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全てを奪われた賢者は記憶の旅をする  作者: 竹馬の友
1章 失われた賢者
16/26

vsマライア の記憶

戦闘あります

 (やっぱ難しい)



 あともうちょっとだと思うけどそのあとちょっとが長い。



 「おお、レン案外いい線いってる」



 「しー、静かに!」



 練習を始めてしばらく経ち、縄も音を立てるまでに来たが、切れるまでにいかない。わたしは少し休む。休むと静かになり男達の声が鮮明に聞こえる。



 「これをやれば昇格できる」



 「絶対に果たさなくては」



 (なんだ?ただの人攫いではないのか?)



 「だが男はわかるがなんで女の方まで連れてこいと言われてるんだ?」



 「しらん。詮索すると消されるぞ」



 「ああ」



 「だが女は良い目には遭わないだろな」



 「ならそうなる前に俺がいっそのこと・・・」



 「お前そんな趣味が・・・いや普通に引く」



 わたしはその会話にキレる。そしてキレた弾みで『身体強化』縄を切るには不完全だった『身体強化』が完成した。



 バチっ



 縛られていた縄は切れ、次々と体からほどけていく。



 「メル!」



 すかさず、メルの縄もほどきに行く。



 「ありがとう、レン!」



 メルが小さくお礼を言う。すると異変を感じ取ったのか森で突然止まった。



 (早く脱出しなければ)



 「ちょ、レン!?」



 わたしは格子をぶち破り、メルを抱っこして外に出る。



 「なぜガキが外に・・・ ぶへぇ」



 わたしは男の顔面に向かってとび膝蹴りをかまし、男はそのまま倒れ込む。もう一台あった馬車も止まり後ろが止まったことを察知し止まる。増援に気づかれないうちにわたし達はそのまま近くにいた男にも攻撃を喰らわせ馬車の進行方向とは逆に逃げていった。











 「はぁ、はぁ、ここまで来れば流石にすぐには追手は来ないだろう」



 「は、離して。自分で歩けるから」



 「ああ、ごめん」



 メルは頬を赤らめて言った。



 「そんなことよりここどこ?」



 メルは目を逸らして照れくさそうに言う。



 「確かに来たことない、だけどなんか既視感がある気がする。多分こっちに行ったらオワリに行けると思う」



 「勘で決められるのも困るんだけど」



 そんなとき聞き覚えのある声がした。



 「その通り!オワリはそっち方向ですよ。すごいですね。なんでわかったんでしょうか。もしかしたら昔に来たことがあるんですかね」



 「マライアさん!」



 「助けに来ましたよ」



 わたしは笑顔のマライアさんに駆け寄ろうとするメルを止める。



 「マライアさん、なんであなたがオワリの方角ではなく、馬車の方から来てるんですか?」



 メルはそれを聞いてぴたりと止まる。



 「それは・・・少し追う位置がずれていたのでしょう。わたしは、道中で偶然見つけただけですから関係ありませんよ」



 「帝国の人にわたしたちを攫わせて何をする気ですか?」


 わたしは間髪なく質問する。



 「少し落ち着きましょうよ。警戒を解いて、敬語はやめましょうよ?ともかくなぜ人攫いが帝国の人なのですか」



 「人攫いでは使わない言葉を使っていましたから。そしてマライアさんが関わっているなら帝国かなぁと思いました」



 「そうですか」



 マライアさんの顔に少し反応があった。マライアはどこか納得できない様な口ぶりで言う。



 少しの間沈黙が続く。沈黙も長く続かず、マライアさんは少しため息を吐いたあと胡散臭かった笑顔も仮面が剥がれたかの様に変貌する。そしてとうとう正体を表した。



 「全く、あの人の部下は質が悪いですね。人を棚に上げて・・・これだからあの人は友達少ないんですよ。まあバレちゃったなら仕方ないですね。レン様いえ、ルイス様帝国に戻りましょう。戻らないのならメルを殺します」



 マライアさんからぶっちゃけここから逃げるのは不可能だ。だからわたしが取れる選択肢はメルをどうにかして逃すまでの時間を稼ぐ。



 『身体強化』



 わたしはマライアに突っ込む。



 「今のうちに逃げろ!メル!」



 「でも・・・」



 「いいから逃げろ」



 「う、うん」



 「逃すのですか。愚かですね。昔のあなたならともかく今のあなたは私に勝ち目はありませんよ?」



 「わかってるよ、そんなこと!」



 「逃げられたら困るんですよね。あなたを契約魔法で縛るためにはあの子が必要なんです。そうでもしないと非協力的なあなたは昔の様に帝国に協力してくれないと思いますからね」



 「それならもしわたしが賢者じゃなかったとしたら、この行いを本物の賢者が見たとしたら帝国に失望してるかもね」



 「そうですね。あれでもなんで子供を集めてっ・・・そうでした思い出しました」



 「どうした?」



 「いえ、なんでも。では、始めましょう」



 「いや、まだ聞きたいことが・・・「時間稼ぎはやめてください」



 バレたか。これ以上の時間稼ぎは無理そうだ。マライアは剣を鞘から抜く。



 「「身体強化」」



 わたしのパンチを剣が受け止める。



 「インパクト・カウンター」



 わたしは咄嗟に回避する。わたしがいたところの地面には衝撃でボコボコになっていた。



 「前よりも腕を上げた様ですね。魔力操作の精度が上がってます。少しは楽しめそうです」



 「それはよかったなっ」



 わたしは会話が終わると同時に懐に走り込もうとする。だが、



 「遅いです」



 マライアの剣がわたしを捉える。咄嗟に剣を掴む。するとマライアは後ろに下がった。



 「危ない危ない。危うく殺してしまうとこでした。止めてくれてありがとうございます。でも剣はやっぱりダメですね。素手で戦います」



 マライアは素手で構える。



 『真・身体強化』



 「はっ?」



 気づくとマライアは目の前にいた。



 わたしは咄嗟に両手で防ぐ。



 だがわたしは吹っ飛ばされてしまった。木に体をぶつける。



 ぐはっ




 「これで終わりかと思いましたが、耐えましたか、身体強化より上位のスキルなのに身体強化であれに反応できた辺りさすがと言ったところです」



 わたしが荒く息を吸う。生きてるよな。



 (とりあえず、生存できたみたいだな)



 ところどころ痛い。わたしはそれでも立ち上がった。



 「身体強「無駄です」



 わたしは肩にチョップを入れられる。わたしは崩れ落ちた。



 「あなたがどう抗おうとわたしには勝てません」



 わたしは意識が落ちかけそうになるが寸前で踏みとどまった。



 「そ、それでも、やるんだ」



 「そうですか」



 また肩にチョップを入れる。



 「ゔぅ」



 だが倒れなかった。



 またチョップを入れる。



 だが倒れない。



 わたしはチョップを何回も入れられるが執念で倒れ込むことはなかった。



 「しぶといですね」



 マライアがチョップを加えるときわたしはチョップをかわす。そしてパンチを繰り出す。そのパンチをかわすためマライアは少し離れた。



 (ここで決めるしかない)



 わたしはこの土壇場であるスキルをぶつけ本番で、見よう見まねで全て再現する。




 『真・身体強化』






 わたしの拳がマライアの顔面に迫る。



 届け!





































 「残念でした」 『身体超化』



 わたしの拳は無惨にもマライアの手の中に収まっていた。



 「もぅ、急に真・身体強化使ってくるなんて少しヒヤヒヤしましたよ」



 マライアは何事もなかったかの様にピンピンしている。



 (もう、手は尽きた)



 「ではもう終わりにしましょう」



 わたしはメルやシスター、アル兄を思い出す。ごめん、もう無理みたい。メルは逃げられたかな。



 「あっ、そう言えば、メルのことですが安心してください。ルイス様をたぶらかした愚かものをほっとく訳ないので、このあとしっかり魔力を追って捕まえますよ。魔力の痕跡を消されたら流石に分かりませんが、あの子にそんな頭ないでしょう」



 「どうやらこれは茶番でしかなかったみたいだな」



 「次起きたら帝国ですから楽しみにしていてください」



 マライアのチョップが迫る。わたしは目を閉じる。・・・がマライアのチョップが当たることはなかった。



 「茶番なんかじゃないぜ。立派な時間稼ぎだった。頑張ったな」



 目を開けるとそこにはアル兄の姿があった。

読んで頂きありがとうございました

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