sideアマント帝国の記憶
アマント帝国(元々賢者のいた国)視点です。
「賢者が死んだだと?!」
王はまだ信じられずにいた。レンが崖から落ちた後アマント帝国はとある危機に瀕していた。都市セカルに魔王軍が攻めて来たのだ。今頃は魔王城にいて魔王とも決着がつく頃だと思ったが、セカルに魔王軍が侵攻してくるとは。
「賢者の負けは濃厚かと」
宰相が言う。セカルはあっさり魔王軍に占領されてしまった。私たちは賢者に頼り過ぎていたと言うのか。賢者がいない今それは顕著に出ていた。私は魔王の戦力を見間違えたのか。
「難民の受け入れとセカル周辺の防御を固めて警戒体制をひけ! 冒険者や傭兵も使っていい。これ以上の被害を最小限に抑えるのだ。ラストーノ王国に難民のための食糧支援の助力を取り付けることを交渉しろ」
「父上、食糧支援の件は私に任していただけませんか」
第二王子が志願する。
「いいだろう。お前に食糧支援は任せよう」
「皇帝陛下、賢者が帰って来ないことで国民が薄々賢者が亡くなったことを勘づき始めています。早急に対処しないと国民全体の士気が下がると予想されます」
「・・・そうか。なら捜索を強化し、賢者の影武者も作ろう。顔さえ似ていれば、喋らなければ、魔王軍の侵攻を退けるまではジリ貧だが耐えられるだろう。そして私も直接前線に赴こう」
「・・・っ?! いけません。陛下の身に何かあろうものなら・・・」
「お前は私に指図するのかね」
「・・・っ!? いえ・・・」
宰相には悪いがこれで通させてもらおう。
「影武者の捜索は・・・マライア、お前は確か賢者の護衛騎士だった筈だ。賢者の顔もさぞ鮮明に覚えていよう。その目をもってして賢者の代理を探すのだ」
「かしこまりました」
こうして賢者の代理の捜索が始まった。