子供の記憶
助けられた後からの話です。
助けられたあとわたしはある場所に連れてかれた。そこには子供が沢山いてわたしの衣食住を保証してくれた。
(ここは孤児院か)
子供っぽい体型だから子供だと思ったのかな?
推定12歳くらいの女の子がわたしに向かって話しかけているがやはり何を言っているのかわからない。
シスターがわたしのとなりの女の子に向かってメルと呼んでいる。やっぱりこの少女はメルと言うのか。彼女と同世代の人が今まで居なかったせいかこうしてわたしに根気強く話しかけてくる。聞き取れないけど。だがたくさん話してくれることで挨拶や名前までは理解した。
ちなみにシスターはわたしに向かってレンと呼ぶので多分わたしの名前はレンなのだろう。・・・早く言葉を理解しないとな。
月日が経ち、わたしは言葉が上達して来た。
「おはよう、レン」
「おはよう、誕生日おめでとう。メル」
今日はメルの十三歳の誕生日だ。孤児院の誰かの誕生日には嬉しいことがある。それはご飯で肉が出ることだ。エルフは別に野菜だけでも生きられるが、肉は美味しいので食べたい。
「アル兄が帰りにビッグボアの肉買って来てくれるって」
「やったー。今度また冒険譚聞かせてもらおう」
アル兄とは、孤児院の出であるにもかかわらずAランクにまであがったすごい冒険者だ。孤児院はアル兄に何かとお世話になっている。また孤児院の子供が誕生日のときには、毎回Cランクのビッグボアの個体の中でもちょっと質が良いやつを買って来てくれるのでそれが孤児院内の恒例行事になっている。ちなみにわたしを渓谷の底で助けた冒険者パーティーの一人でもある。
「また稽古つけてもらおう」
「レンのステータス全部一なのに冒険者になる気なの」
「ステータスが無いなら技術を補うまで」
「すごい冒険者になれると良いね」
「メルってなんかなりたい職業はあるの?」
「あたしは薬剤師になりたいかな。レンが冒険者になってどんな怪我しても治るポーションを作りたい」
レンはメルの純粋な言葉にどきっとした。
「おう、レンはいつ見ても変わらないな」
「おはよう。アル兄」
メルのほっぺを膨らませる。
「今日の主役はあたしなんだけど!」
「ああ、すまない。メル、誕生日おめでとう。あと、ほら、ビッグボアの肉持って来たよ」
「わぁ、やった肉だー」
アル兄は手に包装されたずっしりとした肉を抱えていた。
「メル、食べる前に少し中身見てみようか」
「見たい!」
こうしてメルとアル兄は孤児院の中に入って行った。話題をすり替えて怒りを鎮めるとはやり手だ、アル兄」
このやり取りを見届けるとまた話しかけられた。
「レンくん見ないうちに元気になったね〜」
「リーファさんこんにちは」
この人はリーファさん。アル兄と同じパーティーでAランクの冒険者。
「お姉さんって呼んでくれても良いんだよ〜」
「いいえ遠慮して起きます」
「やめとけ、レンが嫌がってんだろ。ショタコンを抑えろ」
「ショタコンじゃ無いもん」
「あっ、こんにちは。クルトさん」
「おう、元気だったか」
彼もアル兄と同じパーティーのクルトさん。クルトさんはパーティーメンバー(特にリーファさん)の暴走を抑えている印象がある。この前来たときもわたしに愚痴を言っていた。
「おかげさまで」
「そうかそれは良かった。 取り敢えず中に入って話すか」
「そういえばランスさんは?」
「あいつは王都のオークションに行った」
「そうですか」
「俺達もここでゆっくりした後、王都であいつと合流するつもりなんだ」
「ここを離れるんですね」
「少しの間な。またすぐ帰ってくる」
「離れていても無事を祈ってます」
「ありがとな」
「レン。準備するから手伝って」
シスターが呼んでてる。
「はーい。では、クルトさんもリーファさんもわたしはこれで」
そう言って家の中に入った。
因みにランスさんの趣味はコレクションです。