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【30話】国王からお礼とお願い


 レドリオ王国からファイロルに戻ってきて、二週間が経った頃。

 ユウリの元へ、召集令状が届いた。

 

 今度の差出人はシャルロットではない。

 ディアボル王国の国王からだった。

 

 娘であるシャルロットを救ってくれた礼を、どうしても直接言いたいのだそうだ。

 

 別にお礼なんていらないのだが、国王からの召集を無視する訳にはなかない。

 無視をすれば例によって、厳しい処罰が下されてしまう。

 

 そんな訳で、ユウリ、リエラ、フィアの三人は、王都へ向かうのだった。

 

******


 馬車を走らせて二日後。

 ユウリ一行は、王都にある王宮へ着いた。

 

「ここが王宮か……でかいな」

 

 金色の宮殿が、どどんとそびえ立っている。

 シャルロットが暮らしている離宮も大きかったが、それよりもずっと大きくて立派だ。

 

 馬車を降りると、執事服を着た男性が出迎えに来てくれた。

 

「謁見の間にて、国王様、シャルロット様がお待ちです」



 執事服を着た男性の案内で、ユウリたち三人は謁見の間に通された。

 

 大きなシャンデリアが吊るされた謁見の間は、とてつもなくも大きくて広い部屋だった。

 部屋の中央では、二人の人間が横並びになってイスに座っている。

 

 一人は、第五王女のシャルロット。

 笑顔が似合う、ユウリたちの大切な友達だ。

 

 ユウリたちの姿を見たシャルロットは、嬉しそうに口元をほころばせた。

 

 そんなシャルロットの隣には、白髪交じりのオッサンが座っていた。

 たっぷりの威厳を感じる。このオッサンが国王だろう。

 

 国王とシャルロットの前まで進んだユウリたち三人は、深く頭を下げた。

 

「よく来てくれたなユウリ、リエラ、フィア。大事な娘であるシャルロットの命を救ってくれたこと、深く感謝する」


 国王が深く頭を下げると、横で控えていた臣下が「何をなさるのですか!」と慌てた声を上げた。

 

「あなた様は、この国の王にあられるお方ですぞ! たかだか冒険者風情に軽々しく頭を下げないでください!」

「貴様、今なんと申した……!」


 眉をひそめる国王。

 鋭い瞳で、臣下を睨みつける。

 

「彼女たちはシャルロットを救ってくれた恩人だぞ! 娘を救ってくれた恩人に対して敬意を表すのは、父親として当然のことだ。貴様にとやかく言われる筋合いはない!」


 言っていることからして、国王はかなりまともそうな人物だった。

 モルデーロ王国の国王とは、えらい違いだ。

 

 ふぅ、と息を吐いた国王が、ユウリを見る。

 

「ユウリ。ぜひともお主に礼をさせてくれ。何か望みはあるか?」

「いや、俺は別に――あ、待て。一つあった」


 シャルロットをチラッと見てから、国王に視線を戻す。

 

「もっとシャル――シャルロットに会う機会をもっと増やしてほしい。シャルロットにとっては、あんただけが唯一の肉親だからな。仕事が忙しいのかもしれないが、なんとか時間を作ってくれ」

「……それがお主の望みか?」


 目を大きく見開いた国王が、パチパチとまばたきした。


「友達の喜ぶ顔を見たい、それが俺の望みだ」

「そうか。……シャルロット、良き友を持てたな」

「はい……!」


 微笑む国王に、震え声で返事をしたシャルロット。

 今にも泣きそうになっているのを、必死で我慢しているようだった。

 

「ユウリ、リエラ、フィア。お主たちも、シャルロットと友達になってくれてありがとうな」

「俺たちは、シャルが気に入ったから友達になっただけだ。別に礼なんていらない」

「その通りです」

「二人に同じじゃ!」

「そうか」


 優しい顔で国王が頷いた。

 

 まさか、友達になってくれてありがとう、なんて言われるとは思わなかった。

 ディアボル王国国王は、とても娘思いのオッサンのようだ。

 

 

 ほんわかした空気が流れて少し経った頃。

 国王が口を開いた。

 

「ときに、ユウリ。お主がレドリオ王国で討った殺し屋だが、正体を知っているか?」

「あのスキンヘッドのことか? 確か名前はジェイクって言ってたな。けど、知っているのはそれだけだ。もしかして、結構有名なヤツだったのか?」

「ああ。ジェイクは元Sランク冒険者。SSランク冒険者一歩手前まで上り詰めるほどの実力を持っていた男だ」

「そんなにすごいヤツだったのか」


 SSランク冒険者は冒険者の最高峰。

 限られた一握りの冒険者しか、そこへはたどり着けないという。


 火属性の最上級魔法である【ドラゴンブレス】を放ってきたりと、ただ者ではないと薄々感じていた。

 でもまさか、そこまでの実力者だと思わなかった。

 

「レドリオ王国から聞いたが、ジェイクを討ったお主は無傷だったそうだな」

「苦戦するような相手じゃなかったしな」

「あのジェイクを無傷で討ったお主の実力はすさまじい。冒険者の最高ランクであるSSランク冒険者――いや、それよりも上だろう。お主こそがこの国の最高戦力だと、私はそう思っている」

「いくらなんでもそれは言いすぎだろ」


 たはは、と笑ってみるが、国王は真剣な顔をしていた。

 冗談で言っている訳ではないらしい。


「……そんな大いなる力を持つお主にしかできない頼みがある」


 国王がまっすぐに見つめてくる。

 

「ユウリ、この国を救ってほしい」

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