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ユイ・メモワール  作者: 碧川亜理沙
2年生編
29/52

グループ活動①


 ルームメイトとの関係性に早く目途が立ったおかげで、ようやく授業へと集中ができるようになった。


 2学年の授業になると、1年と同じく座学中心ではあるが、少しずつその内容は深いものへとなってくる。

 そして選択する授業によっては、実技を伴う授業も出始めてきた。




 1学年から継続して行われる総合科目の授業も、2学年に上がり内容がさらに進化する。


「よーし、全員いるな。今日いない奴は2年のこの授業の単位はもらえないと思えよ」


 担当教員のガジャの言葉に、先ほどまでおしゃべりしていた人たちも口をつぐんだ。

 さすがに1年ほど過ごしていると、先生たちの傾向もわかってくる。

 この先生は、冗談とも思えることをさらっと本気でやってくるのだから、学生たちは皆気を抜けない。


 今日も広場へと集められた学生たち。

 いつもと変わらない光景だが、今日はガジャのほかにもうひとり先生が立っていた。


「今日から2年の総合科目の内容に入っていくぞ。それに伴って、担当教員が増える」

「初めまして。ガジャ先生と一緒に総合科目を受け持つことになりました、ニール・クリゾンです。よろしくお願いします」


 ガジャとは打って変わって、細身で色白な、まだ年若い男性が挨拶をした。

 一見優しそうな見た目のニールに、学生たちの表情は少し和らぐ。


 彼の簡単な挨拶が終わると、ガジャは早速授業の説明へと入っていった。


「ガイダンスと言っても、2年もやること自体は1年の授業とさほど変わらない。だが、内容は相応しいものを選んでいるから期待しておけよ」


 そう言って意地悪そうに口角を上げるガジャの笑顔に、ユイの隣に座る学生が息をのむ。


「ま、今日も広場を走ってもらおうかと思ったが、さすがにそれじゃあ味気ないと思ってな。早速だが、お前たちにはこれからグループに分かれて、この裏山を登ってもらうことにする」


 そういうや否や、ニールは少し離れた場所に置いてあった複数の箱を魔法で引き寄せる。


「今から適当に名前を呼ぶ。そいつら同士でグループになってもらう。あ、ちなみにこのグループは下手したら2年の間この授業で組んでもらうことになるからな。呼ばれたらニール先生のとこに行け」


 さらりと大事そうなことを言いながら、ガジャはどんどん学生たちの名前を呼んでいく。


「次、9チーム。ユイ・フェールディング──」


 ユイの名前が呼ばれ、ニールのほうへと向かう。ユイの後にも何人かの名前が呼ばていた。


「はい、君たち9チームは4人だね。これ持って、そっちのほうで待っててね」


 ニールのもとに集まったのはユイ含めて4人の男女。1年も一緒に同じ授業を受けているので、顔は見たことがあるけれど、名前まではさすがに覚えていない。

 ニールからそれぞれ小さなポシェットを手渡され、すでにグループ分けされた人たちが集まるほうへと向かう。


 「──以上、この16チームだ。同じグループのやつらを覚えておけよ。授業の終わりに、グループ表を提出してもらう」


 どういう基準で分けられたのか不明だが、4、5人のグループが計16チームできた。

 それぞれひとり1つ、小さなポシェットを手渡されている。

 ガジャは全員を見渡した後、授業内容の説明を始めた。


「これからお前たちには、この裏山の頂上まで登ってもらう。まぁ内容的に、今後行うフィールドワークの前哨戦ってとこか。だが安心しろ。今日はお前たちに無理な課題は求めない。グループごとに裏山の頂上に登り、頂上で待つ先生からグループ表をもらい、下山するだけだ」


 話を聞くだけだといたって簡単そうに思える授業内容だ。

 だがこの先生の場合、これだけで済むはずがないというのを、ここにいる全員が理解していた。


「スタート地点は全グループバラバラだ。授業が終わるまでに帰ってこい。あとそのポシェットには、裏山の地図とゴール地点が記されている。あとは最低限の必要なものだな。今のところは魔獣もいないようだから、時間内に帰ってくることも難しくはないだろう」

「あの、ガジャ先生。もし万が一、魔獣に出くわしたらどうしたらよいでしょうか」


 男子学生が手を挙げ尋ねる。


「どうしたらいいかって? 死にたくなきゃお前ら自身で何とかしろ」


 全く予想通りの回答が返ってきた。

 予想していたとはいえ、その答えに一瞬周囲がざわめく。


 ──対処するにしても、課外行動とか自主練をしていない限り、まだ授業で魔獣の対応方法を習っていないのに。


 グループにひとりでも、魔獣の対処方法を知っている人がいればいいだろう。

 もしそうでない場合は、魔獣の種類にもよるだろうが、グループ全員の命の保証はない。

 さすがに2年の最初の授業からそのような事態になる確率は低いだろうが、この先生の授業の場合、安全かと言われれば素直にうなずけない。


「まぁ、一応どぉーしても対処できねぇって場合は、救援信号を投げろ。そのポシェットの中に入っているはずだ」


 言われてユイは手渡されたポシェットの中をあさる。

 どうやらこのポシェットの中は拡張魔法が使われているようで、両手サイズの大きさだが、中はほどほどに大きそうだ。

 その中に、ガジャの言う通り救援信号用の花火が2種類入っていた。

 一応助かる方法も入っていることが分かってホッとする。


「ほかに質問はねぇな? じゃあ、各々スタート地点に移動しろ。あたしが合図するまで、勝手に山に入るんじゃないぞ」


 そういわれ、学生たちはグループごとにぞろぞろと移動していった。






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