再会の記憶
アル兄が王都に向かった少しあとの話です。
それはアル兄がオワリから旅だった数日後の出来事だった。
わたしは修行で魔力が成長することはもう無いと考え、修行以外で魔力を上げる方法を考えた。まず初めに思いついたのはアイテムによる魔力量向上だ。だがアル兄から聞いた話によるとそう言うアイテムはすごく貴重で高いらしい。てことで却下。で次が魔力量が装備してる間上がる装備。だが、これも問題があってレベル1だと着けても効果を得られないと言うことだ。こう言う装備って効果を発揮する為に軒並み条件が設定されているんだよな。賢者が女神から貰ったと言われる伝説の勇者の剣とかは有名だな。あれ?てかなんで賢者なのに勇者の剣持ってんだろう。
「やっぱ、レベル上げるしか無いか」
レベルが上がれば能力値の全体的に上がる。とりあえず魔力が5あれば全身に魔力がまとえる筈だ。1レベ上がると2から4くらいずつステータスが上がるしステータスオール1からも卒業出来るだろう。目標は3レベルまで上げること。
このくらいのレベルならスライムを5体ぐらい倒せばいけるだろう。
と言うことで森にやってきました。でもひとつ厄介なことが起こってしまった。
「ちょっと、何してるのレン!」
後ろからついて来ていたメルに気づかずのこのこと一緒に森までついて来てしまった。
「秘密の訓練だからメルはダメ」
「ダメじゃないでしょ。レンの貧弱ステータスじゃスライムの突撃でワンパンよ」
そう一番の問題は倒し方である。わたしのステータスがオール1なせいでスライムにすらワンパンされる紙装甲なのだ。まあスライムもHPは1だしわたしと変わらないけど。逆に言えば、わたしはスライムでしかレベル上げが出来ないのである。てかスライムじゃないと死ぬ。
「まあ、策は考えてきたから」
そう言って自分の胴体の幅くらいある何かを持ってきた。
「これは?」
「これはね。罠だよスライムの。アル兄が昔持ってきたのを真似て作ってみたんだ」
「すごい本当に中にスライムが入ってる」
「これをこうしてっと」
わたしはスライムにナイフを当てて倒す。
「これならダメージも食らわないし安全でしょ」
「これすごいよ、レン」
「他にも罠を仕掛けたから見に行こう」
「うん、行きたい!」
「とうとうレベル3になったか」
「今日だけでレベル3になっちゃうなんてね」
そう言っているメルだが、実はレベル8である。レベル1のときオール1のわたしと違ってオール1では無かったメルはスライムも罠無しで倒せるし、ゴブリンも少数なら倒せる。と言うか変に一人でやるよりもメルに協力して貰った方が早くレベルが上がった気がする。
『身体強化』
アル兄の修行のお陰で魔力を体内で循環させる循環系魔法の『身体強化』をすぐ覚えることができた。
「ずっと『身体強化』してて魔力無くならないの?」
「『身体強化』は身体に循環させるだけで放出系魔法のように魔力を外に放出しないからね。多少の漏れみたいなものもあるけど軽い強化なら操作も簡単だし漏れも少ないよ」
「身体強化ってすごいジャンプできるイメージがあるけど実際はそんなことないんだね」
「確かにそんな超人パワーは身体強化が得意な人しか出せないね」
じゃあ帰るか。とオワリに向かっている矢先巨大な音がした。
「なんだ?!」
音が段々とこちらに向かってきている。
「なんかやばい。メル逃げるぞ!」
わたしはメルの手を引いてオワリの方へ全速力で走った。
(段々距離が縮まってる)
そのときメルが木の根っこに引っかかり転んでしまった。追ってきているモンスターは確認できる距離まで来てしまった。
「なぜビッグボアがここに」
ビッグボアはもっと奥に出てくるモンスターの筈だ。通りで追いつかれるわけだ。わたしはメルを庇うようにビッグボアに立ち塞がる。
(頼む、止まってくれ)
だがビッグボアは止まる気配がない。
(もうダメだ)
死を覚悟して目を閉じる。だが一向に衝撃が来ない。
目を開けるとそこにはビッグボアの死体とプラチナの鎧を着た女騎士が立っていた。
「そこの君、大丈夫・・・ か」
わたしの前に立っている女騎士はわたしを見て固まった。
「生きていたのですね。賢者様、いえ、ルイス様!」
「へ?」
「え?」
なんだか面倒なことが起こったようだ。
???「もう一人にはさせませんよ」