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後輩ちゃんの恋愛講座  作者: 衣谷強


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11/14

先輩、お家デートは大チャンスですよ

『後輩ちゃんの恋愛講座』第十一話です。


お家デートですってよ奥様!


一人暮らしのご自宅に 若い男女が二人きり。

何も起きないはずはなく……。

(※本作は健全なラブコメです)


飯テロ要素を含みます。食事後、またはご飯の準備をしてから読まれる事をお勧めします。特にこれからお食事を決めるなら、唐揚げにするといい感じです。


それでは第十一話『先輩、お家デートは大チャンスですよ』お楽しみください。

「お邪魔します」

「お、おう……」


 休みの昼間、赤須は俺の家にやって来た。


「へぇ、綺麗にしてるんですね」

「ま、まぁ一応な」


 部屋を見回す後輩に、緊張が解けない。

 大掃除して、危なそうなものはしまっておいたから大丈夫、なはずだけど……。


「本棚に不自然な空きがありますね」

「え、あ、いや、その……」

「女子の目に触れない方がいいものを隠すのはいいですが、詰めが甘いです」

「あ、はい……」


 探偵かこいつ。


「それと見栄でしょうけど、本棚に小難しい本ばかり並べるのもどうかと。漫画とか嫌いじゃないなら、置いておくと雰囲気を柔らかくしたり、話題になったりしますよ」

「なるほど……」


 でも見栄と決めつけるのはよくないと思うぞ。

 減点が怖かっただけだい。


「まだ言いたいことはありますが、先輩も唐揚げを待ち遠しく思っているでしょうから、調理を始めましょう」

「あぁ。よろしく頼む」


 キッチンに移動し、冷蔵庫から材料を取り出す。


「うん、ちゃんとできてますね」

「言われた通りやっただけだけどな」

「レシピ通りをちゃんとできるのは、料理の才能の一つですよ」

「そういうもんか」

「そういうもんです」


 鶏肉を切って、醤油とチューブのニンニクとショウガ入れてもみ込む。で、一晩冷蔵庫。

 こんな簡単なことで、あのうまい唐揚げが食えるなら安いもんだ。


「ご飯は炊けてますか?」

「ばっちりだ!」

「では衣をつけて揚げていきましょう」

「おう!」


 フライパンで油を温めつつ、これも赤須の指示で買った片栗粉をまぶす。


「菜ばしを入れて、泡が立ったら揚げ時です」

「何か唐揚げができるって感じになってきたな!」

「テンション高いですね。では揚げていきますよ」


 油が弾ける音と、いい香りがしてくる。


「四分くらい揚げたら、一度取り出します。五分くらい置いたら、油の温度を上げてもう一度揚げます」

「何で二回揚げるんだ?」

「鶏肉の中まで熱が通るには時間がかかりますが、その間揚げ続けると、焦げたりぱさぱさになったりするんです。なので一旦油から出して、余熱で火を通すんです」

「なるほど」

「じゃあ今度は先輩が揚げてみてください」

「お、おう」

「びびらないでください。料理をさらっとこなせる人はポイント高いんですから」

「わ、わかった」


 はねる油に腰が引けながらも、何とか鶏肉を揚げていく。


「できましたね」

「こんなに大変なのか……」

「慣れれば大したことないですよ。では作り手特権を」


 後輩が小ぶりな唐揚げを口に入れる。

 ざくっとした音が聞こえてくる。


「ん〜! いい出来です!」

「お前ずるいぞ!」

「先輩もどうぞ。作り手特権ですから」

「よーし」


 ひときわ大きいやつにかぶりつく。


「熱っ! はっ、はふ、熱っ! はふ!」

「そんな大きいのいくからですよ。で、お味はどうですか?」

「……めちゃくちゃうまい」


 口の中をやけどはしたけど、こんなうまい唐揚げは初めてだ!


「……よかった。じゃあ盛り付けしましょう。先輩、お湯は沸いてます?」

「あぁ。電気ポット満タンにしてある」

「じゃあこのインスタントみそ汁を作っておいてください。私は唐揚げとご飯を盛り付けて持っていきます」

「わかった」


 居間のテーブルに唐揚げの山が! 夢みたいだ!


「……先輩、小学生みたいな目ですね」

「だってこんなうまい唐揚げがどっさりだぜ!? ワクワクしない方が無理だろ!」

「……」


 は、はしゃぎすぎたか? 減点か?


「……まぁいいです。冷める前に食べましょう」

「いただきます!」

「いただきます」


 うまい! 何だこりゃ!

 揚げたてアツアツもうまかったけど、少し温度が落ち着くと、染み込んだタレの味が口に広がる!

 これが一晩漬け込んだタレの力かよ……!


「本当にうまいな!」

「そうですね。先輩もなかなかやりますね」

「赤須がいてくれたからだろ」

「っ……」


 急にそっぽ向いて、唐揚げを口に入れた。

 こいつ、褒められるの苦手なタイプかな。

 迷子の時もそうだったし。


「の、飲み物何にする? お茶とビールと日本酒があるけど」

「……ビール、お願いします」

「唐揚げにはビールだよな!」


 とりあえず飲み物で空気を変えよう!

 コップにビールを注ぐ。


「乾杯」

「……乾杯」


 コップを合わせ、唐揚げのうまみが広がる口に、ビールを注ぎ込む。


「うまい! 唐揚げとビールの組み合わせ、最高だな!」

「ふふっ、そうですね」


 よかった。気はまぎれたみたいだ。


「ふぅ、これならもうちょっとビールもらっていいですか?」

「もちろん! もう一本買ってあるから、足りなくなったら開けよう!」

「はい」


 赤須についてもう一つ知れたこと。

 酒飲むと機嫌がよくなることだ。

 そのためにビールも日本酒も簡単なつまみも買ってある。

 何とかうまく話ができるといいんだけど。




「先輩の日本酒を見る目は流石ですね!」

「そうか? 親戚に酒屋がいるから、あれこれ教わっただけだけどな」

「前のお刺身に合うお酒も美味しかったですけど、これは果物みたいな香りと甘さですごく好きです!」

「お前の方が通っぽいぞ」

「えへへ、そうですか?」


 照れ笑いする赤須。今なら言えるか?


「お前のおかげで、俺も随分色々わかるようになったよ」

「そうですね。先輩の成長ぶりには、教えた私もびっくりですよ!」


 今だ! ここでなら言える!


「だからさ、そろそろこの勉強、終わりにしないか?」




 酔いが、一気に覚めた。

 今、先輩、なんて言ったの?

 『オワリニシナイカ』って何? どういう意味?

 言葉は耳に入ったのに、わかりたくない。

 わかりたくないのに、先輩の声だから頭から追い出せない。

 何で? 何で何で何で何で?

 嫌だった? 何が? 減点? 勉強? それとも私?

 突然脳裏に蘇る先輩の涙。

 何度も見た携帯の写真じゃなくて、私が流させた涙。

 そうだ。彼女だと思っていた人にキープ扱いをされて、傷ついてた先輩を更に追い込んだのは私だ。

 それでも優しい先輩は無理して付き合ってくれていたんだ。

 何を浮かれていたんだろう。

 許されるはずがないのに。

 女扱いされてないのに。

 好きになってもらえる資格なんかないのに。


「お、おい、赤須……」


 先輩の驚いた声で我に返った私は、そこで初めて自分が泣いていることに気がついた。

読了ありがとうございます。


なーかしたーなーかした!

せーんせーにいってやろー!


そんなレベルのトラブル。

誤解はあれど、走り去られたりしなければリカバリーは容易。


ちなみに四月咲 香月様から、ショックを受ける後輩を頂きました!

挿絵(By みてみん)

……先輩、大丈夫だよね?

フォローできるよね?

闇落ちさせたら後が大変なんだから!


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読む前ですが、芝エビ買ってあるのでエビのから揚げ予定(笑) から揚げ作って摘まみながら読もう(笑)
[一言] 再試験は間近ですね(笑)。
[良い点] 前半がいい雰囲気だっただけに最後の後輩ちゃんの涙の対比が映えて良かったです。 後輩ちゃんの早とちりにしか思えないですが、先輩もまだまだ言い方に難が残ってますね。 後輩ちゃんにしっかり調教し…
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