十五話
見様見真似で体を洗ってみるのだが生まれてこの方、水を含ませた布で体を拭うぐらいで体を洗うということはしたことがなかった。
見ていられなかったのか案内役の侍女の人に全身を洗われていた。
お湯をかけられ手を引かれてお湯の中に入る。
お湯に浸かるのはとても気持ちがよかった。
「気持ちがいいでしょ?王宮に勤める侍女の特権といったところかしら」
「お湯に浸かるのは特別なことなんですか?」
「お湯を張るにはとてもお金がかかるもの。余程の豪商や爵位の高い貴族ぐらいしか入れないわ」
「そうなんですね」
「そろそろ出ましょうか。あまりお湯に浸かっているとのぼせてしまうから」
「はい」
湯舟からあがり渡されたタオルで体を拭く。
拭き方が不十分だったのか髪をごしごしと拭かれてしまった。
用意されていた侍女の服に着替え準備は万端と思ったら鏡の前に連れていかれた。
「じっとしていてね。髪を整えるから」
「はい」
ブラシで髪を整えられ何やら液体をかけられる。
「やっぱりかなり髪が痛んでるわね。若いからちゃんとケアをしてあげればすぐに良くなるわ。よし、こんなものかしらね」
鏡に写る髪は少しだけ艶々としていた。
「ありがとうございます」
「それじゃ、行きましょうか」
「はい」
女性専用のエリアから出ることはなく小部屋に案内された。
「まずは基本的な仕事を教えるわ。掃除とかは大丈夫よね?」
「掃除は得意です」
「じゃぁ、やっぱりお茶の入れ方とかかしらね」
「お茶ですか?」
「高官や高貴な人に頼まれてお茶を給仕するのも仕事なのよ」
「そうなんですね」
「基本を押さえておけば怒られるようなことはないから安心してね」
「はい」
お茶を入れるだけなんて簡単な仕事・・・。
そう思っていたのに実はかなり難しかった。
温度を見極め時間も秒単位で細かく指定されこなせるようになるのに数時間かかった。
「うまくできなくてすみません」
「いいえ、貴方は早い方よ。中には諦めるような子もいるしね」
そう言って苦笑いを浮かべている。
「さて、捨ててしまうのも勿体ないしあなたの入れてくれたお茶でお茶にしましょう」
そう言って棚からクッキーを取り出して皿に並べていく。
お茶を一口飲むと今まで自分が入れていたお茶とは全然違っていた。
お茶の世界は広いのだと実感した。
クッキーにも手を伸ばしてみる。
ほんのり甘くお茶にとてもあっていた。




