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後輩ちゃんの恋愛講座  作者: 衣谷強


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10/14

先輩、お弁当は褒めるのが難しいですよ

『後輩ちゃんの恋愛講座』第十話です。


ここからは連載版のために書き下ろした新エピソード!

お弁当の褒め方、つまり後輩がサンプルを作ってくるというわけで……。

料理上手か下手かで『褒めるのが難しいですよ』の意味が変わってきますが……?


それでは第十話『先輩、お弁当は褒めるのが難しいですよ』お楽しみください。

 はてさて何がやってくるのか……。

 昨日、赤須から来たメッセージを再確認する。


『先輩、明日は文IIのカフェでお昼に落ち合いましょう。ご飯は食べないで待っていてください』


 うーん、わからん。

 飯の注文はさっさと自分の分だけしてはいけない、とか、ランチは無闇におごらない、とか、食べ終わった後の片付けはスマートに、とか、ひと通りやったと思うんだけど。


「お待たせしました」

「おう」

「お昼、まだですよね」

「あぁ。言われた通り、食べないで待ってた」

「ではこれを」


 赤須が取り出したのは、弁当箱?


「今回の課題は、お弁当への対応です」

「お弁当?」

「はい。お弁当への対応は、非常に難しく、また重要です」

「そうなのか? もうそこまでいったら付き合えそうな気もするけど」

「確かに手作りのお弁当は明らかな好意の表れですからね。でも逆に言えば対応をしくじると、その相手の好意を踏みにじったことになりかねません」


 なるほど、確かにそうだな。

 気合いを入れて食べるとしよう。


「では召し上がれ」

「いただきます」


 フタを開けると、おお! 何だ! すごい!

 一口サイズの丸いおにぎり。鮭ご飯とわかめご飯の二種類が三個ずつ。

 これまた一口サイズのハンバーグ。ソースはかかってない。忘れたのか?

 唐揚げもある! テンション上がるわ!

 煮物もうまそうだ。ニンジンとゴボウとレンコンにサヤインゲン。肉は入ってないのか。まぁ他に肉はあるからバランスかな。

 ちくわにキュウリとチーズを入れて串に刺してある。女子ってこういう可愛いの好きだよな。

 そして、これは、やはり、女子だからか。卵焼きを斜めに切って、ハート型にしてある。可愛いけど、恥ずかしいな……。

 えぇい! とっとと食うに限る! ハシを持って、いざ!


「減点です」

「まだ食べてないのに!」


 何がダメだったんだ!?


「お弁当は盛り付けまで含めて気を遣っているものです。そこへのコメントなしに食べ始めるのは、食べればいいんだろ的なぞんざいさを感じさせてしまいます」

「そ、そうか」


 確かに綺麗だ。

 すごいと思ってはいたけど、言葉にしないとな。


「えーっと、すごい品数だな! 作るの大変だっただろう!」

「減点です」

「褒めたのに!」


 赤須が前もって言うだけあって難しい!


「お弁当作りが大変なのは事実です。でもそこをピックアップするのは、舞台そっちのけで舞台裏を褒めるようなものです」


 あ、それは嫌だな。


「てことは、触れない方がいいのか?」

「触れるなら食べ終わった後です。舞台を堪能してその余韻としてなら、舞台装置の話もありでしょう」


 そうか。では改めて。


「彩りが綺麗だな。どれも一口サイズで食べやすそうだ。それにこのハートの卵焼きとか、さすが女子って感じだな」

「……まぁよしとしましょう」


 歯切れが悪いけど、お許しが出たので早速おにぎりから。


「ん! うまっ!」

「そうですか」


 味わって飲み込んで、よし、コメントだ!


「塩加減が絶妙だな! 握り具合もいい! あと、一口サイズだから食べやすい! えっと、あと」

「減点です」

「だよな!」


 今のは言っててダメだと思った!


「別にグルメリポートじゃないんですから、事細かに言う必要はないんです。『これ美味しいな』『好きな味だな』くらいで十分ですよ」

「それくらいでいいのか」

「明らかに後半無理してましたよね。そういうのバレますから」

「はい」


 次はハンバーグにしよう。


「お!? ソースがかかってないのに、味がすごいしっかりしてる!」

「いいですね。そういうリアクションが大事です」


 素で驚いただけだけど。


「これどうやったんだ?」

「タネを作る時に下味をしっかり付けるんです。ソースで味を付けようとすると、他のおかずに味が移ることがありますからね」

「へぇー! いやこれホントにうまいわ」

「……よかったです」


 次は卵焼き。


「お、甘いやつだ。俺好きだな」

「本当ですか?」

「え、う、うん」

「ここで無理すると後々苦労しますよ」


 ……バレてる?


「……実は、しょっぱい卵焼きの方が好き、です」

「先輩はウソ下手ですね」


 おっしゃる通り……。


「でも折角作ってくれたのに文句付けるのは悪いし、別にまずいわけじゃないし」

「それはそれで伝えながら、好みも伝えるんですよ」

「え、無理じゃないか?」

「『俺しょっぱい味の卵焼きが好きだけど、この味付けも美味しいな。今度しょっぱい味の卵焼きも作ってくれないか? すごく期待できる』 どうですか?」

「天才かお前」


 それなら傷つけないで好みを伝えられるな。


「お弁当を作ってくるということは、相手に喜んでもらおうと思ってるんですから、好みを伝えるのは大事なんです。もちろん否定は極力なしで」

「あぁ、なるほど」


 勉強になる。次は煮物にしよう。


「うん、うまい。煮物ってあんまり自分で作ったり買ったりしないけど、こんなにうまいんだな」

「……ちょっと褒め方がわざとらしい気もしますけど、まぁいいでしょう」


 ちくわは、これコメントどうすればいいんだ?


「これ、可愛いな。女子らしい」

「あ、はい、そうですね。既製品の組み合わせは、まぁ、そんな感じで」


 いよいよ唐揚げだ。


「! うまい!」

「本当ですか?」

「いや、ホントうまい! 冷めてるのにめっちゃうまい! お店のじゃないんだよな?」

「え、はい、家で揚げました」

「いやこれはすげぇわ! 揚げたても食べてみたいわ」

「……ありがとう、ございます」


 これでひと通りコメントはしたか。


「なぁ、後はコメントなしで食べていいか? 普通に味わって食べたい!」

「……どうぞ」


 うまい飯はやっぱりあれこれ考えないで食べたい!

 うん! うまい! あぁ最高!

 勉強がなきゃもっといいんだけど、勉強なしじゃ作ってきてくれなかっただろうから、まだ卒業しなくて良かった!


「ふぅ、ごちそうさま!」

「お粗末様でした。……美味しそうに食べますね」

「実際うまかった!」

「……どういたしまして」


 ん? 照れてるのか? すごい勢いで片付けてるけど。

 あ、そうだ。


「作るの大変だったよな。ありがとう!」

「……いえ、大したことでは」


 あれ、何か反応が悪い? 何かミスったかな? 褒め足りない、とか?


「特に唐揚げ! 揚げ物なんて大変だろうに、すごくうまかった! また食べたいな!」

「……また、ですか……」


 あ、やべ。厚かましかったかな。


「……わかりました。じゃあ近々、予定を合わせて……」

「あぁ! 楽しみにしてる!」


 そそくさと立ち去る赤須。

 あ、結局あいつ、何も食べてなかった。

 夢中になって食べちゃって悪かったな。

 でもまたあの唐揚げ食べられるのか。楽しみだ。




 きゃあああぁぁぁ!

 うまいって! うまいって言われた!

 あんなに夢中になって食べてくれたから、お世辞じゃないよね!

 それに卵焼きとちくわで『さすが女子』とか『女子らしい』とか!

 恥ずかしかったけど入れて良かった!


 もう教えられるネタがないからって無理矢理考えたお弁当対応。

 正直『美味しい』って言って食べればオッケーなところを色々理屈をつけて勉強に仕立てた。

 最初はいい案だと思ってた。

 あわよくば先輩の胃袋をつかめるかもって。

 ……つかまれたのはこっちの方だった……。


 で、どうしよう……。

 唐揚げ、ばっちり好みだったのはよかったけど、揚げたてって……。

 どっちかの家で作らないと、だよね?

 お家デート……。

 先輩も私も一人暮らし……。

 部屋の中で二人きり……。

 無理無理無理無理! 耐えられるわけがない!

 でもチャンスではあるし……。

 でも付き合ってもいないのに……。

 あぁ……。自分用のお弁当、食べれる気がしないや……。

読了ありがとうございます。


ゲテモノじゃなくて良かったね先輩!

そして喜んでもらえて良かったね後輩!


この流れで次はお家デートかなと思っていますが、どっちの家に行かせるかで迷ってます。

揚げ物をするなら他人の家より自宅だよな、と思ったり、先輩の家なら指導内容がいっぱいできるな、とか。


今週中にはできると思います。恐らく。多分。メイビー。

何か全く関係ない短編が上がったら、「あぁ、話が思い付かなくて現実逃避してるんだな」と生暖かい目で見守ってください。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] えーえー、どうせうちは二品しか入れてませんよ(ひがみ 弁当作るにはけっこう面倒なので、自分の分だと二品入れれば十分ですので手抜きになりますね。 足りなきゃカップラーメンかコンビニの総菜追…
[一言] あー弁当食べたいなー 唐揚げ美味しそー…… くっ、リア充め……
[良い点] 後輩ちゃん可愛い!! 面白かったです! 追加エピソードまで全部読ませて頂きました。 お弁当編、ときどき固まってるのは褒められてフリーズしているんでしょうか、だんだんと後輩ちゃんの方に恋愛…
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