初めての記憶
賢者が崖から落とされたあとの話です
(ここは・・・ どうやら助かったみたいだ)
奇跡的に枝に引っかかり助かったみたいだ。
ボキッ
「うわぁ!」
わたしは着地の姿勢をとる。
無事に着地したあと情報を整理しようと思ったが違和感に気づく。
(おかしい。わたしが崖から落されるより前の記憶がない)
なぜか記憶がさっきまでの記憶より前の記憶がぽっかり抜けているのだ。何かがあったのは思い出せるけど何があったのかは思い出せない。
考えていると遠くからモンスターの鳴き声が聞こえてくる。
(逃げなくては!?)
だが、痛んだ体が動きを妨害する。モンスターはわたしを捉えて走り出している。
もうダメか。
その時目の前のモンスターが氷漬けにされた。
「◾️◾️◾️◾️」
後ろから声が聞こえる。だが食べられる恐怖から解放されて気が緩んだからなのかそこで意識は途絶えた。
side冒険者
俺たちは今未開拓地帯の探索に来ている。『深淵』って呼ばれてる渓谷が有るんだが、渓谷の底にしか生えない黒りんごをとって来いという依頼だ。BランクやAランクモンスターがたくさん出る危険な地帯なので、報酬がたんまり貰えると言うことだが、明らかに出過ぎじゃねぇか?このパーティーなら問題にはならないだろうが、明らかに労力が見合ってない。これは受ける依頼失敗したかもな。
「黒りんご無いな」
「まだ先は続いているし、奥に行ったらきっと見つかるだろう」
「見つかるといいけどね」
「ねぇ、まだ〜」
「魔王城近くまで来るのはやべえぞ。いつ魔族に襲われてもおかしくねぇ」
そんなさなか俺は落ちていく生体反応を感知した。
「1キロ先何か落ちてくるぞ」
「ますい!魔族かも知れねえな」
「撤退した方がいい
俺はすかさずスキルを発動する。『千里眼』
「!? 子供!」
「魔族では無いが子供が何故こんな所に!」
「てかそう言ってる場合じゃないよ! 子供なんかモンスターにパクで終わりだよ! 早く保護しないと」
少年は運良く崖の壁から生えた木に引っかかって無事みたいだが・・・あっ折れた。 やばい! 少年のまわりにモンスターが集まって来ている。
「おい!助けるぞ!」
「言われなくてもそうしてる!」
少年の寸前でモンスターは氷漬けになった。
少年は無事・・・ では無いがギリ生きている。
「大丈夫か!」
少年は気絶してしまったようだ。モンスターはいなくなったがこの状況は危ない。このままでは少年は死んでしまうだろう。
「ポーションあるか?」
「はい,これ」
「飲んでくれ」
俺は気を失った少年にポーションを強引に飲ませる。これで取り敢えずは大丈夫だな。
「で、依頼はどうする?」
「人命が優先だし仕方ないだろ。死にました。なんてなったら寝心地悪いしな」
「そうか〜。 っ!?」
「なんだ? っ!?」
少年の隣に黒りんごが落ちていた。
「もしかして。少年が引っかかってた木って黒りんごの木だったの!」
「こんな変なとこになってたのか」
「てことは依頼達成ってこと?」
「そうだな依頼達成だな」
俺らは笑いあった。
(少年には感謝しないとな)
こうして俺らが今拠点にしている街『オワリ』に帰るのだった。