54話 新しいスキルを手に入れて!
「【魔石喰らい】?? これが新しいスキル……」
気持ちが昂ぶりすぎて、今日までの苦労を思い出し涙があふれてくる。
【魔石喰らい】とはまさに俺に相応しいスキルだなと笑いが込み上げてきた。
しかしまだ外れスキルという可能性もあるので、過度な期待は出来ない。
俺は意識を【魔石喰らい】に向けた。
すると頭にはスキルの情報が流れだした。
「なるほど、魔石を食べるとその魔物の力を一時的に得る事が出来るスキル。魔力と体力が続く限りは効果が持続するか…… もしこの力が使えれば俺も前線で戦う事が出来るかもな」
俺は子供の様に飛び上がるとガッツポーズを取っていた。
身体の状態は万全だし、実は魔力量もかなり増えている。
腹の奥から魔力が溢れているのをずっと感じていた。
「魔力量が驚くほど増えているのもダンジョンコアを食った影響か?」
ダンジョンコアを食べた事によって俺の身体は以前とは全く違っている。
このままダンジョンに飛び込みたい衝動に駈られたが、今日はみんなの言う事を聞いてゆっくりと休む事にした。
★ ★ ★
翌朝、一番乗りで部屋に入ってきたのはリオンだった。
「ラベルさん、おはよう。ゆっくり休めた?」
「リオン、おはよう。昨日も言ったけど身体は全然大丈夫なんだからな。何を言われても今日こそは家に帰るぞ!」
「なら良かった。みんなももうすぐ来ると思うよ」
「そうか、じゃあ今の内に俺も着替えておくか」
着替えは事前に用意されていたので、その服に着替えてみんなが来るのを待つ事にした。
俺が着替えを済ませ、身仕度を整えた後、タイミングよくアリスが部屋に入って来た。
その後、間を置かずにダンとリンドバーグが一緒に入って来る。
いつの間にかダンとリンドバーグは仲良くなっていた。
「後はスクワードだけか?」
「スクワードのおじ様なら治療師を連れてくるって、昨日言ってたよ」
「そう言えばそんな事を言っていたな。もう大丈夫なんだけどな」
「仕方ないよ。みんなラベルさんの事が心配なんだよ」
「今回は迷惑をかけてしまった手前、それを言われると反論できないな」
みんな俺の回復を喜んでおり、俺も良い仲間に巡り会えた事を喜んだ。
丁度良い機会だと考え、俺は新しいスキルが手に入った事を告げる事にした。
スキルの検証をするにしても魔石を食べなければいけない。
ポーションなどの回復薬は用意しておくが、再び倒れる可能性もあるだろう。
一人で検証するには危険が大きすぎる。
なので【魔石喰らい】の検証はギルドメンバー達と一緒に行うつもりだ。
「実はな。新しいスキルを手に入れたんだ」
「本当!? ラベルさん凄い!!」
「嘘だろ!? ラベルさんすげーじゃん。ねぇどんなスキル?」
「マスター、おめでとうございます」
リオンもダンもリンドバーグもそれぞれに喜んでくれた。
「良かったよ。本当によかったぁぁ。スクワードのおじ様からもお父様からもラベルさんが昔からずっと頑張っていたって聞いたから、私嬉しくって」
アリスも俺が昔からダンジョンに潜り続けてきた事情を知っているみたいで、涙を浮かべて喜んでくれた。
「スキルの検証はこれからだ。このスキルの力で俺も戦闘に参加できる様になれればいいんだけどな」
恥ずかしそうに報告したが、俺も期待に胸が膨らんでいるのは確かだ。
「ラベルさんなら大丈夫だよ」
リオンが自信満々に即答したのだが、その自信は何処からくるのだろう?
「そうか? それならいいんだけどな」
「今でも強いラベルさんが、スキルを手に入れたらどうなるんだ?」
ダンよ。言っておくが俺はアイテムが無ければそれ程強くはない。ハンスにボロボロにされたばかりじゃないか!? っと思ったが口には出せなかった。
「どうなるか分からんが、新しいスキルも上手く使えるように頑張るよ」
「ラベルさん、それで新しいスキルってどんなスキル?」
そうだった。肝心な事を伝えていなかった。
リンドバーグは最近ギルドに参加したばかりだが、人となりは分かっている。
だから今いるのは信頼できるメンバーだと思う。
どんな反応を示すか分からないが、彼等には正直に話そう。
「俺が手に入れたスキルは【魔石喰らい】って言う。魔石を食べるスキルだ」
「「……」」
全員が絶句していた。
「ラベルさん、魔石を無理やり食べさせられて死にかけたのに、また食べる気なの?」
沈黙を破ってリオンが聞いてきた。
「だってそういうスキルみたいだからな。食べるしかないだろう。もちろん危険なのは分かっている。だから検証する時はそばにいて貰いたいんだ」
「あぁぁ私が甘かったわ。やっと分かった、お父様たちからラベルさんが変態って呼ばれている訳が!! スキル獲得の事になったら突き進むしか出来ない人なんだ」
呆れた様にアリスが言い放ってきた。
「いやっでも。スキルがそういうスキルだって」
「ラベルさんは流石だぜ。死にかけたって言うのに同じ物を喰う根性は俺にはまだないな!!」
ニシシと笑いながら、ダンが絡んできた。
「もぅ。私も心配になってきたから検証の時は絶対に呼んでよね!!」
「あぁ、悪かった。その時は声をかけるよ」
最後にアリスに強く言われてしまい。
つい了承してしまう。
こんな所は母親そっくりだと思った。
「マスター、そんなスキルは聞いた事がありません。もし公になれば妬む者もいるかもしれない。この事を知らせるのはマスターが信用する人にとどめた方がいいでしょう」
「ありがとう、リンドバーグ。勿論そうするつもりだ」
その時スクワードが治療師を連れて部屋に入って来る。
「なにやってんだお前ら? その様子だともう大丈夫そうだな」
俺の周りを全員が取り囲んでいる状況を見てスクワードが呆れた様子で声を掛けてくる。
その後は治療師に体の状態を確認して貰い、大丈夫だとお墨付きを貰う。
これでやっと俺も帰る事が出来る。
ギルドメンバー達と建物から出た俺達は自分達のギルドホームに向かう。
道中、俺はこれからの事を考える。
リンドバーグが参加した事で戦力が増えたし、俺も新しいスキルを手に入れる事ができた。
リオンと二人で作った【オラトリオ】は順調に力を付けている。
最初はダンジョンに潜る為に作ったギルドだが、新しい目標はカインによって示された。
俺は【オラトリオ】のメンバー達とS級ダンジョンまで一気に駆け上がるつもりだ。




