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62話 情報屋【ブルースター】

 地上に戻った後、俺はリンドバーグを連れてチラシに記載されている地図を頼りに【ブルースター】のギルドホームに向かった。

 【ブルースター】はB級ダンジョンで出会ったレクサスとプルートが所属しているギルドで、情報屋として情報を売って商売をしている。

 

「マスター、情報屋に行くって事は…… やはり【グリーンウィング】に手を貸してあげるって事ですか?」


「まぁな、でも一方的な情報では真実は見えないだろ? 動くにしても情報は多い方がいいと思ってな」


「わかりました。マスターがそう言うのなら、ですが【デザートスコーピオン】は攻略組のギルドです。なのでギルドメンバーには血の気の多い冒険者が多いでしょう。動くなら我々もそれなりに覚悟が必要になるかもしれませんよ。私は大丈夫ですが、リオンさんとダン君には対人戦闘は厳しいのでは?」


 まだ子供のリオンとダンの事を心配してリンドバーグが意見を口にしたが、リオンとダンも対人戦は既に経験済みだ。

 もちろん危険な目に遭わせる気は無いのだが、もし戦闘となったとしてもあの二人なら大丈夫だろう。


「リンドバーグがいう事もわかるが、たぶんそういう事態にはならないさ。今回の件にはスクワードを巻き込んでやろうと思っている。リンドバーグは知らないだろうが、少し前に俺は【オールグランド】の問題に無理やり巻き込まれているんだよ。だから今回はその時のお返しだ。スクワードを無理やり巻き込んだとしても文句は言わせない」


「幹部のスクワードさんですか? 確かにあの人が仲裁に入ってくれるのなら、この程度の小競り合いなら何事も無く収めてくれるでしょう」


 リンドバーグも【オールグランド】を巻き込むと俺が言った事で安心した様子を見せた。

 

「マスターここです。この建物が【ブルースター】のギルドホームで間違いありません」


 リンドバーグは建物が密集した場所の角にある赤い外壁の三階建ての建物を指差した。

 一階部分には大きめの扉があり、看板には【ダリアの酒場】と書かれている。


「この建物の二階が【ブルースター】のギルドホームのようです。外に階段が見当たらないので、きっと一階に在るのでしょう」


「それじゃあ、とりあえず中に入るか」


 俺達が一階の酒場のドアを開いて中へと入る。

 室内は奥に広く長いカウンター席と六人程度が座れるテーブルが六つ並べられていた。

 昼間というのに二十名近い冒険者が酒を飲みながら騒いでいた。


 俺達が周囲を見渡していると、カウンターの女性も視線を向けてきて俺達の視線が合った。

 

 俺は【ブルースター】のギルドホームの入口を聞く為に女性の元へと向かった。


「いらっしゃい。空いている場所に座ってください」


 声を掛けてきたのは、愛嬌のある可愛らしい容姿で長い黒髪をポニーテールで纏めている女性だった。

 器用にお酒を作りながら、俺達の注文を取ろうとしていた。


「いや、酒は今度にさせてもらうよ。忙しそうでわるいんだけど【ブルースター】にはどうやって行けばいいか教えてくれないか?」


「奥に階段があるので、その階段を上がった場所が【ブルースター】のギルドホームですよ」


「ありがとう」


 俺達はお礼を告げた後、店員の指示通り一番奥にある階段を上る。

 階段を上がった場所は一本の廊下が伸びており、三つの部屋があった。

 各部屋のドアには看板が付けられている。

 一番最初の部屋の看板には【情報屋ブルースター】と書かれていた。


「ここで間違いないな」


 俺は扉を開き中へと入る。

 一見、部屋の中は無人のように思えた。

 ただ隣の部屋との間の壁の一部に穴が開いており、穴の前にはカウンターと椅子が用意されている。

 すると穴から女性の手が飛び出し、こっちに来いと手招きを始めた。


 どうやらカウンターの前に座ればいいみたいだ。

 俺はカウンターの前に移動すると備え付けの椅子に腰を下ろした。

 リンドバーグは俺の背後に立っている。


「いらっしゃい。情報屋【ブルースター】へようこそ。初めて見るお客様ですね。それで貴方はどんな情報が欲しいのですか?」


 メイド服に身を包み、眼鏡を掛けた知的な雰囲気の受付嬢が話しかけてきた。

 

「あるギルドの情報が欲しい」


「ギルドの情報ですか…… どこのギルドの情報を知りたいのですか?」


「【デザートスコーピオン】っていうギルドなんだが」


「デザートスコーピオン…… 確かB級ダンジョンに潜っているギルドですね」


「あぁ、そこで間違いない。メンバーの構成などの詳細も頼む。それと【デザートスコーピオン】と【グリーンウィング】の間で何があったのか? その辺りの情報も欲しい」


「わかりました、【デザートスコーピオン】の情報と【グリーンウィング】との関係ですね」


 受付嬢は営業スマイルを浮かべた。


「徹夜で張り込みは、流石にきついぜぇ~ もう身体も限界を超えてんぞ。俺はもう働かねぇぞ! 今すぐ寝るからな!!」


「仕事なんだから、グダグダ文句を言うなって」


 その時二人の冒険者が隣の部屋に入ってきた。

 その声には聞き覚えがある。

 部屋に入って来たのはレクサスとプルートだった。

 すぐにレクサスは俺を見つけて近づいてきた。


「マジかよ!? 来てくれたんだな。ふははは、絶対に来ると思っていたけど、これ程早いとは思わなかったな」


 レクサスは嬉しそうに話しかけてきた。


「堂々とチラシまで渡してきたんだ。自信はあるんだろ?」


「任せてくれ。期待以上の情報を用意してやるぜ」


 レクサスは受付嬢が書きとっていた依頼表を手に取り、依頼内容を確認する。


「【デザートスコーピオン】の情報なら既にあるぜ。メンバーのリストと職業、半数だけど所持しているスキルも分かっているぞ」


「それは凄いな」


「だけど、あんたが欲しがっている情報はそれだけじゃないんだろ?」


 レクサスは口角を吊り上げ、わかっていると言いたげな表情を浮かべる。


「流石だな。お前が言った事だろ? あの後、俺達も【デザートスコーピオン】と【グリーンウィング】の争いに巻き込まれてしまってな。俺は真実を知りたい」


「分かった、調べる時間をくれ。それに両ギルドの最新の情報も併せて集めてやる」


「おいおい。両ギルドってやけに張り切っているじゃないか?」


「そりゃそうさ。ここであんたの信頼を勝ち取れば、今後も贔屓にしてくれるだろ? そうなればリオンちゃんに会える回数も増えるって訳だ」


「おいおい、本気で言っているのか?リオンはまだ子供なんだぞ」


「あんたこそ何を言っているんだ。あんな美人が横にいて何も思わない方がおかしいと俺は思うぜ」


「忠告しておく! お前の様なチャラい男はリオンに近づくんじゃない!!」


 俺はレクサスを睨みつけた。

 レクサスは俺の睨みを全く気にしていなかった。

 初めて会った時もそうだが、中々の胆力を持っているようだ。


 俺はリオンに変な男を近づかせるつもりはないが、このレクサスと言う男の本質を俺はまだつかめていなかった。


「そう言えば、この件はリオンの頼みでもあるんだったな。おい、もし集めた情報が有用だったならお前が情報を集めてくれたってリオンに伝えてやるぞ」


 なので一度試してみる事にした。

 もう少し交流を深めて、このレクサスという男を知ってみようと思う。


「マジかよ!! よっしゃぁぁぁ!! おいプルートすぐに出るぞ!!」


 レクサスは椅子に座って休んでいたプルートの腕を掴み部屋から飛び出そうとしていた。


「お前は夜勤明けで疲れているんじゃないのかよ?」


「何を言っているんだ。リオンちゃんの為に働くんだぞ。愛の為なら男は疲れ知らずさ」


 そのままレクサスは部屋から出ていった。


「話はまとまりましたので、料金のお話に移ってもよろしいでしょうか?」


 受付の女性は何事も無かったような素振りで話を進めた。


「今回は初回のご依頼なので割引があります。依頼内容から見積もりしますと金貨三枚です。前金として金貨一枚をお願いできますでしょうか?」

 

「金貨一枚だな」


 俺は布袋から金貨を一枚取り出すと、受付嬢に手渡した。


「ありがとうございます。情報が整理出来次第、ギルドホームに使いを出します」


「よろしく頼むよ。俺達のギルドホームの場所は……」


「場所は結構です。既に分かっていますので」


 受付嬢はすまし顔で答えた。


「流石だな。それじゃ俺達は連絡を待っているとしよう」


 俺とリンドバーグはギルドホームに戻る事にした。

 後はレクサス達が情報を集めるのを待つだけだ。


 【グリーンウィング】のギルドマスターが手を出すなという可能性もあるし、俺が今動けるのは此処までだろう。

 結果が出るまでの間は特にする事も無いので、俺はリオンとダンが少しでも早くB級ダンジョンに慣れる為にも、毎日ダンジョンに潜ろうと思う。

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― 新着の感想 ―
[一言] スクワード巻き添え確定!?
[一言] 俄然やる気のレクサス君。 情報屋の実力は如何に!?
[一言] こうやってどんどん横の繋がりが出来ていくんですねぇ
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