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勇者が高校生と入れ替わったら 3

♢美人女医と偽勇者 僕視点


  僕は勇者の放った言葉が、鋭いとげとなって自分の心に刺さったのを感じていた。いじめを見て見ぬふりをしていた自分をとても恥ずかしく思っていたんだ。でも、それよりも目の前の美しい女性のことで僕は頭がいっぱいになっていた。


 実は、ゲームキャラクターの美人女医のルマ先生の大ファンだった。年上の艶やかな美人女性は原作コミック時代から憧れだった。見た目は派手なファッションに身を包み、カールをなびかせたロングヘアーは僕の憧れの人だった。気が強い性格も割と好きだ。


 そこで転んだ時に少しケガをしたことを口実に診療所に行ってみたのだ。勇者だって転ぶし、ケガをするのだ。ゲーム中でもそんなときに活躍するのが美人女医なのだ。プレイヤーのいないこの世界は、平和で僕のいた日本と変わりない。あの人と会話をすることができるのだ。肌で感じることができるのだ。せっかくだから会いに行ったのだ。僕は完全にミーハーなファンの一人だった。


「あら、勇者ミカゲ、久しぶりね」

 美人女医はやはり美しかった。声も生で聞くことができ、歓喜の渦だ。

「実は……怪我をしてしまって……」(かすり傷だけど)


「珍しいわね。あなた滅多にここに来ないでしょ。しかも、この程度のかすり傷で」


 嫌味たっぷりのルマ先生。この二人、犬猿の仲なのか?


「あなたのいつも偉そうな俺様オーラが苦手だわ。治せと命令するし。もっと自分をいたわるべきよ。無茶しすぎだわ」


「……すみません」

 僕は謝ることしかできなかった。


「はぁ? 熱でもあるの? 今日のあなたおかしいわよ」

「どこが……変ですか?」

「いつもいつも偉そうに口と態度の悪い勇者だと思っていたけど……今日はとても礼儀正しいから」


 勇者ってそんなに態度が悪かったのか? ミカゲもルマ先生に対して高飛車だって言ってたしな。似たもの同士で合わないということなのか?


「最近、プレイヤーに呼ばれないので、仕事があるまでここに滞在してもいいですか?」

 大胆な提案をしてしまったが、この世界に勇者の家があるとは聞いたことがない。普段どこで過ごしていたのだろう……? 疑問は、今度連絡した時に聞いてみよう。


「いいわよ。ここには入院施設としての機能もあるから、滞在することは可能よ」

 ルマ先生の意外にもあっさりした承諾に安堵を覚えた。


 勇者の姿は、普段の僕とは似ても似つかないほどイケメンだ。顔立ちは切れ長の瞳に強い目力。基本黒い洋服は、アニメならではのデザインで、マントは赤い。剣をいつも背負っているが、意外と重くは感じない。体つきは筋肉がついている細マッチョというところか。腹筋はもちろん割れているし……リアルな僕とは全然違う。だからこそ、この世界では強気でいられる。ルマ先生は本当の僕を知らない。だからこそ、ここでは違う自分として過ごしてみたい。


 それは、ぼっちのオタクだった僕が初めて抱いた大きな野望だった。いつも受け身で自分から何か提案するなんて僕らしくはないけれど、外見が違うせいか少しばかり気が大きくなっているのかもしれない。

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