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勇者が高校生と入れ替わったら 2

♢勇者が普通の高校生になったら 俺様勇者視点


 あれ……ここはどこだ? なんだこの部屋は? この画面に俺様が映っている。

 攻略本? この書物には俺様が描いてあるではないか。

 なぜだ、俺様は勇者だぞ。ここは、異世界なのか? 森も城も剣もない。

 敵はいないのか?

 まさか、ゲームの新章という展開じゃないだろうな?


 それにしては殺風景だ。なんだこの変な服は? 俺様のいつもの装備服はどこだ? なんだ……? この画面に映っている男は俺様自身だ。


「おい、貴様なぜ俺様の剣と服を所持しているのだ?」

 画面に向かって自分に話しかけてみた。


 すると画面から勇者の格好をした自分と同じ顔の男が答えたのだ。


「あれ? 勇者ミカゲ様ですか? 僕、ゲームをしていた者ですが。気づいたらなぜかあなたの格好をしていたのです。あなたがなぜ僕の服を着ているのですか? あなたの見た目は、僕自身ですが……」


「入れ替わったというのか? ゲームプレイヤーとゲームキャラクターが……」


 勇者は絶句した。


「僕はスマホから、今、あなたを見ていますが。あなたはテレビから話しかけているのですか?」


「この四角い画面はテレビというのか? スマホ……? なんだそれは?」


「スマートフォンというものがあるのですが、通信機器の電話です。元に戻るまであなたは僕として生活してください」


「なんで? 俺様は勇者だぞ」


「勇者だろうと今のあなたは僕です。僕として生活してくれないのならば敵にやられて今すぐ、死にます」


「それは……困る……わかった……元に戻るまではここでお前のふりをして生活をしてみる」


「僕も殺されないように全力でこの世界で生活します。困ったときは、そこにあるテレビから話しかけるか、もう一つ僕の机の上にあるスマホがあるので、それから話しかけてみてください。スマホの電源を入れてみてください」


「電源だと?」全くこの世界を知らない勇者は初めてのスマホに手を触れた。


「丸いボタンが下にありますよね。電源が入っているので画面に触れてみてください」


 勇者は人生初のスマホに触れた。すると、画面から通常は光らないような大量の光と共に俺様自身の姿がうつった。――とはいってもそれは俺ではない誰か……なのだが。


「スマホは充電が必要なので、時々コンセントに差し込んで充電してください」

「充電だと?」

「僕の机にさしてある白い線の先をスマホの下にある穴に差し込んでください。充電しないと使えなくなりますから」

「面倒な代物だな……」

 勇者は自分の面倒な運命をあきらめた。

「貴様の名前は何だ?」

「羽柴翔といいます」

「ハシバショウ?」

「高校1年生のゲーム好きで、アニメ好きの十六歳です」

「プレイヤーなら俺様のことは知っているよな?」

「大変よく知っていますよ。毎日勇者になったつもりでゲームしていましたから。原作の漫画やアニメも熟知しています」

「ちなみにゲームキャラクターは基本的にプレイヤーがプレイしていないときには 身に大きな危険が起こることはないから、安心しろ」

「さっき雑魚キャラがおそってきましたが……」

「それは貴様がプレイしていたからではないのか? たぶん終了していないまま、貴様はゲームの世界へ行ったのだ。とりあえず、元に戻るまでは貴様を演じるから、貴様も俺様の顔に泥を塗らないようにしろよ」


 よくわからないが、俺らは入れかわったのだ。――多分そうだ。


 俺はゲームの世界の主人公で勇者のミカゲという。しかしながら、ずいぶん冴えない姿になったものだ。地味で特徴のない顔立ちといい、体力のなさといい……翔という男は、とんでもなく軟弱な男のようだ。


 家族にはどうかしたのかと心配され、羽柴にスマホで案内してもらい、なんとか学校という場所に来てみたのだが、こいつには仲間がいないのか? ゲームの世界では、仲間がたくさんいたようだが……現実の世界では、友達が一人もいないようだ。誰も声をかけてこない。とりあえず黙って授業を聞いていればいいのか?

 

 一応、学校はゲームの世界で行っていたので、リアルの世界の勉強というものは一通り理解している。むしろ、ゲームの世界の学校のほうが、難しい内容を学習した。勇者の俺はもちろん、成績は優秀だった。ここの勉強は退屈だ。1日がとても長く感じられる。


 昼休み―――

 俺は、女どもが一人の女子をいじめている現場を発見してしまった。

 勇者である俺はそういった悪事を放っておけない。


「おい、貴様ら何をしている?」

 一瞬、剣を抜こうとしたが――剣はもちろん背中にはなかった。

 仕方ない。気迫で追い払うか。


 性根の腐った女子たちが「羽柴のくせに」と言いながら、去っていった。


「大丈夫か?」

「ありがとう」


 その女子は同じクラスの新城芽久美しんじょうめくみという名前だということが後々わかった。


 元々ぼっちだった俺にそれ以来、話しかけてくるようになった。

 彼女もぼっちらしい。

 ようやくこの世界で話し相手ができたのだ。


 そのことを学校が終わってから、俺の姿をした翔に報告すると―――


「……新城さん? 美少女のクラスメイトだけれど、女子からいじめを受けている女の子じゃないか……」


「いじめられていたのを知っていたのか?」

「知っていたけれど――助けることは、なかなかできずにいたんだ。助けてくれたんだね」

「なんで困っている人を助けない? それでも貴様は勇者か?」

「勇者じゃないよ。元々俺は力も弱いし、能力も低いし……」

「ゲームのプレイ中は勇者を気取っていたくせに。羽柴、そちらの生活はどうだ?」

「実は村の診療所でお世話になっているよ」

「村の診療所ってあの女医がいるところか?」

「美人女医のルマ先生のところだよ」


「……あの女医にあまり近づくな」

「なんで?」

「あの高飛車で気の強い女は苦手だ。極力世話になりたくないタイプだ」

 勇者は珍しく弱音を吐いた。

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