第1話
「ふぁあ…」
あくびをしながら登校する。朝は眠いな。
授業は滞りなく進んで、放課後になった。
「紀野、はやく行こうぜ」
「ああ」
須藤といっしょに部活に行く。グラウンドに来ると、すでに何人かの部員がユニフォームに着替えてウォーミングアップをしていた。おれと須藤もさっさと着替えてウォーミングアップを始める。と、まわりのやつらがみんな、何かを見ているのに気づいた。おれもその視線を追った。秋吉がこっちに向かって来ていた。…なるほどな。おまえらみんな秋吉に惚れてるわけか。残念だけどな、秋吉は相当な腹黒だ。何度あいつに…いや、やめておくか。第一、秋吉のどこがいいのか、おれには皆目見当がつかないんだけどな。そんなことを考えていたら、いつの間にか秋吉が目の前まで来ていた。
「須藤君。今、ちょっといいかしら?」
どうやらおれの側にいた須藤に用事があるらしい。
「え? 僕?」
「そう、あなた」
少し笑って言う秋吉。まわりのやつらは気持ち悪いくらい秋吉をガン見もしくはチラ見している。
「まあ、少しだけならかまわないよ?」
「ええ、すぐに済むわ」
「わかった。で、どうすればいいんだ?」
「私についてきて」
須藤は秋吉の頼みを承諾して、秋吉についていく。まあ、おれには関係ないけどな。
ほんの少したってから、須藤が戻ってきた。
「お、はやかったな」
「え? あ、ああ…」
おれが声をかけると須藤は曖昧に返事をした。
「ところで、秋吉に何頼まれたんだ?」
須藤は少し言うのをためらった。
「いや、大したことじゃなかったよ」
「ん…そうか」
なんだか少し様子がおかしい気もするが、秋吉のこともあるし、あんまりかかわらないほうがいいかもしれないな。そう思って、おれはこれ以上須藤に聞くのをやめた。
グラウンドを走っていると、宮下が歩いてるのを見つけた。
「みや…」
おれは声をかけようとして途中でやめた。宮下がフラフラと歩きながら校門に向かっていた。なんかあったのか? それに、帰宅部のあいつがグラウンドに来ていること自体が珍しい。まあ、今度会ったときに聞いてみるか。そう思って、グラウンドを走るのを再開する。
部活が終わって、須藤と帰る。明日も、変わらない日常がくる。毎日違う事をしているはずなのに、同じ日常をくり返している気がしてしまう。明日も、そう感じてしまうのだろう、と思った。
はい、雅人編です。
ここからは、雅人視点でお送りいたします。
加奈編と照らし合わせてみると、何か分かるかもしれません(笑)