説得する記憶
話し合いをしている場面です。
「えーと、ル、レン様」
マライアと言う女騎士はわたしを賢者様だと言い、わたしに攻め寄って来た。賢者でもないのに賢者と言ってくる猛攻に耐えられずに孤児院まで上られてしまった。
「まず、助けて頂きありがとうございます」
「いえ、ルイス様なら一人でもビッグボアくらい討伐できたでしょうに、こちらこそ獲物をとってしまい申し訳ありません」
「だからわたしは賢者じゃないですから」
「そんな筈ありません。私の目で見て確信しました。間違いなくルイス様です。きっと何かの拍子に記憶がなくなってしまっただけです」
こんな感じで彼女は一歩も食い下がらない。
「ルイス様、早速アマント帝国まで帰りましょう」
「だからわたしはルイスでも賢者でもなく、レンですから。まずわたしは賢者様のように魔法が使えるわけでは無いですから」
「えっ!」
やっと猛攻が止まってくれた。
「魔法が使え無いんですか」
彼女は少し考え込んでから口を開いた。
「今日のところは一旦引きます。ですが、あなたの行動を数日確かめ、見極めさせてもらいます」
どうやら一旦落ち着いてくれたようだ。でも落ち着いていない人がもう一人いた。
「さっきから聞いてれば、あんたは一体レンの何なのよ!」
メルが突っかかってきていた。
「いいでしょう。わたしはアマント帝国、賢者様の唯一にしてたった一人の護衛騎士、マライアです。以後を見知りおきを」
「賢者様の護衛ならレンは関係ないでしょ」
「いや、ル、レン様は間違いなく賢者様その人です。今はまだ思い出してないだけでその内思い出すでしょう」
「ではアルトに聞いてみるのはどうかしら」
シスターが提案する。アル兄に聞く手があったか。
「アルトが渓谷で拾ったって言ってたし、その話を聞けばその・・・マライアさんも納得してくれるのではないのでしょうか」
「ふむ、シスター殿の意見を通そう。で、肝心のアルト殿はどこにいるのか」
「アル兄は先日王都に旅立ったけど、王都も近いし遅くてもあと数ヶ月で戻ってくると思うよ」
「そうか・・・では少しの間ここで待つとしよう」
こうしてマライアさんがオワリに滞在することになったのだ。