手相占い
どんどんひゃららどんひゃらら♪
今日は町の盆踊り大会。
出店が立ち並び、多くの人でにぎわっている。
僕と都もひとしきり盆踊りを踊って、今小休憩中。
ちょっと張り切りすぎたかも…。
僕はイチゴ味のスノーボールをガシガシ食べながら縁石をベンチ代わりに座り込んでいた。
「ねえねえ!手相占いだって!見てもらおうよ!!」
「あんまり気が進まないなあ…。」
ちょうど目の前に、手相占いのブースがあった。
都はさ、こういうの好きなんだよね。
運命とか予言とか占いとかおまじないとか、目がないというか。
「はい、いらっしゃい。」
イマイチ年齢の分からない女性が、にっこり僕と都を見つめた。
「あの!私たちの相性とか見て欲しいかなって!ね!!」
「じゃあ、二人とも右手出してね。ふむふむ…。」
女性は僕と都の手の平をじいっと見つめている。
何が分かるというのだろうか。
僕には何がなんだかさっぱり分からないや。
「まずは、貴方のほうから。女性らしい手相をしているわ。ずいぶん情熱的で、ちょっと独占欲が高いわね。でも、それだけ一途ってことよ?想いは伝えて終りじゃないわ。愛に変えてもらってね。もらった愛は独占してもいいのよ?」
「次に貴方ね。とても力強い運を持っているわ。先祖代々守られているのね。でも貴方に霊能力はないから、それを自覚することは難しいでしょうね。いいたいことをいえないのが悩みなんじゃないのかしら。もっと積極的になるといいわよ。」
都は神妙な顔をして話をきいている。
「二人の相性は、彼がいかに積極的に出るかにかかっているわね。貴方せっかくの運をまったくいかせてないみたい、もう少し自信を持ってみて。」
これだけで1500円か。うーん、牛串二本買ったほうがよかったな…。
「ねえねえ!ケンちゃんもっとあたしに告白しなよ!!積極的にさ!!あたしに愛の告白とか!!」
「告白も何も…。都は僕の番みたいなもんじゃないか。…はいはい、愛してる、これでいい?」
都はにっこり笑って、僕に抱きついた。
仕方ないなあ・・・。
チュッ…。
僕が都のほっぺにキスをすると。
向こうから歩いて来てたおばちゃんが目をむいてるよ。
となりの女子高生たちも顔を赤くしている。
あれ、柄の悪い兄ちゃんたちがこっちに来るぞ…。
「ようよう!見せ付けてくれんじゃねえの?!」
三人組かあ…。
あんまりかかわりあいたくないな。
傷ついちゃうと困るし。
「ケンちゃん・・・。」
「ま、お開きだね。」
「うう…恋愛成就のお守り買ってないのにー!」
僕は三人組みの兄ちゃんたちの目を見つめる。
兄ちゃんたちの目から、一瞬光が消えて。
ぼんやりと立ち尽くしたまま、三秒。
その隙に、僕と都は神社の境内に向かった。
狛犬のところで、僕と都は向き合って目を閉じ、脱いだ。
…僕と都が借りていた、人間の器。
「いつもありがとう。」
僕はいつも入らせてもらっている、子孫に向かって礼を言った。
こいつはちょっと不器用だけどいい奴なのさ。
僕が見ててやらないと危なっかしくてね。
子孫は僕の声にまるで気付かず、鳥居をくぐってどこかに行ってしまった。
「まってよー!!」
都が入っていた女子は、僕の子孫を追って走り出した。
僕と都は、鳥居の上から祭りを楽しむ子孫たちを見下ろしている。
みんな楽しそうでよかった。
楽しく暮らせる時代になって、良かった。
「ねえねえ、積極的にならないの?」
都が僕に体を寄せてくる。
「都、あれはね、あのからだの持ち主のことを占ったんであって、僕のことを占ったわけじゃないんだよ?」
「さっきまではあの体だったんだから!あれがケンちゃんなんだってば!!」
いってることがむちゃくちゃだよ。
「相性も何も。こんなに長い間一緒にいるのに、何が不満なんだよ…。」
「積極的じゃないケンちゃんに不満なんだよ!!!」
ぷんぷんしている都は可愛いな。まあ、そういったらきっともっと怒っちゃうんだろうけどさ。
「じゃあ、霊験あらたかな恋愛成就の神様にお願いしにいってみたら?」
僕は鳥居の奥の神社を指差した。
「本人にお願いしろって言うの?!」
「都のお願いだったら、僕はいの一番に叶えて見せるけど?」
真っ赤になった都。
ずいぶん長いこと一緒にいるけど、こういうところが可愛いんだよ。
「…みんなのお願い、叶えにいこっか。」
上目遣いに、僕を見つめる都の唇にキスをひとつ落としてと。
「!!!」
「さ、いくよ?」
僕は都にお手を伸ばして。
手をつないで拝殿に向かった。