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In The BLACK  作者: かすぅ
5/9

自衛手段

サイトを覗き込み、映っている赤い点を自分から最も近いガルムに合わせる。



小さく息を吐き、意識を集中させ…………ガルムの動きを伺う……………



「訳ねぇだろ!、先手必勝!!!。」



一気にトリガーを引き切る。



連続した高い銃声が響き渡り、音速を凌駕する小さな弾丸を撃ち出す。



「ギョォアッ!!」



サイトを合わせていたガルムの全身から血が吹き出し、倒れる。即死ではないが、血を流して倒れ込んだなら死ぬのも時間の問題だ。



その様子をみた他のガルム達がいっせいにこちらへ走り込んできた。



素早く狙いを他のガルムに写し、再びトリガーを引く。



パパパハパパッ!!!!



銃声とともに吹き出す血飛沫………2匹目も倒れる。



同じように3匹目……4匹目……5匹目…………、



「んあ、弾が切れたな。」


カチッとゆう音と共に空を切るトリガー、弾は出ない。



スライド式のマガジンキャッチボタンを押し、マガジンがグリップ無いから落ちる。



当然その間もガルムは寄ってきている………。



「こいつで少し我慢してくれ。」



滑り落ちたマガジンが地に着く前に………思いっき前方に蹴り飛ばす。


かなりの速さで飛んで行った重量感あるマガジンが正面に居たガルムの額に命中する。



弾のように致命傷になる事は無いが、動きを阻害するにはある意味銃弾よりも効果的だ。



そのまま左太ももにあるホルダーからマガジンを取り出し、リロードを完了させる。



既にガルムは目前にまで迫っているので今度は悠長に狙わない。大体の方向に銃口をむけ、それぞれのガルムが動かなくなるまで撃ちまくる。



「これで7匹目………、あと1匹…………」



しかし、残しておいた先程マガジンを額に当てたガルムが思いのほか早く体勢を取り戻していたようで……


再び視線を向けた時……、目の前にガルムは迫っていた。



(出来る限りの斉射で………いや無理だ。)



盗掘者(ラーバー)』の俺が持つPDWはあくまで最低限の自衛用。小物なら十分に殺傷出来はするが、即座に無力化するのは不可能だ。



(………なら、)



ガルムの振り上げられた前足……そこから生える大きな爪。



死にはしない、だが無事でも済まない。



PDWから手を離し、両手を開ける。



振り上げられた前足を左手で払い、喉元に突き刺すように腕を伸ばす。



「うおぉぉお!!!。」



走り込んできたガルム………その体重にスピードが合わさった威力はかなりのもので、それに対して右腕を突き立てた俺は当然のように後ろに弾き飛ばされる。



………だが、それでいい。



衝突の瞬間、腕が折れない限界で僅かに腕を曲げ……ガルムの突進のエネルギーを俺の腕に対してでは無く、『俺の体を突き飛ばす』事に消費させる。



対してガルムは…………俺と同じように倒れ込んでいる。



僅かでも、気道を押し潰したのだ。悶絶するような痛みと共に呼吸が大きく乱れているはずだ。



同じ様に倒れる俺とガルム………だが、俺は背部を軽く打っただけに対して、ガルムはこれだ…………。次のアクションを先に起こすのは当然俺だ。



「くたばれ犬が。」



パパパハパパッ!!!! …………………


仰向けの状態から上半身だけを起こし、足の方に倒れているガルムの頭部にありったけの銃弾を撃ち込む。



体毛が赤く染ってゆき、頭蓋にヒビが走り……脳をズタズタにする。



1発1発は細かくとも、何発も致命部位に撃ち込めば………倒せる。



「………ふぅ……、結構使っちまったな。」



起き上がり、残弾の少なくなったマガジンを抜き………新たなマガジンを差し込む。



「………あのぉ……………。大丈夫ですか?。」



「あぁ、これぐらいなら経費の範囲内だ。」



派手に吹っ飛ばされたが合成皮のコートが汚れただけで大した負傷は負わなかった。



「お前の方こそどうだ?。耳は大丈夫なのか?。」



「はい………、少しキンキンしますがしばらくすれば大丈夫そうです。」



「そうか………じゃあ先を急ごう。派手に鳴らしたからな、何がやって来てもおかしくな………い…………。」



おおよそ100メートル以上先か…………



黒い人型の化け物が見えた。



通りに並ぶビルと比べると3〜4メートル程はありそうな大型の生物。


痩せているが鈍く光る黒色……頭部は………先程倒したガルムのように狼のようになっており、パッと見だと被り物を被った人のようにも見える。



しかし、そんな格好をわざわざする3メートル越えの人間は当然居ない。



「………希歩………、そのまま後を振り向くな………ゆっくりと進むぞ。」



俺の雰囲気を察したのか、希歩は無言で俺の指示に従い歩き始める。


希歩のペースに合わせて、俺もゆっくりと後退りで下がる………決して視線は外さない。



(………奴も当然……気づいて居るだろうな。)



不自然に音のならない歩みで奴は近づいてくる。


動きはゆったりとしたものだが、その歩幅故に俺と希歩の進みを遥かに超えるスピードで…………。




(このマガジンには40発……予備マガジンはフル装填の物が1つとさっき取り換えた残弾の少ないマガジンが1つ…………全部で90発くるいか。)



残弾を数えてから思い直す、



無理だ………ガルムとは訳が違う。


こんな小口径の弾丸では………あの巨体に果たしてどれ程の威力を出せるのか? そもそもこの弾丸は奴の外皮を貫けるのか?



無理だ……どれだけ都合良く考えても『分からない』。



そんな不明瞭な事に命は掛けられない………、ならどうする?どう逃げる??…………、直線では無理だ…………そう、建物に………あの巨体なら普通の入口には入れない………。



だが後ろを向けない……奴から視線を外せない……。



流しみるように右手側の俺より前に過ぎていくビルを見る……。



入口が崩れている…………、入口が崩れている…………、入口が狭い…………、



(……………っ!!、ここだ!!!。)



左手で少し前を歩いている希歩の腕を掴む。



「来い!!走れっ!!!。」



「ふぁっ?!、はい!!!。」



かなり無理な姿勢からだったが、希歩はしっかりと走り出してくれた。


黒い生物に向かって適当に発砲する、あくまで時間稼ぎ程度なので狙うことするしない。



だが、奴はそれをものともせず……先程までのゆったりとした動きとは全く違う………陸上選手のような手足を大きく使った走りで一気に迫ってくる。



開いていた距離が瞬く間に縮んでいく。



ほんの少しの距離、間に合って当然の距離がどうしようもなく長く感じる。



「突っ込むぞっ!!。」



「え?!、ちょっと……うわっ!!!。」



希歩はやはり子供、どうしても俺より遅い。


その事をもどかしく感じ、入口の手前でビルの中に希歩を投げ入れる。



「死にたく……ねぇ〜ッ!!!!」



減速してしまった体を精一杯再加速させ、少し崩れてはいるが通るには十分なビルの入口に滑り込む………



「ガアァァァアァァアッッツ!!!!!!!!!!!」



その直後、おぞましい鳴き声を上げながら凄まじい勢いで通りに面する壁の端から橋までを鋭い何が引き裂きながら通り過ぎ………壁一面が崩れる。



舞い上がった砂埃………、荒くなった息を整えたいが砂を吸い込みむせてしまう。



「……ちくしょう………、散々な日だな………。」


「水輝さん………、大丈夫………ですよ……ね?。」


「………あぁ………、よく分かったな。」



体を起こす………、盗掘者(ラーバー)である俺がまだ半日も経っていないのにこれだけ戦闘をする事になるなんて。



このままあいつに足止めされる訳にも行かない。食料は勿論……飲水がほとんど残っていない。



「…………こ、これからどうするんですか?。ここであいつが諦めるのを待つんですか?。」



「いや、それは無理だろうな。」



ゴリゴリと何かを削る音が崩れた壁から聞こえる。



「ほらな、取り敢えず上に上がろう。ここからじゃ外に出れない。」



「そ、外に出るんですか?!………。あ、待って下さい!!。」



階段を見つけたので2回に上がる。



屋外でも使える頑丈な作りの腕時計を見てみると、時刻は9時4分。



「俺達が向かっている『駅』には9時から19時までの間、2時間おきに電車がくる。………そしてここは駅からそう離れていない。」



2階に上がり………窓を見る。



壁一面がほぼガラス貼りだったであろう窓は……今ではただな吹き抜けとなっている。



………そして、そこから………



「ヒィ!!……………水輝さん………見てますよ…………。」



「あぁ………やっぱデカイな………。」



奴がこちらを見ていた。


そして俺達に向かっその長い手をビルに差し込み、伸ばしてくる。



辛うじて届きはしないが、目の前で銅を鷲掴みに出来るほど大きな手がのたうっている………。



「み、………水輝さぁん…………。」



「…………大丈夫だ………もう『ついた』……らしい。」



ピンッ………と急に奴の頭部が何かに弾かれたかのように動く………、とその直後にパァンっ!!とゆう音が響く。



「希歩………俺に着いてくるならお前にも関係してくることだから説明しとく。アイツみたいに『オル』によって変質した生き物の事を……俺達は『オルター』って呼んでる。」



オル………常温では無色無臭の気体で、暗所では青い粒のように発光する。


このオルはそれまで存在したいた全ての元素とは一線を超えた性質をもつ………それが『黒化』。



「普通の生物は黒化してしまうと死ぬ。だが、それに適応する奴もいるんだ。俺はそんなオルター達がいる危険な場所から依頼された物品を収集する『盗掘者(ラーバー)』………、そして今から来るのはオルター共を討伐する専門職……………。」



奴とビルの隙間を何かが通る………その瞬間、俺達に向かって伸びていた腕が根元から簡単に切断される。



「アアァァァァァァアア!!!!」



化け物が悲鳴を上げながらビルから離れ………恐らくそれをなしたであろう人物が窓から入ってきた。



「オルターを討伐する専門職……『討伐者(スカベンジャー)』だ。」

オル=ガルム


イヌ科生物がオルト(黒化適応)した生物。


体の大きい 方が適応率が高かったのか、多様な犬種が居たはずにもかかわらずその個体サイズは過去の大型犬のサイズでほぼ統一されている。


大体の個体は群れを作り、非常に攻撃的。



しかし、黒化生物にしては控えめな身体能力強化と外皮硬化度なので黒化(オルト)処理を施した鉄製武器でも十分に対処が可能である。




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