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ユイ・メモワール  作者: 碧川亜理沙
1年生編
21/24

魔石に憑かれる⑨



「ユイちゃん、大丈夫?」


 処置が終わったのだろうか。フレインたちがユイの様子を見て近寄ってきた。


「はい、大丈夫です」

「そういう割に、顔色が悪いぞ」

「直によくなると思うので。それより、あっちの方の処置は終わったのですか?」

「魔石は取り除けたわ。ユイちゃんのおかげよ。ありがとう」


 フレインたちの背後、少し離れたところに横たわる男子学生の姿が見えた。氷の魔法はすでに溶かされており、おそらくあの濃度の高い睡眠薬で深い眠りについたままなのであろう。


「みんな、疲労困憊かとは思うけど、完全に暗くなる前に山を下りましょう。それに救援信号を送っても助けが1人しか来ていないってことは、状況的にもあまりよくない気がするし」


 フレインの言う通り、今までは気が付かなったが辺りはずいぶんと薄暗くなってきていた。かろうじて太陽の光は届いているが、この時期だとさして時間もたたないうちにすぐに暗くなるだろう。

 それにすっかり忘れていたが、ユイたちは救援信号を放っていた。それなのにレイを除き、全く救援が来ないというのもおかしな話だ。


 ユイたちはそれぞれ山を下りる準備をする。

 眠っている男子学生たちも連れて降りる必要がある。ユイやレイは力がなさすぎるので、フレインとイサクが男子学生を背負って降りることになった。


「魔石は僕のほうで預かります。魔石の保管に関してなら、常に携わっていますので」

「あ、私荷物持ちます。フレイン先輩とイサク先輩の荷物、これでいいですか?」


 3人分の荷物を持ちながら、フレインを先頭になるべく急ぎながら山を下っていく。

 だが人を背負いながら山を下るのはとても大変そうだ。なるべくなだらかな道を進んでいるようだけれど、フレインもイサクも何度かバランスを崩しそうになっていた。ユイとレイはそんな2人を支えながら歩いていく。




 太陽が完全に沈み、あたりが真っ暗になってきた頃。

 ようやくユイたち一行は、学校へと繋がるドアを通ることができた。


 ドアを開けると、そこには数人の学生たちが集まっていた。

 そしてユイたちの姿を見つけるや否や、みんな慌ただしく動き出す。


「よかった。無事だったのね。会長、さっき戻ったメンバー含めて、これで全員確認が取れました!」

「うわぁ、すっげぇケガ。ちょっ、誰か校医呼んできて! それか医務室まで運ぶの手伝って!」

「誰か先生にもひとこと言ってきてよ。あとは学生会が動くからって」


 矢継ぎ早に声が飛び交う様子に、ユイは思わずぽかんとしてしまう。


「フレイン、イサク。大変だったな。背負ってる2人は重症か? 急いで医務室に運んだほうがいいだろう」


 フレインたちの元に、ひとりの大柄な男子学生が近づく。

 ユイよりはるかに背が高く、横にも大きい。近くに立たれると、まるで壁のように感じる。


「グスタフ会長。彼ら、魔石に憑かれていたの。今はもう取り除いたけど、全身ひどい怪我なので、優先的に校医に見てもらえるよう取り計らってください」


 フレインたちの知り合いなのだろうか、背負っていた男子学生たちの状況を事細かに説明して後を任せている。

 話を聞いて、会長と呼ばれた大柄の男子学生は眉間にしわを寄せたまま、他の学生たちに怪我人を運ぶよう指示を出した。


「魔石に憑かれたとは……実は彼ら以外にもひとり、魔石に憑かれた者がいた。彼はすでに処置は済んでいる。幸い軽傷のようだが……あの2人はかなりひどいな」

「それに長い時間憑かれていたから、怪我は治っても、精神面や魔素回路が傷ついていたら完治できるか怪しいですね」

「うむ……そこはもう校医に任せるしかないだろう」


 眠っている男子学生たちを医務室に運ぶ様子を傍らに、大柄の男子学生は改めてユイたち4人と向き直る。


「今回の件、まず謝らせてくれ。救援信号が出てからの初動の行動が遅れてしまい、君たちの援護に回ることができなかった。学生会として不徳の致すところ。申し訳なかった」

「いえ、そんな……あれ、彼は学生会から差し向けられた救援じゃあなかったの?」


 フレインはユイの隣にいるレイに視線を向ける。


「僕はもともと偶然通りかかったようなもので……。あ、これあの学生たちに憑いていた魔石です。専門の方に鑑石をお願いします。おそらくどちらも魔獣の魔石……同一の魔獣ではないと思います。多分ですけど、どちらもレベルCに相当するのではないかと推察します」

「その制服……王立図書館の管理課の方ですね。此度はご助力ありがとうございました。こちらの魔石は責任をもって鑑石に回させていただきます」


 レイに対し、大柄の男子学生は丁寧に頭を下げる。


「ということは、学生会は俺らの救援信号を見てなかったってことか」

「救援信号がいくつか上がっていることは認識していた。だが……いや、推測で話すのは得策ではないな」


 大柄の男子学生は頭を振ると、


「今回の件、どうも怪しい点や腑に落ちない点がたくさんある。帰って来て早々申し訳ないが、今から少し話を聞きたい」


 

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