必要なエネルギーが、底を尽きかけている。


 クソッ……! まだまだやるべきことがあるのに!


 ようやくこの地で、信頼に足る人材を見つけたところなのに!


 毒殺の真相もその犯人もまだ、何もかも分かっていないのに……!


 喜ぶべきは、世情はこの俺を本物のゼヘタ神だと強く認識するようになったこと。

 なら、礼拝かなにかで人々の信仰によって力が戻れば、また目を覚ます可能性はある。


 逆に言えば、その前に存在ごと消えてしまう可能性もある。

 そうなればすべてが終わりだ。


 既に、瞼は上がらない。呼吸すらままならなくなってきた。


 けど俺は、使命を持ってこの世界に来たんだ。

 だから何があろうと、何をする事になろうと、足を止めちゃ駄目なんだ。


「…………! ………………! ……!」


 意識が薄れ、耳までが聞こえなくなって――


 このまま死んでは、全てが終わってしまう。

 だからせめて天に向かって祈らせて欲しい。

 神が神頼みなんて、情けないのは分かっているけれど――


 どうか。

 どうか、どうか、苦難の旅路をお助け下さい、ゼタ様……!

第一章を最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!


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