十一話
今は近頃人気のカフェに来ていた。
ここで出ているケーキが美味しいと評判なのだ。
庶民にとって甘いものというのはかなりの贅沢だ。
運ばれてきたケーキは白いクリームに上に大きなイチゴが乗っている。
全員に行き渡り早速フォークでケーキを少し崩して口に運ぶ。
衝撃的な甘さが舌の上に広がる。
紅茶で一度リセットして再びケーキを口に運ぶ。
中にもイチゴが入っていたようで甘酸っぱい味が口いっぱいに広がる。
気づけば夢中で食べており、ケーキはあっという間になくなってしまった。
再び街巡りを再開する。
そこに「泥棒」と言う声が聞こえた。
声のした方を見れば男の子が何かを抱えて走っている。
フランの見知った子だった。
泥棒をするような子ではない。
何か深い事情があるはずだ。
フランは走ってきた男の人の前に出て話しかけた。
「すみません。代金は支払いますから勘弁してあげてくれませんか」
「俺は構わいないが・・・」
「ありがとうございます」
代金を男の人に支払い周囲を見ると下女仲間達が驚いていた。
「すみません。私、行くところができました」
「ぞろぞろと行くわけにはいかなそうね。でも、貴方を1人にしないように言われているし・・・」
「それなら私が一緒に行こう」
そう言って黙っていた男の人が名乗り出た。
一瞬悩んだ下女仲間達だったが申し出を受け去っていった。
男の子の家に向かう途中質問を投げかけてきた。
「何故、庇ったんだ?犯罪は犯罪だろ」
「あの子は泥棒をするような子ではありません。何か深い事情があるはずです」
そう言うと何か考え込んでしまった。
男の子の家にはすぐに着いた。
所々壊れているが裕福でない家はどこもこんな感じだ。
扉をノックすると男の子がすぐに出てきた。
「フラン姉ちゃん」
「ダフネ・・・。自分のしたことはわかっている?」
問いかけられたダフネはバツが悪そうに答えた。
「もうこうするしかなかったんだ」
「どういうこと?ご両親は?」
「衛兵の人に連れていかれて・・・。それから、戻ってきてない」
「そう・・・」
「仕事をしようにも誰も雇ってくれないんだ。今まではいざという時の為に貯めてたお金でなんとかしてたけどそれも尽きちゃって・・・」
「確か、まだ幼い妹さんがいたわよね?」
「うん。満足に食べさせてやれなくてどんどん痩せていって・・・。もうどうしたらいいのか」
「とにかく、妹さんの状態を見せて頂戴」
そう言ってフランと男の人は家の中に入り込んだ。




