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In The BLACK  作者: かすぅ
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ホーム中に強く擦れる金属の音が響く。



水輝さんの向いている先………、私もそこを見ていると不意に右端から明かりをつけた何かが入ってきた。



「あれが電車だ。あいつに乗りさえすれば後は帰るまで待つだけだ…………じゃあ、乗るか。」



そう言うと水輝さんは立ち上がり、『電車』に向かう。



ホームでくつろいでいた人達も立ち上がり、そのまま電車に乗り込んでいたり……逆に電車から出てきた人と話したりしている。



そして水輝さんも、黒い帽子を被っている電車から出てきた人に話し掛けた。



「獣人を確保したので首輪を下さい……1番安いので。」



「獣人………って、これは凄いな。ネームタグを作るからライセンスを見せてくれ。」



そう言われると水輝さんはポケットの中からカードを取り出し、渡した。



少し光沢のある暗い灰色のカードで、渡された男の人はそのカードを見ながら紙に何かを書いていく。



「水輝さん、首輪ってなんですか?。あと、そのカードはなんなのでしょうか?。」



水輝さんは聞いた事にはなんでも答えてくれる。


なので今回も分からない言葉を取り敢えず聞いてみる……が、



水輝さんよりも早く男の人が反応した。



「……喋った?………この子……喋れるのか?!。………お、おぃ君。この子本当に野良の子何だろうね?誰かが飼っている子でも知らないからね。」



そう言って男の人は水輝さんに何かを渡した。


黒い皮出てきている何か。細長い形状の物に金属のパーツがいくつか付いており、それによって円よ形に固定されている。



「こいつが首輪だ。お前が俺の物って証明するものだな………基本的にずっと付けなきゃ行けない。…そして、この首輪に登録したのかこのカードに記載されている情報だ。」



そう言って水輝さんは黒い物……首輪を私の首に優しく巻いてくれた。


それなりに滑らかにされている皮は、若干の窮屈さや違和感を感じはするものの、我慢できない範囲ではなかった。



そしてカード……水輝さんが見せてくれたカードには、


氏名 『舞葉 水輝』 ロール『外域探査員・盗掘者』 等級『スチール』


と、上部に書かれており下にも色々な数字と文字が並んでいた。



「……凄く………くわしそう!……ですね?。」



「まあ、ゆっくり分かるようになっていけばいいさ。希歩ならさして時間も掛からないだろうし。今は俺の事が詳しく書いてあるってだけ覚えといてくれ。」



カードをしまうとそのまま水輝さんは電車に乗ったので私も続く。



乗り降りする場所にも明かりがついており、近づいてみると電車とホームとの間に隙間がある事が分かった。



電車は意外と高さがあるようで、入口より下に車体が続いて居た。



軽く飛ぶようにして電車に乗る、中は簡素なソファのようなものがいくつもあるが全体的に暗く、ソファによって更に影が増えていた。



水輝さんはさっさと座ってしまったので、その隣に座る。



「……向こうに付いたらお前関係の申請をあれこれしなきゃいけないからな。知らない事ばかりだろうがあんまり騒ぐなよ。」



「は、はいっ………静かにしてます……。」



電車の開いてる入口からは続々と人が入ってくる。


そして、その人達全てがこちらをみてくる。



「やっぱり私って……普通の人達から見たら奇妙なんですかね……。」



「外に出てる奴らはまだマシだ。今見られてるのは異質な物を珍しがってるんでじゃなくて、単に羨ましがってるだけだろ………何にしても良い獣人を連れ帰って損はしないからな。……本当に厄介なのは安全圏から出てこない奴らだよ。」



そう言うと水輝さんは目を瞑った。



「着くまで時間が有るし、着いてからも色々やる事がある。硬い床で横になるよりかは楽だろ?希歩も休んどけよ……。」



力を抜いたのかズルズルとソファに沈みこんでいく水輝さん。


確かに、昨晩は硬い床に毛布を引いただけで寝ていた。



疲れていた事もあり、特にその事を気にしてはいなかったが………こうして柔らかいソファに座っていると自ずと体の力が抜け、自分が疲れていた事に気付かされる。



(周りの人達………も、休んでる。私の事はもう見てもない…………。)



見る限りでは10程度だろうか………、全員か深くソファに座り、隣に居るものと喋ることも無くただ下を向いている。



疲労感………ただの個人の感覚が、この電車の中に充満している気がした。




重たく感じる空気に負け、ゆっくりと私の瞼も下がっていく……。



………プシュッゥゥッ



「わっ…………。」



勢いよく空気が吹き出すような音がいきなりしたと思えば、前方向に加速していく。



「ドアが締まった音だよ。今から出発だ。」



「そうなのですね…………本当にたくさんの人を乗せて動いてたんですね………。」



お母さんは人間の生活について殆ど教えてくれなかった。



今思えば、それは私が人間に興味を持たない為に……私が人間に捕まってしまわない為だったと分かるが。



この電車の仕組みも全く分からない。なんで自分はじっとしたいるのに動いているのだろうか?、誰も触ってない扉が何故勝手に閉まるのだろうか?



疑問は尽きない………水輝さんに聞いてみたい…………



(…でも………、水輝さんも疲れているし………。)



……それに、今聞かなくても………きっと水輝さんとの付き合いは長くなる。そんな気がする。



何だかんだ言っても、やはり水輝さんが悪い事を考えているようには思えないのだ。



電車は動き出しても、ホームの様に地下のトンネルを延々と走っているようで窓から見える外の景色に変化は無い。



(なんで地下しか走らないのに窓が着いているんだろうか?。)



答えを知る水輝さんからすれば下らない疑問なのだろう。



でも、答えを知らない私からすればこんなふとした疑問でも大きく頭を悩ませる。



(なんでだろう…………、なんで………なん……だろ…………。)



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