十二話
妹さんの姿を見たフランは血相を変えて近寄る。
病的に痩せているのもあるが息が苦しそうだった。
慌てて熱を測ると微熱がある。
「いつからこんな状態に・・・」
「2,3日前ぐらいから」
「薬は飲ませた?」
「薬箱を見たけどどれを飲ませたらいいかわからなかったんだ」
「薬箱はあるのね?すぐに持ってきて」
「わかった」
薬箱を受け取ったフランはすぐに中身を確認する。
薬箱の中には薬そのものはなく薬草などの材料が入っていた。
どうやらこの家では症状に合わせて両親が薬を調合していたらしい。
だが、幸いなことに薬箱にあった材料はフランが知っている物だった。
薬草といくつかの材料をすり潰し薬を調合する。
「お水を取ってきてくれるかしら」
「うん」
ダフネはすぐに水を持ってきた。
「苦いと思うけどこれを飲んで」
少しずつ妹さんに薬を飲ませていく。
妹さんは文句も言わずに最後まで薬を飲んだ。
「ちゃんと飲めて偉いわね」
そう言ってフランは妹さんの頭を撫でた。
「ふむ。君は何でもできるのだな」
黙って見ていた男性はそう言ってくる。
「何でもは無理よ。たまたま知っていただけ」
高い薬を買えない庶民は自分で薬草を取ってきたりするのは当たり前だった。
「それにしても、報告書を読んでいるだけではダメだな。民が苦しんでいるというのに気が付いていなかったとは」
「まるで王様のようなもの言いね」
「私は偉いからな。少年。この金をやろう。妹さんに栄養のある物を食べさせてやるといい」
そういって巾着を渡す。
「あまり長いしてもあれだからもう行きましょう」
「そうだな」
「フラン姉ちゃん。お兄さん。ありがとう」
「どういたしまして」
王宮に戻る道すがら男性はずっと考え込んでいた。
「何を難しい顔をしているの?」
「いや、このようなケースはまだあるのだろうかとな」
「可能性はあるんじゃないかしら」
恐らくだがダフネの父親は自由の火に関わっていたのだろう。
母親も連座で連れていかれたのだ。
ダフネの件は氷山の一角で探せば似たようなケースはまだまだ出てくるだろう。
「ふむ。ならば、私のすることは決まっている」
「それは?」
「不幸な人々に手を差し伸べるのさ」
そう言い切った男性はどこかかっこよかった。
この国の王様もこんな人であればいいのに。
フランは人知れずそう思うのだった。




