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先輩、会話はデートのキモですよ

『後輩ちゃんの恋愛講座』第七話です。


自分の役割は終わったと、想いを押し殺して身を引こうとする後輩を、そうとは知らずに引き留めた先輩。

これで二人の関係は元通り、ともいかないようで。


さて今回は三回目のデート。

通説では良い関係の男女は、三回目のデートがお付き合いするかどうかのターニングポイントになるとか。


それでは第七話『先輩、会話はデートのキモですよ』お楽しみください。

「いやー、面白いもんだな水族館も」

「そうですね」

「ペンギンの行進とか、何時間でも見てられる気がする」

「わかります」

「イルカのショーが水飛ばさなかったのは、ちょっと物足りなかったな。季節の問題かな?」

「そうでしょうね。この季節にびしょ濡れになったら、カゼですむかどうか」

「確かにな。他に何か気に入ったのはあったか?」

「熱帯魚の水槽は綺麗でしたね。生きてる宝石って感じでしたね」

「お、いい言い回し。今度使わせてくれ」

「ふふっ、いいですよ」


 後輩が微笑む。あ、ちょっと可愛い。

 と思ったらすぐ真顔!


「ややしゃべりすぎですが、会話の引き出し方は大分よくなりましたね」

「ふぅ……」


 三度目のデート練習は水族館。

 気楽に考えていたけど、水族館デートって大変だな!

 カラオケや映画と違って、しゃべらないでいい時間がほとんどない!

 沈黙が長くなるたびに、『……十秒……、二十秒……』って将棋みたいに小声で言ってくるし!


 覚えなきゃいけないことも多かった……。


『視界に入るもの全てを話題にするつもりで歩いてください。同じ景色を共有しているというアドバンテージを無駄にしないように』


『話は着地点を短く設定して、決めたら反応がどうであれ届かせてください。つまらない話より中途半端な話の方がストレスです』


『会話は七割相手に話させるくらいで考えてください。それでもフォローとかリアクションとかで、五分五分くらいになりますから』


『質問責めにしてはいけません。まず自分の感想の中で共感を受けそうなものを振って、口を開くように導くんです』


『質問するなら、はい、いいえで答えられる質問から、自由回答質問です。順序を間違えると救いようのない沈黙に落ちますよ』


 昼食の予約や休憩するカフェを調査して、万全だと思っていた俺は甘かった。

 でもおかげで会話術もだんだんわかってきた。

 この緊張感には慣れないけど……。


「さて、これからどうしますか?」

「そうだな……。まだ時間大丈夫か?」

「はい。ある程度は」

「腹、減ってきたんだけど、お前はどう?」

「そうですね。私も多少は」

「じゃあ軽く飯食って行かないか?」


 ぴたりと立ち止まる後輩。


「……一旦相手の事情を確認して、『時間はある』『お腹が空いてる』と言わせてからの誘いで断りにくくさせる手管、まだ教えていないはずでしたが悪くないです」

「え、いや、褒められたのは嬉しいけど、そうじゃなくて」

「え?」


 こいつはちょいちょい固まるなぁ。

 そんなに俺が誘うのが意外かよ。


「前にも言ったけど、いつも色々教えてもらってばっかりだからさ。お礼を兼ねてな」

「そんなの私が好……、やりたくてやってることですから気にしなくていいですよ」

「俺と飯行くの、嫌か?」

「……その訊き方はずるいです」


 なぜむくれる。


「わかりました。ご飯、行きましょう」

「やりぃ!」

「しかし先輩も熱心ですね。わざわざ追加でお勉強だなんて」

「え?」


 お勉強とは。


「追加講義『飲み会編』突入です。さぁびしばし行きますよ!」

「いや違うって! 単なるお礼なのに!」


 俺の悲鳴に近い訴えも聞かず、後輩はうきうきと駅に向かう。

 仕方ない。これで行きつけの安居酒屋なんか連れてったら何言われるかわからん。

 彼女ができた時にと思っていた、おしゃれめの小料理屋にしよう……。

 行きつけより大分高いけど、まぁお礼だししょうがないか……。




 どうしよう。

 先輩が素直に言われた通りにするからどんどん教えちゃったら、成長が早すぎる……。

 最初は「要所要所で話を振ればいいか」的な、典型的なダメデートだったのに、今じゃ教えたことほぼほぼ使いこなしてる……。

 秒読みはやりすぎた、かな。

 後半は素で楽しかった。

 指導する内容がなくて困ったくらい。

 思わずご飯のお誘い、オッケーしちゃったけど、大丈夫、だよね。


 ……いや、むしろこれはチャンスかも。

 先輩も成長と手応えを感じているだろうし、ここで試験と言って適当な課題をクリアさせたら……!

 そうしよう。頑張ろう。

 致命的に壊れる前に、綺麗に幕を引こう。

 あの映画の二の舞になんか、なりたくないから。

読了ありがとうございます。


会話術と言うと、話す技術と思う人が多いですが、実は引き出す方が重要です。


満員電車を思い浮かべてください。

駅のホームから乗ろうと思ったら、ドアが開き、降りる人が降りてから乗り込むのが普通だと思います。

人の気持ちも同様だと私は考えています。

気持ちが溜まってる人には、受け入れる余裕がありません。

吐き出させてあげれば、その空白にこちらの言葉が入る余地ができます。

故に相手に何かを伝えたい場合には、相手から話させる、ここテストに出ますよ!


話を後輩に戻します。

四月咲 香月様から頂いた、戸惑う後輩です!

挿絵(By みてみん)

可愛い! だが先輩には(またこいつ固まってる……)な認識!

頑張れ後輩! 次回は小料理屋回! お酒の力を借りて押し込め!


次回もよろしくお願いいたします。

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